第6話 個人投資家(その4)
文字数 1,526文字
(6)個人投資家 <続き>
ディーンは話を続ける。
「私に資金はありませんから、期日までに全額返済できません。返済期日を過ぎると、ジョーは私に『担保物件を競売するから、直ぐに自宅から出ていけ』と言ってきました」
「急に?」
「そうです。私は自宅を追い出されました。そして、Lファイナンスは保有していた投資不動産と自宅を売却しはじめました。数週間すると、10物件と自宅が1億2,500万JDで売れたとジョーから連絡がありました。担保不動産の買い手は、レンソイス不動産です」
「ローン残高よりも高くは売れたのですね」
俺はディーンに気を使って言った。
「ええ。不動産の決済が終わると、Lファイナンスは売却代金とローン残高の差額500万JD(1億2,500万JD-1億2,000万JD)を、私の銀行口座に振込んできました。それに前後して1億2,000万JDのローンの完済通知も届きました」
「・・・」
俺たちはディーンに掛ける言葉が見つからなかった。
「話をまとめると、3年間で1億5,000万JDを借入して、投資不動産を2億JDで購入しました。借入金はローンの元本を3,000万返済して、時価5,000万JDの自宅を追加担保に入れました。でも、最終的に戻ってきたのは500万JDだけです。自宅からも追い出されました」とディーンは言った。
「トータルの損失を計算すると、物件購入時の自己資金5,000万JD、借入金返済3,000万JD、追加担保の自宅の時価5,000万JDに対して、500万JDの回収だから、1億2,500万JD(=5,000+3,000+5,000-500万JD)ですか」と俺は言った。
【図表4-1-4:ディーンの不動産投資における損益】
「大体それくらいの損失でしょう。今考えると、最初から仕組まれていたのではないかと思います。自宅を担保に追加させることも、販売したLシリーズを半額で買い戻すことも、最初からレンソイス不動産のリードが計画したのでしょう」
「そうかもしれませんね。ところで、レンソイス不動産があなたの物件を購入した後は、どうなったかご存じですか?」
「その後は、知りません。というよりも、調べられるような精神状態ではありませんでした」
「競売された自宅は調べていませんが、Lシリーズの方は、登記簿謄本を見る限り既にレンソイス不動産から、個人投資家に売却されています」
「・・・」
「10件のLシリーズの不動産にはロワール銀行の抵当権が付いていて、借入金が1億6,000万JDと記載されていました。投資用不動産の全額を借入で賄うことはないので、約2億JDでレンソイス不動産は個人投資家に売却したのでしょうね」と俺は説明した。
「本当にふざけた会社ですね。新しい被害者を出さないためにも、迅速な調査を私からもお願いします。私の手伝えることであれば、何でも協力しますから」
ディーンは怒りに震えながら言った。
「我々も全力を尽くします」と俺は言った。
ディーンの不動産投資は失敗し、最終的に巨額の損失が発生した。
可哀そうな結末になってしまったのは残念だ。
ディーンからは、一連の取引の流れを聞くことができた。
とても有用な情報を入手できたと思う。
ディーンから聞いた話をまとめると、レンソイス不動産→ロワール銀行→Lファイナンス→レンソイス不動産という流れで個人投資家からお金を吸い上げる仕組みのようだ。
念のために、あと4人からも話を聞いて、ディーンの話の信憑性を確認するつもりだ。
不動産会社に食い物にされる個人投資家を助けてあげたいとは思う。
でも、我々の調査目的は不正融資の証拠を掴むことだ。
被害者を出さないことではない。
なかなか難しいな・・・
ディーンは話を続ける。
「私に資金はありませんから、期日までに全額返済できません。返済期日を過ぎると、ジョーは私に『担保物件を競売するから、直ぐに自宅から出ていけ』と言ってきました」
「急に?」
「そうです。私は自宅を追い出されました。そして、Lファイナンスは保有していた投資不動産と自宅を売却しはじめました。数週間すると、10物件と自宅が1億2,500万JDで売れたとジョーから連絡がありました。担保不動産の買い手は、レンソイス不動産です」
「ローン残高よりも高くは売れたのですね」
俺はディーンに気を使って言った。
「ええ。不動産の決済が終わると、Lファイナンスは売却代金とローン残高の差額500万JD(1億2,500万JD-1億2,000万JD)を、私の銀行口座に振込んできました。それに前後して1億2,000万JDのローンの完済通知も届きました」
「・・・」
俺たちはディーンに掛ける言葉が見つからなかった。
「話をまとめると、3年間で1億5,000万JDを借入して、投資不動産を2億JDで購入しました。借入金はローンの元本を3,000万返済して、時価5,000万JDの自宅を追加担保に入れました。でも、最終的に戻ってきたのは500万JDだけです。自宅からも追い出されました」とディーンは言った。
「トータルの損失を計算すると、物件購入時の自己資金5,000万JD、借入金返済3,000万JD、追加担保の自宅の時価5,000万JDに対して、500万JDの回収だから、1億2,500万JD(=5,000+3,000+5,000-500万JD)ですか」と俺は言った。
【図表4-1-4:ディーンの不動産投資における損益】
「大体それくらいの損失でしょう。今考えると、最初から仕組まれていたのではないかと思います。自宅を担保に追加させることも、販売したLシリーズを半額で買い戻すことも、最初からレンソイス不動産のリードが計画したのでしょう」
「そうかもしれませんね。ところで、レンソイス不動産があなたの物件を購入した後は、どうなったかご存じですか?」
「その後は、知りません。というよりも、調べられるような精神状態ではありませんでした」
「競売された自宅は調べていませんが、Lシリーズの方は、登記簿謄本を見る限り既にレンソイス不動産から、個人投資家に売却されています」
「・・・」
「10件のLシリーズの不動産にはロワール銀行の抵当権が付いていて、借入金が1億6,000万JDと記載されていました。投資用不動産の全額を借入で賄うことはないので、約2億JDでレンソイス不動産は個人投資家に売却したのでしょうね」と俺は説明した。
「本当にふざけた会社ですね。新しい被害者を出さないためにも、迅速な調査を私からもお願いします。私の手伝えることであれば、何でも協力しますから」
ディーンは怒りに震えながら言った。
「我々も全力を尽くします」と俺は言った。
ディーンの不動産投資は失敗し、最終的に巨額の損失が発生した。
可哀そうな結末になってしまったのは残念だ。
ディーンからは、一連の取引の流れを聞くことができた。
とても有用な情報を入手できたと思う。
ディーンから聞いた話をまとめると、レンソイス不動産→ロワール銀行→Lファイナンス→レンソイス不動産という流れで個人投資家からお金を吸い上げる仕組みのようだ。
念のために、あと4人からも話を聞いて、ディーンの話の信憑性を確認するつもりだ。
不動産会社に食い物にされる個人投資家を助けてあげたいとは思う。
でも、我々の調査目的は不正融資の証拠を掴むことだ。
被害者を出さないことではない。
なかなか難しいな・・・