第3話 スペシャリストらしく調査しよう(その1)
文字数 1,741文字
(3)スペシャリストらしく調査しよう
ジョルジュからスペシャリストの話を聞いて俺は自信とやる気を取り戻した。
もしかしたら俺はジョルジュに乗せられただけかもしれない・・・
俺の心が折れそうになっていることに気付いたかもしれない・・・
俺が直属の上司(チャールズ)の弟だから、気を使ってくれたのかもしれない・・・
ベテラン警察官はお世辞の一つも言えないと出世できない。
ジョルジュがどういう理由で俺に話したかは分からないが、俺がやる気を取り戻したことは間違いない。
俺は名探偵にはなれないかもしれないが、スペシャリストとして事件を解決していこうと心に決めた。
気分よく内部調査部に戻ってきた俺は、さっそく部の方針を書にしたためた。
“名探偵を目指すな! 俺たちはスペシャリストだ!”
俺のしたためた書を壁に飾ったら、ミゲルだけが拍手して喜んでくれた。太鼓持ち(ミゲル)は俺を気分よくさせてくれる。
ルイーズは失笑しているのだが。
次に、気分が乗ってきた俺は内部告発ホットラインに届いた案件を確認することにした。
ルイーズに内容を確認すると、内部告発ホットラインに届いた案件は大きく以下の2種類のようだ。
①インフレを何とかして欲しい
②ジャービス・ドル(JD)が安くなって海外旅行ができない
“こんなの不正調査じゃねー”
俺は思わず叫びそうになった。
これらは内部告発じゃない。
そして、インフレ対応や為替対応するのは内務省だ。総務省じゃない。
「他にないの?」と俺はルイーズに不満げに聞いた。
「あるけど。クソみたいな案件だけどいい?」
「例えば?」
「銅の値下げを強要されています。何とかして下さい!」
「ルースだろ?」
「正解!」
※詳しくは『第2回活動報告:カルテルを潰せ』を参照下さい。
「他には?」と俺は聞いた。
「劣後債の買取価格を額面の80%にしてほしい!」
「IFA(Independent Financial Advisor)だろ?」
「正解!」
※詳しくは『第3回活動報告:投資詐欺から高齢者を守れ』を参照下さい。
「他には?」
このやり取りがしばらく続いたものの、内部調査部で取り扱うべき案件は届いていなかった。
「インフレとJD安の対応する?」と俺はルイーズに聞いた。
「本来対応するのは内務省でしょ。ちゃんと対策しているか、チャールズに聞いてみたら?」とルイーズは言った。
「えー。アイツは俺たちにやらせようとするぞ。絶対に!」
正直に言うと、俺はチャールズに聞きに行きたくないのだ。
「もし内務省が対応してなかったら、国王に言い付ければいいじゃない。さすがに通貨政策を内部調査部でしなくてもいいでしょ」ルイーズはごく当然のことを言った。
「そうだったら良いけどさー。まあ、新規案件がないし、チャールズのところに聞きに行ってみるか・・・」
こうして俺は、ルイーズとロイと一緒に内務省のチャールズに会いに行くことになった。
***
俺たちが内務省のチャールズの部屋に入ると、あろうことか奴は俺を無視して女性2人に話しかけた。
「確か、ルイーズとロイだよね?」
「そうです。ありがとうございます。覚えてくれていたんですね」とロイがお世辞を言った。
ロイの顔は嫌がっているような気がするが、チャールズは女性を直視できないので気付かない。
※詳しくは『第5回活動報告:仮想通貨の詐欺集団を捕まえろ (11)投資計画を説明しよう(その5)』を参照下さい。
嫌われているのに気付かないチャールズは、実は幸せなのかもしれない。
ヘラヘラ笑っているチャールズに無視された俺は、イライラしながら要件を切り出した。
「内部告発ホットラインに、最近はインフレ対応と為替対応の相談ばかりくるんです。例えは『インフレを何とかしてほしい!』とか、『ジャービス・ドルが安くて海外旅行にいけない!』とか・・・。インフレ対応と為替対応は総務省の管轄じゃありません。内務省の管轄だと思いますけど、どうなってるんですか?」
「ああ、それね。原因は分かってる。対応しようと思ってるよ」とチャールズは言った。
「思ってる? まさか、対応してないんですか?」俺は大人げなくチャールズの揚げ足を取った。
喧嘩腰の俺にチャールズは少しムカついたようだ。
<続く>
ジョルジュからスペシャリストの話を聞いて俺は自信とやる気を取り戻した。
もしかしたら俺はジョルジュに乗せられただけかもしれない・・・
俺の心が折れそうになっていることに気付いたかもしれない・・・
俺が直属の上司(チャールズ)の弟だから、気を使ってくれたのかもしれない・・・
ベテラン警察官はお世辞の一つも言えないと出世できない。
ジョルジュがどういう理由で俺に話したかは分からないが、俺がやる気を取り戻したことは間違いない。
俺は名探偵にはなれないかもしれないが、スペシャリストとして事件を解決していこうと心に決めた。
気分よく内部調査部に戻ってきた俺は、さっそく部の方針を書にしたためた。
“名探偵を目指すな! 俺たちはスペシャリストだ!”
俺のしたためた書を壁に飾ったら、ミゲルだけが拍手して喜んでくれた。太鼓持ち(ミゲル)は俺を気分よくさせてくれる。
ルイーズは失笑しているのだが。
次に、気分が乗ってきた俺は内部告発ホットラインに届いた案件を確認することにした。
ルイーズに内容を確認すると、内部告発ホットラインに届いた案件は大きく以下の2種類のようだ。
①インフレを何とかして欲しい
②ジャービス・ドル(JD)が安くなって海外旅行ができない
“こんなの不正調査じゃねー”
俺は思わず叫びそうになった。
これらは内部告発じゃない。
そして、インフレ対応や為替対応するのは内務省だ。総務省じゃない。
「他にないの?」と俺はルイーズに不満げに聞いた。
「あるけど。クソみたいな案件だけどいい?」
「例えば?」
「銅の値下げを強要されています。何とかして下さい!」
「ルースだろ?」
「正解!」
※詳しくは『第2回活動報告:カルテルを潰せ』を参照下さい。
「他には?」と俺は聞いた。
「劣後債の買取価格を額面の80%にしてほしい!」
「IFA(Independent Financial Advisor)だろ?」
「正解!」
※詳しくは『第3回活動報告:投資詐欺から高齢者を守れ』を参照下さい。
「他には?」
このやり取りがしばらく続いたものの、内部調査部で取り扱うべき案件は届いていなかった。
「インフレとJD安の対応する?」と俺はルイーズに聞いた。
「本来対応するのは内務省でしょ。ちゃんと対策しているか、チャールズに聞いてみたら?」とルイーズは言った。
「えー。アイツは俺たちにやらせようとするぞ。絶対に!」
正直に言うと、俺はチャールズに聞きに行きたくないのだ。
「もし内務省が対応してなかったら、国王に言い付ければいいじゃない。さすがに通貨政策を内部調査部でしなくてもいいでしょ」ルイーズはごく当然のことを言った。
「そうだったら良いけどさー。まあ、新規案件がないし、チャールズのところに聞きに行ってみるか・・・」
こうして俺は、ルイーズとロイと一緒に内務省のチャールズに会いに行くことになった。
***
俺たちが内務省のチャールズの部屋に入ると、あろうことか奴は俺を無視して女性2人に話しかけた。
「確か、ルイーズとロイだよね?」
「そうです。ありがとうございます。覚えてくれていたんですね」とロイがお世辞を言った。
ロイの顔は嫌がっているような気がするが、チャールズは女性を直視できないので気付かない。
※詳しくは『第5回活動報告:仮想通貨の詐欺集団を捕まえろ (11)投資計画を説明しよう(その5)』を参照下さい。
嫌われているのに気付かないチャールズは、実は幸せなのかもしれない。
ヘラヘラ笑っているチャールズに無視された俺は、イライラしながら要件を切り出した。
「内部告発ホットラインに、最近はインフレ対応と為替対応の相談ばかりくるんです。例えは『インフレを何とかしてほしい!』とか、『ジャービス・ドルが安くて海外旅行にいけない!』とか・・・。インフレ対応と為替対応は総務省の管轄じゃありません。内務省の管轄だと思いますけど、どうなってるんですか?」
「ああ、それね。原因は分かってる。対応しようと思ってるよ」とチャールズは言った。
「思ってる? まさか、対応してないんですか?」俺は大人げなくチャールズの揚げ足を取った。
喧嘩腰の俺にチャールズは少しムカついたようだ。
<続く>