第1話 正社員登用への道(その1)
文字数 1,303文字
俺の名前はダニエル。ジャービス王国という小さな国の第4王子だ。
中途半端な立ち位置なので、俺はジャービス王国で起こった事件を解決するために、探偵をしている。本当は内部調査部の部長なのだが、モチベーションを保つために、探偵という設定にしている。
(1)正社員登用への道
内部調査部に入ると、ミゲルが俺に相談があると言ってきた。いつもヘラヘラしているミゲルが真剣な顔で言うので、俺は身構える。
会議室に入ると、内部調査部のメンバーが全員着席している。
『ひょっとして、全員辞めるとか言い出さないよな?』と不安に感じつつも、俺は冷静を装った。
「それで、話というのは?」と俺はミゲルに聞いた
そうすると、ミゲルは覚悟を決めて言った。
「他のメンバーとも話し合ったのですが・・・」
その変な沈黙はなんだ?早く言ってくれ・・・。
俺は変な汗が出てくるのが分かった。
「私たちが内部調査部で働き始めて、約1年が過ぎました。そろそろ、正社員にしてもらないでしょうか?」とミゲルは一呼吸で言い切った。
「なんだ、そんなことか」俺はほっとした。
「じゃあ、正社員登用してもらえるんですか?」とミゲルが俺に聞いてくる。
「それは構わないけど、どうして?」
「第13穀物倉庫の件があって、私たち5人が解雇されてから、内部調査部で雇っていただいたことには感謝しています。ただ、待遇が正社員じゃないのが・・・」とミゲルが言ったら、ガブリエルが続いた。
「私の妻は、近所の人に『夫は役所でアルバイトしている』と言っています。世間体があるので、正社員がいいです」
ミゲルもガブリエルも真剣だ。そんなことなら、もっと早く言えばいいのに。
「5人の今の雇用形態は、契約社員だったよね?」と俺はメンバーに聞いた。
「そうです。契約社員って、アルバイトと正社員の中間、ややアルバイト寄りですよね?」とロイが言った。
「そういうことか。今やっと意味が分かった。総務省の契約社員は、アルバイトじゃないよ」
「じゃあ、正社員寄りですか?」とロイが聞いてきた。
「説明が難しいな。契約社員は、アルバイト寄りとか正社員寄りとか、そういう意味じゃなくて。専門職を雇う時の契約だ。契約期間を区切って、報酬額などの雇用条件を再契約時に改定していく」と俺は『契約社員とは何たるか』を説明する。
「でも、正社員の方が優遇されていますよね?」とミゲルが聞いてくる。
「うーん。それは、優遇の内容によるね」と俺は答える。
「じゃあ、契約社員の方が優遇されている場合もあるのですか?」とミゲルがしつこい。
「例えばだけど、ルイーズは総務省の課長代理だ。この6人の中で一番偉い。でも、給料はミゲルとどっちが高いと思う?」
「もちろん、ルイーズでしょう」とミゲルは言った。
「不正解。ミゲルだ」
「え、本当ですか?」とミゲルが驚いて言う。
「本当だよ。いくら高いかは言えないけど、ミゲルの方がかなり多い」と俺は答えた。
「そうなの?じゃあ、私も契約社員がいい」とルイーズが言い出した。こうなると面倒くさい。
「ちょっと、今は他のメンバーの話をしているから。ルイーズの件は後でもいいかな?」と俺はルイーズを諭す。
<続く>
中途半端な立ち位置なので、俺はジャービス王国で起こった事件を解決するために、探偵をしている。本当は内部調査部の部長なのだが、モチベーションを保つために、探偵という設定にしている。
(1)正社員登用への道
内部調査部に入ると、ミゲルが俺に相談があると言ってきた。いつもヘラヘラしているミゲルが真剣な顔で言うので、俺は身構える。
会議室に入ると、内部調査部のメンバーが全員着席している。
『ひょっとして、全員辞めるとか言い出さないよな?』と不安に感じつつも、俺は冷静を装った。
「それで、話というのは?」と俺はミゲルに聞いた
そうすると、ミゲルは覚悟を決めて言った。
「他のメンバーとも話し合ったのですが・・・」
その変な沈黙はなんだ?早く言ってくれ・・・。
俺は変な汗が出てくるのが分かった。
「私たちが内部調査部で働き始めて、約1年が過ぎました。そろそろ、正社員にしてもらないでしょうか?」とミゲルは一呼吸で言い切った。
「なんだ、そんなことか」俺はほっとした。
「じゃあ、正社員登用してもらえるんですか?」とミゲルが俺に聞いてくる。
「それは構わないけど、どうして?」
「第13穀物倉庫の件があって、私たち5人が解雇されてから、内部調査部で雇っていただいたことには感謝しています。ただ、待遇が正社員じゃないのが・・・」とミゲルが言ったら、ガブリエルが続いた。
「私の妻は、近所の人に『夫は役所でアルバイトしている』と言っています。世間体があるので、正社員がいいです」
ミゲルもガブリエルも真剣だ。そんなことなら、もっと早く言えばいいのに。
「5人の今の雇用形態は、契約社員だったよね?」と俺はメンバーに聞いた。
「そうです。契約社員って、アルバイトと正社員の中間、ややアルバイト寄りですよね?」とロイが言った。
「そういうことか。今やっと意味が分かった。総務省の契約社員は、アルバイトじゃないよ」
「じゃあ、正社員寄りですか?」とロイが聞いてきた。
「説明が難しいな。契約社員は、アルバイト寄りとか正社員寄りとか、そういう意味じゃなくて。専門職を雇う時の契約だ。契約期間を区切って、報酬額などの雇用条件を再契約時に改定していく」と俺は『契約社員とは何たるか』を説明する。
「でも、正社員の方が優遇されていますよね?」とミゲルが聞いてくる。
「うーん。それは、優遇の内容によるね」と俺は答える。
「じゃあ、契約社員の方が優遇されている場合もあるのですか?」とミゲルがしつこい。
「例えばだけど、ルイーズは総務省の課長代理だ。この6人の中で一番偉い。でも、給料はミゲルとどっちが高いと思う?」
「もちろん、ルイーズでしょう」とミゲルは言った。
「不正解。ミゲルだ」
「え、本当ですか?」とミゲルが驚いて言う。
「本当だよ。いくら高いかは言えないけど、ミゲルの方がかなり多い」と俺は答えた。
「そうなの?じゃあ、私も契約社員がいい」とルイーズが言い出した。こうなると面倒くさい。
「ちょっと、今は他のメンバーの話をしているから。ルイーズの件は後でもいいかな?」と俺はルイーズを諭す。
<続く>