第3話 ダウラファンド(その1)
文字数 2,128文字
(3) ダウラファンド
俺たちはダウラファンドの実態を調査するために、ダウラファンドが過去に買収した会社について調査することにした。
ホセが話したように、ダウラファンドの本業はアクティビストだ。
アクティビストは株価を上げるために、会社に配当金支払いの増額を要求したり、不採算事業からの撤退を提案したりする。株価が上がったら売り抜けて利益を確定するのがアクティビストの投資スタイルだ。アクティビストは株価を上げて、上がった後に売却するのが目的だから、会社の経営には興味がない。
ダウラファンドの数年前までの投資先は議決権比率が20%を超えることはなく、会社を買収した事例はなかった。
しかし、アクティビストのはずのダウラファンドは、今から2年前に会社の買収を開始している。
最初の案件は純粋にPBRが低い割安な会社をTOB(Take Over Bid:株式公開買付け)によって取得して、非公開化した後、ジャービス国内の事業会社に売却している。
上場会社と非上場会社の方が株価評価方法の違いを狙ったもので、俺がミゲルに説明したケースと同じだ。
次の案件は、TOBによって株式を取得し、会社を非公開化した後、会社の本社建物などを売却し、法人を清算している。このケースは、会社の保有資産を売却して投資資金を回収しようとしたようだ。この案件は、資産の切り売りと言っていいだろう。
3件目以降は、TOBで非公開化した後、会社を売却するか事業を売却している。最初の案件と似ているのだが、グルーバルニッチトップ(GNT:隙間市場で占有率が高い企業)を買収の対象にしている。ジャービス王国では知名度はなく株式価値が低いのだが、世界的では知られている会社だ。
俺の推理によれば、3件目から技術力のある会社を買収して他社に売却することに特化しているように思う。
理由はダウラアセットマネジメントが使用しているファンドだ。
ダウラアセットマネジメントは多くのファンドを運用していて、それらのファンドを総称してダウラファンドと言われている。
ファンドはそれぞれ別物だから、全てのダウラファンドは同じファンドマネージャーが運用しているわけではないし、出資者も全く別物だ。
俺たちが調べたところ、ダウラアセットマネジメントが運用するファンドのうち大量保有報告書を提出しているファンドは以下の6つだった。
ファンド1:Daoulas Special Opportunities Fund LP
ファンド2:Daoulas Active Investment LP
ファンド3:Daoulas Finance LP
ファンド4:Daoulas Investment LP
ファンド5:Daoulas Acquisition Investment LP
ファンド6:Daoulas Jarvis Acquisition Investment LP
ファンド1~4はダウラアセットマネジメントが以前から運用しているアクティビストファンドだ。ファンド5(Daoulas Acquisition Investment LP)とファンド6(Daoulas Jarvis Acquisition Investment LP)が買収に利用されているファンドと思われる。
思われると言ったのは、ダウラアセットマネジメントが会社を買収するまでの間、株式を保有しているのがアクティビストファンド(ファンド1~4)でTOBをしているファンドがファンド5~6だからだ。
ダウラアセットマネジメントはアクティビストだから、当初は割安の上場会社の株式を買い集めた後、株価を上げるための提案を行うはずだ。その上場会社の株価が上がったらファンドが保有する上場会社株式を売却して、利益を確定する。この場合に登場するファンドはアクティビストファンド(ファンド1~4)だけだ。
ダウラアセットマネジメントの提案が通らない場合で、対象会社を買収しようと考えた場合は買収用ファンド(ファンド5~6)が対象会社(上場会社)にTOB(株式公開買付け)を行っている(図表6-5)。
買収ファンドがTOBを実施したらアクティビストファンドは買収ファンドに対象会社の株式を売却できる。アクティビストファンドは利益を確定できるから、アクティビストファンドの投資家は会社を買収するリスクを取らなくてもいい。
すなわち、アクティビストファンドのエグジット(Exit:投資の出口)手段として利用できるのだ。
【図表6-5:ダウラファンドの戦略】
ただ、この法則性は絶対ではないため、ダウラアセットマネジメントは戦略をその都度臨機応変に使い分けているような気がする。
会社を買収するのは手間が掛かる。ダウラアセットマネジメントはアクティビストだから、本当は会社の買収をしたくないはずだ。手っ取り早く売り抜けた方が楽に稼げる。
俺の推測では、ある投資家の依頼でアクティビストファンドの投資先を買収したいという提案を受けたから、このような投資戦略を採るようになったと考えている。
俺の推理は最近当たってないから、この推理が正しいかどうかは分からないけど・・・
<続く>
俺たちはダウラファンドの実態を調査するために、ダウラファンドが過去に買収した会社について調査することにした。
ホセが話したように、ダウラファンドの本業はアクティビストだ。
アクティビストは株価を上げるために、会社に配当金支払いの増額を要求したり、不採算事業からの撤退を提案したりする。株価が上がったら売り抜けて利益を確定するのがアクティビストの投資スタイルだ。アクティビストは株価を上げて、上がった後に売却するのが目的だから、会社の経営には興味がない。
ダウラファンドの数年前までの投資先は議決権比率が20%を超えることはなく、会社を買収した事例はなかった。
しかし、アクティビストのはずのダウラファンドは、今から2年前に会社の買収を開始している。
最初の案件は純粋にPBRが低い割安な会社をTOB(Take Over Bid:株式公開買付け)によって取得して、非公開化した後、ジャービス国内の事業会社に売却している。
上場会社と非上場会社の方が株価評価方法の違いを狙ったもので、俺がミゲルに説明したケースと同じだ。
次の案件は、TOBによって株式を取得し、会社を非公開化した後、会社の本社建物などを売却し、法人を清算している。このケースは、会社の保有資産を売却して投資資金を回収しようとしたようだ。この案件は、資産の切り売りと言っていいだろう。
3件目以降は、TOBで非公開化した後、会社を売却するか事業を売却している。最初の案件と似ているのだが、グルーバルニッチトップ(GNT:隙間市場で占有率が高い企業)を買収の対象にしている。ジャービス王国では知名度はなく株式価値が低いのだが、世界的では知られている会社だ。
俺の推理によれば、3件目から技術力のある会社を買収して他社に売却することに特化しているように思う。
理由はダウラアセットマネジメントが使用しているファンドだ。
ダウラアセットマネジメントは多くのファンドを運用していて、それらのファンドを総称してダウラファンドと言われている。
ファンドはそれぞれ別物だから、全てのダウラファンドは同じファンドマネージャーが運用しているわけではないし、出資者も全く別物だ。
俺たちが調べたところ、ダウラアセットマネジメントが運用するファンドのうち大量保有報告書を提出しているファンドは以下の6つだった。
ファンド1:Daoulas Special Opportunities Fund LP
ファンド2:Daoulas Active Investment LP
ファンド3:Daoulas Finance LP
ファンド4:Daoulas Investment LP
ファンド5:Daoulas Acquisition Investment LP
ファンド6:Daoulas Jarvis Acquisition Investment LP
ファンド1~4はダウラアセットマネジメントが以前から運用しているアクティビストファンドだ。ファンド5(Daoulas Acquisition Investment LP)とファンド6(Daoulas Jarvis Acquisition Investment LP)が買収に利用されているファンドと思われる。
思われると言ったのは、ダウラアセットマネジメントが会社を買収するまでの間、株式を保有しているのがアクティビストファンド(ファンド1~4)でTOBをしているファンドがファンド5~6だからだ。
ダウラアセットマネジメントはアクティビストだから、当初は割安の上場会社の株式を買い集めた後、株価を上げるための提案を行うはずだ。その上場会社の株価が上がったらファンドが保有する上場会社株式を売却して、利益を確定する。この場合に登場するファンドはアクティビストファンド(ファンド1~4)だけだ。
ダウラアセットマネジメントの提案が通らない場合で、対象会社を買収しようと考えた場合は買収用ファンド(ファンド5~6)が対象会社(上場会社)にTOB(株式公開買付け)を行っている(図表6-5)。
買収ファンドがTOBを実施したらアクティビストファンドは買収ファンドに対象会社の株式を売却できる。アクティビストファンドは利益を確定できるから、アクティビストファンドの投資家は会社を買収するリスクを取らなくてもいい。
すなわち、アクティビストファンドのエグジット(Exit:投資の出口)手段として利用できるのだ。
【図表6-5:ダウラファンドの戦略】
ただ、この法則性は絶対ではないため、ダウラアセットマネジメントは戦略をその都度臨機応変に使い分けているような気がする。
会社を買収するのは手間が掛かる。ダウラアセットマネジメントはアクティビストだから、本当は会社の買収をしたくないはずだ。手っ取り早く売り抜けた方が楽に稼げる。
俺の推測では、ある投資家の依頼でアクティビストファンドの投資先を買収したいという提案を受けたから、このような投資戦略を採るようになったと考えている。
俺の推理は最近当たってないから、この推理が正しいかどうかは分からないけど・・・
<続く>