第5話 世論調査(その6)
文字数 1,753文字
(5)世論調査 <続き>
俺の話を聞いていたスミスが言った。
「その前提に立てば・・・、米ドルの金利政策に応じて、ジャービス・ドル金利を調整すれば為替レートを操作できるということですか?」
「100%正しいわけではないけど、その可能性は高いと思うんだ」と俺は答えた。
為替取引にインサイダー取引はないから、ジャービス王国くらいの規模だったら金利操作すれば為替レートを操作することは可能だ。
ただ、為替操作をするかどうかは、国民世論を考えなければならない。
俺の考えをそのままメンバーに伝えるのは微妙なので、この会議ではわざとぼやかして答えている。
「もし、部長が今回の通貨対応をする場合、どう対応しますか?」とスミスが突っ込んで質問してきた。
「個人的にどう対応するのがいいと思っているか、という意味かな?」と俺はスミスに聞いた。
「そうです。純粋にジャービス王国として何をするのがベストか? という意味です」
「国民世論を無視して?」
「国民世論を無視しても、ジャービス王国にベストな対応です」とスミスは言った。
俺は考えを言うことにした。
「俺だったら、まず米ドルを大量に買付けた後で、ジャービス・ドル金利を下げるね」
「そうすると、今よりもジャービス・ドルが安く(為替レートが上がる)なりますよね?」とスミスが俺に言った。
「そうだよ。ついでに言うと、ヘッジファンドが追加で空売りするだろうからスポットレートの理論値(1米ドル=127JDのフォワードレートから算定したスポットレート)よりもジャービス・ドル安になると思う」
※JD(ジャービス・ドル)はジャービス王国の法定通貨です。1JD=1円としています。
「ジャービス・ドルを安く(為替レートが上がる)する目的はなんですか?」
「ジャービス国内の産業育成だね。ジャービス・ドルが安ければ、ジャービス国内で生産した農作物や製造した製品がよく売れるようになる。ついでに、外国企業がジャービス国内に投資しやすくなるから、外国企業にジャービス現地法人の設立や生産工場を提案しやすくなる。そうすれば、ジャービス王国のGDP(国内総生産)が上がるし、働く国民の給与も上がる」
「輸出額と国内投資額の拡大を狙っている、ということですね?」
「そういうこと。さらに、ジャービス・ドルが安く(為替レートが上がる)なる前に、大量に米ドルを購入しておけば、莫大な為替差益が出る。言い方は良くないけど、合法的なインサイダー取引だね」
「合法的なインサイダー取引・・・」スミスは言葉に詰まった。
「ジャービス・ドル安を利用して経済成長を促進すれば、自然にジャービス・ドルは高く(為替レートが下がる)なってくるはずだ。さらにジャービス・ドルを高くしたければ、ジャービス・ドルの金利を上げればいい」
「現時点でジャービス・ドルの金利を4%にすれば1米ドル=127JDです。もし、ジャービス王国の国内経済が成長した後であれば1米ドル=110~120JDくらいになりそうですね」
「そうだね。俺の言ったことを金利差と為替レートで説明すると、こんな感じかな?」
俺はそう言うとホワイトボードに図(図表7-12)を書いた。
【図表7-12:金利差と為替レート】
「ジャービス・ドルの金利を下げてジャービス・ドルが安く(為替レートが上がる)するけど、ヘッジファンドが空売りするだろうから、理論値よりもジャービス・ドル安になる。ジャービス・ドルの金利を上げたときはヘッジファンドが買戻しするだろうから、理論値よりもジャービス・ドル高になる。そんな感じ・・・。みんなはどう思う?」と俺は内部調査部のメンバーに聞いた。
「ジャービス王国の経済発展に貢献しそうですね。私はその案でいいと思います」とスミスは言った。
「その案を家族会議に出してみたら?」とルイーズも言った。
俺は2人の意見に少し驚いた。
ジャービス王国の国民はジャービス・ドル高の方が望ましいと思っていたからだ。
俺は他のメンバーにも聞いた。
「え? この案でいいの? 国民に受け入れられると思う? 」
「合法的なインサイダー取引で稼いだ利益から、国民に助成金でも出せば? そうしたら、国民はコロッと騙されるわよ」とルイーズは言った。
法治国家はこういうノリでいいのだろうか?
俺の話を聞いていたスミスが言った。
「その前提に立てば・・・、米ドルの金利政策に応じて、ジャービス・ドル金利を調整すれば為替レートを操作できるということですか?」
「100%正しいわけではないけど、その可能性は高いと思うんだ」と俺は答えた。
為替取引にインサイダー取引はないから、ジャービス王国くらいの規模だったら金利操作すれば為替レートを操作することは可能だ。
ただ、為替操作をするかどうかは、国民世論を考えなければならない。
俺の考えをそのままメンバーに伝えるのは微妙なので、この会議ではわざとぼやかして答えている。
「もし、部長が今回の通貨対応をする場合、どう対応しますか?」とスミスが突っ込んで質問してきた。
「個人的にどう対応するのがいいと思っているか、という意味かな?」と俺はスミスに聞いた。
「そうです。純粋にジャービス王国として何をするのがベストか? という意味です」
「国民世論を無視して?」
「国民世論を無視しても、ジャービス王国にベストな対応です」とスミスは言った。
俺は考えを言うことにした。
「俺だったら、まず米ドルを大量に買付けた後で、ジャービス・ドル金利を下げるね」
「そうすると、今よりもジャービス・ドルが安く(為替レートが上がる)なりますよね?」とスミスが俺に言った。
「そうだよ。ついでに言うと、ヘッジファンドが追加で空売りするだろうからスポットレートの理論値(1米ドル=127JDのフォワードレートから算定したスポットレート)よりもジャービス・ドル安になると思う」
※JD(ジャービス・ドル)はジャービス王国の法定通貨です。1JD=1円としています。
「ジャービス・ドルを安く(為替レートが上がる)する目的はなんですか?」
「ジャービス国内の産業育成だね。ジャービス・ドルが安ければ、ジャービス国内で生産した農作物や製造した製品がよく売れるようになる。ついでに、外国企業がジャービス国内に投資しやすくなるから、外国企業にジャービス現地法人の設立や生産工場を提案しやすくなる。そうすれば、ジャービス王国のGDP(国内総生産)が上がるし、働く国民の給与も上がる」
「輸出額と国内投資額の拡大を狙っている、ということですね?」
「そういうこと。さらに、ジャービス・ドルが安く(為替レートが上がる)なる前に、大量に米ドルを購入しておけば、莫大な為替差益が出る。言い方は良くないけど、合法的なインサイダー取引だね」
「合法的なインサイダー取引・・・」スミスは言葉に詰まった。
「ジャービス・ドル安を利用して経済成長を促進すれば、自然にジャービス・ドルは高く(為替レートが下がる)なってくるはずだ。さらにジャービス・ドルを高くしたければ、ジャービス・ドルの金利を上げればいい」
「現時点でジャービス・ドルの金利を4%にすれば1米ドル=127JDです。もし、ジャービス王国の国内経済が成長した後であれば1米ドル=110~120JDくらいになりそうですね」
「そうだね。俺の言ったことを金利差と為替レートで説明すると、こんな感じかな?」
俺はそう言うとホワイトボードに図(図表7-12)を書いた。
【図表7-12:金利差と為替レート】
「ジャービス・ドルの金利を下げてジャービス・ドルが安く(為替レートが上がる)するけど、ヘッジファンドが空売りするだろうから、理論値よりもジャービス・ドル安になる。ジャービス・ドルの金利を上げたときはヘッジファンドが買戻しするだろうから、理論値よりもジャービス・ドル高になる。そんな感じ・・・。みんなはどう思う?」と俺は内部調査部のメンバーに聞いた。
「ジャービス王国の経済発展に貢献しそうですね。私はその案でいいと思います」とスミスは言った。
「その案を家族会議に出してみたら?」とルイーズも言った。
俺は2人の意見に少し驚いた。
ジャービス王国の国民はジャービス・ドル高の方が望ましいと思っていたからだ。
俺は他のメンバーにも聞いた。
「え? この案でいいの? 国民に受け入れられると思う? 」
「合法的なインサイダー取引で稼いだ利益から、国民に助成金でも出せば? そうしたら、国民はコロッと騙されるわよ」とルイーズは言った。
法治国家はこういうノリでいいのだろうか?