第5話 世論調査(その1)

文字数 1,490文字

(5)世論調査

 家族会議が終わって俺は総務省に戻った。
 国民の為替問題に関する意識調査を内部告発ホットラインで調べるためだ。

 俺は早速、内部告発ホットラインを使ってアンケート調査を実施することにした。
 今回のアンケートは、為替レートが変動することによって国民や企業がどのように感じているかを調査することが目的だ。政府系機関が実施する簡単な世論調査と言ってもいいだろう。

 ルイーズに作ってもらった質問事項は多かったので、俺はその中から必要最低限をピックアップして下記の2つにした。内部告発ホットラインはスマホのアプリなので、俺は質問数を極力絞った方がいいと考えたからだ。

 なお、俺はジャービス王国内の企業に、今回のアンケート調査の結果をもとにジャービス王国の為替政策を検討することを伝えた。法人(会社)にも積極的にアンケート調査に回答してもらおうと考えたからだ。
 アンケート調査の回答者が個人に偏ると、ジャービス王国の経済を客観的に判断することができない。


【為替レートに関する国民調査】
――――――――
【質問1】あなた(又は、貴社)はジャービス・ドルの変動をどのように感じていますか?
 次の中から選択して下さい。

A:ジャービス・ドルは安い方(1米ドル=100JDから1米ドル=150JDになること)がいい
B:ジャービス・ドルは高い方(1米ドル=100JDから1米ドル=80JDになること)がいい
C:どちらでもない


【質問2】質問に回答したあなた(又は、貴社)の立場を教えて下さい。

A:法人(小売業)
B:法人(製造業)
C:農業関係者(法人、個人)
D:法人(その他)
E:個人(自営業)
F:個人(会社員)
G:個人(主婦、学生など)

――――――――

※JD(ジャービス・ドル)はジャービス王国の法定通貨です。1JD=1円と考えて下さい。

 アンケート開始から1週間が経過して、結果(図表7-4)が俺のところに届いた。

【図表7-4:為替レートに関するアンケート結果】
 



 アンケート結果は、概ね俺が予想していた通りの結果だった。

 まず、法人(小売業)はB(JD高を希望)が95%を占めている。
 JD安になると輸入品の仕入価格が上がるが、すぐに消費者に価格転嫁できないから小売業の利益を圧迫することになる。

 逆に、農業関係者は80%がA(JD安を希望)している。
 農作物の製造原価は為替レートの変動に関係しないが、JD安になると農作物の輸出による売上が増える。

 法人(製造業)の回答はA(JD安を希望)、B(JD高を希望)、C(どちらでもない)が同じくらい存在している。
 これは、製造業と一括りにしても、ジャービス王国内で製造しているか、海外で製造しているかによって為替レートの変動の影響は異なる。また、主な販売先が国内か海外かによっても影響度が違うからだ。

 個人はどちらかというとB(JD高を希望)が多いような気がする。ジャービス王国の小売店舗(スーパーマーケット)で売られているものは国内産の商品が多いから、あまり為替レートの変動は影響しない。
 ただし、一部の商品は海外から輸入しているから、JD安になると家計支出が増えることになる。だから、個人にとってはJD高の方が好ましいのだろう。

 俺は集計したアンケート結果をもとに、内部調査部でジャービス王国が採用すべき為替政策を検討することにした。
 アンケート結果のみを家族会議で発表するのは、仕事ができない奴のやることだ。
 結果をもとに対応策を示してこそ意味がある。

 ただ、そうなると内部調査部で為替対応をさせられる可能性もあるのだが・・・

 <続く>
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登場人物紹介

ダニエル:ジャービス王国の第4王子。総務大臣。

ルイーズ:総務省 内部調査部 課長代理

ジェームス:ジャービス王国第1王子。軍本部 総司令

チャールズ:ジャービス王国の第2王子。内務大臣。

アンドリュー:ジャービス王国の第3王子。外務大臣。

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