第11話 投資計画を説明しよう(その4)

文字数 1,557文字

(11)投資計画を説明しよう <続き>

 私は投資有価証券の説明を続ける。

「そうです。過去の回収実績は悪くないため、我々が簿価純資産額で評価した1億JDでは、現経営陣は低すぎると思うかも知れません」

「それはそうかもね」

「我々の投資目的は暗号資産の発行会社と交換業者の買収です。譲渡対象に投資有価証券を含めても、含めなくても、どちらでも構わないと考えています」

「そうだな。ベンチャー投資は投資対象ではないな」

「このため、投資有価証券をジャービットで継続保有するケース(提案1)、現経営陣に売却するケース(提案2)に分けて、現経営陣に選んでもらおうと思っています」

「そうか。それにしても、ベンチャー企業が60社かー。モニタリングが大変そうだな・・・」チャールズはボソッと言った。

 やはり、チャールズはベンチャー投資に興味がなさそうだ。
 『ベンチャー投資に興味があったらどうしようか?』と考えていたのだが、チャールズに興味がなくて良かった。
 とは言え、投資有価証券が投資対象に含まれるかもしれない。
 私は念のために、チャールズに投資有価証券のモニタリングについて説明することにした。

「確かにモニタリングは60社必要ですが、出資比率は低いので積極的に経営に関わる必要はありません。もし投資有価証券を継続保有することになっても、それほど手間が掛かるわけではないと思っています」

「そうか。まあ、現経営陣が引き取る可能性が高そうだし、ジャービットが継続保有するのは20~30%くらいか・・・。分かった。それで、ジャービットへの出資額は5億JDで大丈夫なのか?」

「はい。当面は5億JDあれば足りると思います。もし発行済のジャービット・コインを全てジャービットが購入した場合、現預金がゼロになりますが、現実的に全顧客が売却することはないでしょう。運転資金として追加資金が必要な場合は、『不足が生じたら追加で出資又は貸付する』と説明しておけばいいと考えています」

「5億JD+αか。新規で設立しても、営業開始までに5億JDは掛かるだろうから、金額的には問題ないか」

 チャールズは私が説明した会社への提案2つに納得したようだ。

 そろそろ会議も終わりかと私が思っていたら、ダニエルが発言した。

「じゃあ、会社にはこの2つを提案します。ところで、ジャービット・エクスチェンジは顧客資産が急激に流出しています。だから、暗号資産取引が正常化しても利益が出るまで時間が掛かると思います。チャールズ兄さんは、暗号資産の会社を買収して具体的にどう使う予定ですか?」

 確かに、ダニエルの質問は尤(もっと)もだ。
 民事再生の申請過程で聞かれるだろうし、買収目的は理解しておくべきだろう。

「まずは、発行した暗号資産を納税などの国内の公共サービスに使えるようにしたいんだ」とチャールズは言った。

「どういう風に使うんですか?」

「ジャービス王国が発行する通貨はジャービス・ドルだ。国民が保有しているジャービス・ドルは国民のものだ。だから、国は勝手に使えない」

「そりゃそうだ」

「でも、国民が銀行に預金した場合、銀行は国民のお金を使える。預金利息を払う必要はあるけどね。同じように、電子マネーは銀行の預金からアプリにチャージする。だから、電子マネーの発行会社は国民のお金を使える・・・」

 チャールズが途中まで説明したところで、ダニエルが割り込んで言った。

「あー、そういうことか。何となく分かりました。続きを言いましょうか?」

 の●太がス●夫を挑発している。
 ス●夫は『の●太のくせに生意気な!』と思っているだろう。

「ちょっと待て! 勝手に答えを言うな! 私の事業戦略だから、私に最後まで言わせてくれないか」ス●夫はの●太に続きを言われると困るから、焦って言った。


 <続く>
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登場人物紹介

ダニエル:ジャービス王国の第4王子。総務大臣。

ルイーズ:総務省 内部調査部 課長代理

ジェームス:ジャービス王国第1王子。軍本部 総司令

チャールズ:ジャービス王国の第2王子。内務大臣。

アンドリュー:ジャービス王国の第3王子。外務大臣。

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