第9話 通貨危機は乗り越えたが・・・

文字数 1,199文字

(9)通貨危機は乗り越えたが・・・

 俺たちが2巡目の為替対応取引を開始してから1年が経過した。

 残念ながら、俺たちはまだ一連の取引をしている。
 いま3巡目だ。

 一応、今までの経緯を説明しておこう。
 1巡目で約8,700億JDを稼いだ俺たちは、1巡目と同じスキームで2巡目に突入した。

※JD(ジャービス・ドル)はジャービス王国の法定通貨です。1JD=1円としています。

 まず、外為証拠金を確保するため、ジャービス中央銀行から額面3,000億JDの国債を無担保で借りることを交渉した。無担保債券貸借取引だ。
 総裁のアドルフはいい顔はしなかったが、前回ほど露骨には嫌がらなかった。前回俺たちがちゃんと国債を返済したからだ。

 ジャービス中央銀行から借りた国債を外為取引の証拠金として1兆JD分の米ドルを購入した(ジャービス・ドルを売却)。1兆JD分の米ドル購入はジャービス王国では大きな規模だ。

 ヘッジファンドが俺たちの米ドル購入に気付いて、米ドル売り(ジャービス・ドル買い)を仕掛けてきた。ヘッジファンドは1巡目のような政策金利の引下げはないと予想していたからだ。
 だから、俺たちの米ドル買いはヘッジファンドの米ドル売りに吸収され、特に問題なく執行することができた。


 その後、内務省から政策金利を1%に引き下げることが公表された。すると、為替レートは1米ドル=130JDから1米ドル=210JDまでジャービス・ドル安が進んだ。

 これは、2度目の政策金利の引下げはないと予想していたヘッジファンドや投資家が損切り(米ドルの買戻し)を行ったからだ。1巡目は為替レートの変動は1米ドル=200JDまでだったから、2巡目の為替レートの変動の方が大きかった。
 ヘッジファンド等の買戻しに合わせて、俺たちは保有していた米ドルを売却して利益を確定した。


 買戻し条件付の国債の売買は、2巡目は欧州銀行と取引することになった。
 前回、米銀が9.3億米ドル儲けたことを聞きつけた複数の銀行がホラント証券にコンタクトしてきた。その中で最も条件が良かった欧州銀行と2巡目は取引することにした。

 政策金利の引き上げによってジャービス国内には好景気が訪れたが、インフレ率が上がってきた。だから、政策金利を引き上げてインフレを抑制した。

 その後は1巡目と概ね同じだ。
 2巡目は約9,000億JD儲かった。

 2巡目においても1巡目と同様に全国でデモが起こった。
 ジャービス国民はデモが好きなんだろうか?と俺は思う。

 今は3巡目に突入したのだが、俺は心に決めている。

―― 止めてくれと言われても、何度でも繰り返してやる!


 俺にはいつまで続くか分からない。
 なぜなら、これは俺と国民とマスコミのチキンレースだから。

 3巡目で終わるかもしれないし、4巡目に入るかもしれない。

 後のことは知らないが、まあ、今回も勝ちとしよう。

 儲かったし・・・
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登場人物紹介

ダニエル:ジャービス王国の第4王子。総務大臣。

ルイーズ:総務省 内部調査部 課長代理

ジェームス:ジャービス王国第1王子。軍本部 総司令

チャールズ:ジャービス王国の第2王子。内務大臣。

アンドリュー:ジャービス王国の第3王子。外務大臣。

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