第2話 来期予算をメンバーに伝える
文字数 1,487文字
(2) 来期予算をメンバーに伝える
割振られた来期予算を内部調査部のメンバーに伝えるため、俺はミーティングをしている。
そして、会議の本題は来期予算をどうやって達成するかだ。
内部調査部はジャービス王国での不正調査を行う部署だ。本来はコストセンターのはず。
過去に取り組んだ案件の成り行き上、銅取引と劣後社債の取引で利益を上げてしまった。
そして、内部調査部が収益を上げていることを把握しているチャールズの策略で、俺たち内部調査部は国の財政を支える収益部門として予算が割り振られることになった。
会議の冒頭、俺はメンバーに状況を説明することにした。
「みなさん、劣後社債の件はお疲れ様でした」
「お疲れ様でしたー」とミゲルが言った。
「今日は皆さんに重要な報告があります」
「なんですか?結婚するんですか?」とミゲルが楽しそうに言った。
「違います」俺は短く言った。
メンバーの視線が俺に集まった。
「えー、不本意ながら、内部調査部に来期予算が設定されました。費用ではなく、収益です。40億JDです。これから、儲かる案件を増やしていこうと思います」と俺はぶっきらぼうに言った。
※JD(ジャービス・ドル)はジャービス王国の法定通貨です。1JD=1円と考えて下さい。
「えー?収益?なぜ内部調査部が利益出さないといけないの?」ルイーズは不満そうだ。
「そんなこと言われても知らないよ。銅と劣後社債の取引で今期は34億JD儲かったから、来期も同じくらい稼いでほしいそうだ」
「あなたの家族はクソ野郎しかいないわね」ルイーズは言った。
「そうだ。あいつら全員クソ野郎だ」と俺は言った。
「クソ野郎だ」とロイが続く。
俺たちが騒いでいると、スミスが発言した。
「私もクソ野郎だとは思いますが、国家予算として決定してしまったのであれば、もう覆せません。気持ちを切り替えて、対策を立てましょう」
なんて大人な対応だろうか。
「失礼。つい取り乱した」と俺は謝った。
「いえ。お気持ちは分かります」スミスが俺を気遣ってフォローしてくれた。
「俺が言いたかったのは、内部調査部の方針。今後の調査案件は、国民のためになりつつ、儲かる案件を優先しようということ。収益予算が設定されたから一方だけではダメ」俺は本題に入った。
「内部調査部を設置した趣旨とずれてきたわね」とルイーズが言った。
「そうだね。そう思う」
「それで、年度予算をクリアすれば、儲からない案件を調査してもいいの?」とルイーズが聞いてきた。
「もちろん。予算を達成したら、本来の内部調査部の業務ができる」
「じゃあ、先にノルマをこなそう」とルイーズが言った。いつになく前向きだ。
「そうだね」
「1から3の中で、好きな数字は?」とルイーズは唐突に俺に聞いた。
「2かな」と俺は答える。
「それでは、今回のお題を発表します」
ミゲルが拍手した。
「じゃーん、今回は『不正融資を暴け』に決定しました」ルイーズが宣言した。
続いて、ルイーズは2番の封筒に入った内部告発ホットラインの相談案件をメンバーに見せた。
================
不動産会社に勤務しているものです。
最近、営業部で顧客が不動産を購入する時のローン審査書類の改竄(かいざん)が頻繁しています。営業ノルマが厳しいことが原因と思われますが、誰も見知らぬフリをしています。
不正融資に該当すると思うため、一度調査をお願いします。
================
ということで、内部調査部の第4回の調査案件が決定した。
いつも案件を選ぶのに時間が掛かるので、これくらい強引でもいいのかもしれない。
今回は不正融資か・・・。
割振られた来期予算を内部調査部のメンバーに伝えるため、俺はミーティングをしている。
そして、会議の本題は来期予算をどうやって達成するかだ。
内部調査部はジャービス王国での不正調査を行う部署だ。本来はコストセンターのはず。
過去に取り組んだ案件の成り行き上、銅取引と劣後社債の取引で利益を上げてしまった。
そして、内部調査部が収益を上げていることを把握しているチャールズの策略で、俺たち内部調査部は国の財政を支える収益部門として予算が割り振られることになった。
会議の冒頭、俺はメンバーに状況を説明することにした。
「みなさん、劣後社債の件はお疲れ様でした」
「お疲れ様でしたー」とミゲルが言った。
「今日は皆さんに重要な報告があります」
「なんですか?結婚するんですか?」とミゲルが楽しそうに言った。
「違います」俺は短く言った。
メンバーの視線が俺に集まった。
「えー、不本意ながら、内部調査部に来期予算が設定されました。費用ではなく、収益です。40億JDです。これから、儲かる案件を増やしていこうと思います」と俺はぶっきらぼうに言った。
※JD(ジャービス・ドル)はジャービス王国の法定通貨です。1JD=1円と考えて下さい。
「えー?収益?なぜ内部調査部が利益出さないといけないの?」ルイーズは不満そうだ。
「そんなこと言われても知らないよ。銅と劣後社債の取引で今期は34億JD儲かったから、来期も同じくらい稼いでほしいそうだ」
「あなたの家族はクソ野郎しかいないわね」ルイーズは言った。
「そうだ。あいつら全員クソ野郎だ」と俺は言った。
「クソ野郎だ」とロイが続く。
俺たちが騒いでいると、スミスが発言した。
「私もクソ野郎だとは思いますが、国家予算として決定してしまったのであれば、もう覆せません。気持ちを切り替えて、対策を立てましょう」
なんて大人な対応だろうか。
「失礼。つい取り乱した」と俺は謝った。
「いえ。お気持ちは分かります」スミスが俺を気遣ってフォローしてくれた。
「俺が言いたかったのは、内部調査部の方針。今後の調査案件は、国民のためになりつつ、儲かる案件を優先しようということ。収益予算が設定されたから一方だけではダメ」俺は本題に入った。
「内部調査部を設置した趣旨とずれてきたわね」とルイーズが言った。
「そうだね。そう思う」
「それで、年度予算をクリアすれば、儲からない案件を調査してもいいの?」とルイーズが聞いてきた。
「もちろん。予算を達成したら、本来の内部調査部の業務ができる」
「じゃあ、先にノルマをこなそう」とルイーズが言った。いつになく前向きだ。
「そうだね」
「1から3の中で、好きな数字は?」とルイーズは唐突に俺に聞いた。
「2かな」と俺は答える。
「それでは、今回のお題を発表します」
ミゲルが拍手した。
「じゃーん、今回は『不正融資を暴け』に決定しました」ルイーズが宣言した。
続いて、ルイーズは2番の封筒に入った内部告発ホットラインの相談案件をメンバーに見せた。
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不動産会社に勤務しているものです。
最近、営業部で顧客が不動産を購入する時のローン審査書類の改竄(かいざん)が頻繁しています。営業ノルマが厳しいことが原因と思われますが、誰も見知らぬフリをしています。
不正融資に該当すると思うため、一度調査をお願いします。
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ということで、内部調査部の第4回の調査案件が決定した。
いつも案件を選ぶのに時間が掛かるので、これくらい強引でもいいのかもしれない。
今回は不正融資か・・・。