第3話 MJを調べろ(その2)
文字数 1,561文字
(3)MJを調べろ <続き>
MJはいろんな人のイニシャルに使われている。
既に2回目になるが、俺に馴染みのあるMJは下記の3つだ。
①マイケル・ジョーダン
②マイケル・ジャクソン
③松本潤
俺は今まで①のMJだと思ってこの事件を追ってきた。でも、今回のMJは②かもしれない。
ひょっとすると、そのうち③も出てくるかもしれない・・・
事件の本質とは関係ないからさっさと本題に入ろうと思う。
俺はロバートたちから聞いた情報、スミスが精査したMJの登記情報を内部調査部のメンバーと共有することにした。今後の調査方針を決めるためだ。
俺が一連の情報をメンバーに伝えると、ガブリエルが「ちょっといいですか?」と発言した。ガブリエルは不動産競売物件を取得する会社(i4)で不動産取引を相当数経験している。何か個人的な興味を惹いたことがあるようだ。
「どうしたの?」と俺はガブリエルに言った。
「今回、ジョーダンとマイケルは100社以上のMJを設立して、それぞれ別のMJで底地を取得しています。普通に考えると、不動産を保有するのは1社の方が管理は楽ですし、資金調達もしやすいと思うんです。それなのに、そんなに大量の会社を使う理由は何なのでしょうか?」
「これは俺の想像だけど、ジョーダンたちは前回の太陽光発電施設を購入したスキームと同じようなスキームを使っていると思うんだ」
「というと?」
「ジョーダンたちは太陽光発電施設を取得するための資金を、個人投資家に社債を発行して調達していたでしょ。底地取得スキームに置き換えるとこんな感じだと思う」
俺はそう言うと、ホワイトボードに図(図表10-7)を描いた。
【図表10-7:底地取得スキーム】
「社債を発行して調達方法を使う時、投資家は対象事業や対象資産以外のリスクを負いたくないよね?」と俺は言った。
「具体的にはどういうことですか?」
「例えば、底地を3つ取得する場合の資金調達について考えてみよう。不動産売買は売り手と買い手の条件が合致した時に成立する。だから、3件の売買はバラバラに行われるよね?」
「もちろんです。3件同時に契約・決済しようとしたら、先に交渉していた2件の地主に待ってもらわないといけません。だから、普通は契約した相手先から順次決済します」
「だよね。バラバラに底地を取得する場合に起こるリスクを説明すると・・・、1件目の底地Aを取得する時に社債Aを個人投資家Aに発行したとする。次に2件目の底地Bを取得する際に社債Bを個人投資家Bに発行したとする。3件目の底地Cを取得する際に社債Cを個人投資家Cに発行したとする」
俺はホワイトボードに図(図表10-8)を描いた。
【図表10-8:コミングル・リスク】
図を見たガブリエルは「3回に分けて底地を取得して、その都度、資金調達するケースですね?」と言った。
「そうだね。この場合、投資家Aは底地Aの取得だと思って社債を購入したのに、知らない間に底地Bや底地Cが増えていく。債権者(社債権者)も投資家Aだけだと思っていたのに、知らない間に投資家Bや投資家Cが出てくる」
「言われてみればそうですね」
「この状態で底地Cから損失が発生したら、他2つの底地(底地Aと底地B)からの収益で損失補填しないといけない。投資家Aからしたら、『知らない間に増えた底地Cの損失を押し付けられても・・・』って思わない?」
「思いますね」
「この手の資金調達案件では、投資家はMJの事業に対してお金を出すわけじゃなくて、底地に対してお金を出す。つまり、投資家Aは投資対象資産(この場合は底地A)の損益は受け入れるけど、投資対象以外の資産(底地Bと底地C)の損益は回避したいと考えるんだ」
「だから、底地を取得する会社を別にするんですね」
ガブリエルは理解したようだ。
MJはいろんな人のイニシャルに使われている。
既に2回目になるが、俺に馴染みのあるMJは下記の3つだ。
①マイケル・ジョーダン
②マイケル・ジャクソン
③松本潤
俺は今まで①のMJだと思ってこの事件を追ってきた。でも、今回のMJは②かもしれない。
ひょっとすると、そのうち③も出てくるかもしれない・・・
事件の本質とは関係ないからさっさと本題に入ろうと思う。
俺はロバートたちから聞いた情報、スミスが精査したMJの登記情報を内部調査部のメンバーと共有することにした。今後の調査方針を決めるためだ。
俺が一連の情報をメンバーに伝えると、ガブリエルが「ちょっといいですか?」と発言した。ガブリエルは不動産競売物件を取得する会社(i4)で不動産取引を相当数経験している。何か個人的な興味を惹いたことがあるようだ。
「どうしたの?」と俺はガブリエルに言った。
「今回、ジョーダンとマイケルは100社以上のMJを設立して、それぞれ別のMJで底地を取得しています。普通に考えると、不動産を保有するのは1社の方が管理は楽ですし、資金調達もしやすいと思うんです。それなのに、そんなに大量の会社を使う理由は何なのでしょうか?」
「これは俺の想像だけど、ジョーダンたちは前回の太陽光発電施設を購入したスキームと同じようなスキームを使っていると思うんだ」
「というと?」
「ジョーダンたちは太陽光発電施設を取得するための資金を、個人投資家に社債を発行して調達していたでしょ。底地取得スキームに置き換えるとこんな感じだと思う」
俺はそう言うと、ホワイトボードに図(図表10-7)を描いた。
【図表10-7:底地取得スキーム】
「社債を発行して調達方法を使う時、投資家は対象事業や対象資産以外のリスクを負いたくないよね?」と俺は言った。
「具体的にはどういうことですか?」
「例えば、底地を3つ取得する場合の資金調達について考えてみよう。不動産売買は売り手と買い手の条件が合致した時に成立する。だから、3件の売買はバラバラに行われるよね?」
「もちろんです。3件同時に契約・決済しようとしたら、先に交渉していた2件の地主に待ってもらわないといけません。だから、普通は契約した相手先から順次決済します」
「だよね。バラバラに底地を取得する場合に起こるリスクを説明すると・・・、1件目の底地Aを取得する時に社債Aを個人投資家Aに発行したとする。次に2件目の底地Bを取得する際に社債Bを個人投資家Bに発行したとする。3件目の底地Cを取得する際に社債Cを個人投資家Cに発行したとする」
俺はホワイトボードに図(図表10-8)を描いた。
【図表10-8:コミングル・リスク】
図を見たガブリエルは「3回に分けて底地を取得して、その都度、資金調達するケースですね?」と言った。
「そうだね。この場合、投資家Aは底地Aの取得だと思って社債を購入したのに、知らない間に底地Bや底地Cが増えていく。債権者(社債権者)も投資家Aだけだと思っていたのに、知らない間に投資家Bや投資家Cが出てくる」
「言われてみればそうですね」
「この状態で底地Cから損失が発生したら、他2つの底地(底地Aと底地B)からの収益で損失補填しないといけない。投資家Aからしたら、『知らない間に増えた底地Cの損失を押し付けられても・・・』って思わない?」
「思いますね」
「この手の資金調達案件では、投資家はMJの事業に対してお金を出すわけじゃなくて、底地に対してお金を出す。つまり、投資家Aは投資対象資産(この場合は底地A)の損益は受け入れるけど、投資対象以外の資産(底地Bと底地C)の損益は回避したいと考えるんだ」
「だから、底地を取得する会社を別にするんですね」
ガブリエルは理解したようだ。