回顧録第1話 王子が私の前にやってきた(その1)
文字数 2,037文字
(1)王子が私の前にやってきた
私の名前はロイ。独身だ。総務省の内部調査部で働いている。
借金を返し終わったので、そろそろ転職するか迷っている。迷う理由は幾つかある。
ちなみに、前職はジャービス王国の第13穀物倉庫だ。購買部で課長代理として勤務していた。
その前は、バスケットボールの選手として、自動車メーカーに所属していた。
ここでは私の少し話をしようと思う。少しと言いながら、長いかもしれないけど。
***
私は小さいころからスポーツが得意だった。
高校生のときバスケットボールの全国大会で準優勝して、大学へはスポーツ推薦でバスケットボールの強豪校に進学した。
勉強はそこまで得意じゃなかったから、大学ではバスケットボール中心の生活を送っていた。それとは別に、叔父から頼まれてアルバイトでアパレルメーカーのモデルをするようになった。私の叔父がそのアパレルメーカーの服飾デザイナーなのだが、高身長の私が身内にいてちょうど良かったのだと思う。プロのモデルを雇うよりも安く済む。
叔父のアパレルメーカーのモデルとして何度か雑誌に掲載されると、他のアパレルメーカーからも声が掛かるようになった。大学ではちょっとした有名人だ。
小さい頃から男子よりも高い身長がコンプレックスだったから、モデルとしてチヤホヤされたのは自信につながったと思う。
バスケットボールは大好きだ。プレーしていると楽しいし、みんな身長が高いから身長をコンプレックスに感じる必要がない。
でも、身長が高すぎると男の人からは嫌煙される。ジャービス王国の男性の平均身長と比べると私の身長は10cmくらい高い。
いや、15cmかも知れない。まあそれはどちらでもいいことだ。
顔立ちも悪くないはずだ。モデルとして雑誌に掲載されるくらいだから容姿は悪くない。
でも、あまりモテない。理由は男性よりもはるかに高い身長のせいだ。
身長のコンプレックスを克服したと思いきや、なかなか人生は順調に進まない。
大学のバスケットボール・チームに所属していたら、男子バスケットボールの選手と知り合う機会が多いと思う人もいるだろう。
でも、はっきり言おう。その考えは間違いだ!
なぜなら、高身長の男性は高身長の女性以外からもモテるからだ。
特に男子スポーツ選手は女性ファンが多い。大量の女性ファンを相手にして戦うのは至難の業だ。
身長が低い女性、身長が普通の女性、身長が高い女性、つまり全てのジャービス女性が、高身長の男性を狙っている私のライバルとなるのだ。
※あくまでロイの感想です。
ちなみに、暇な時に調べてみた。
『ジャービス王国内で私より身長の高い男性は何パーセントいるか?』
みなさんは分かるだろうか?
正解は3%だ。
もう一度言おう。
たったの3%だ。
身長が低い女性、身長が普通の女性は、恋愛対象がジャービス王国内の100%の男性だ。
私の場合はジャービス王国内に3%しかいない。
なのに、身長が低い女性、身長が普通の女性もライバルだ。
身長を基準にするのは間違っているかもしれない。
だが、私は3%の男性を100%の女性と奪い合うという、熾烈なレースに勝たないといけないのだ。
不公平だと思わないか?
※あくまでロイの感想です。
不満を言いたいところだが、この話を続けると長くなるからこの辺りで止めておこう。
ここまでの話を総括しよう。
身長の高い私は、そのうち高身長の王子様が私の前に現れると思っていたのだ。
***
大学を卒業した私は、自動車メーカーの実業団のバスケットボール・チームに入った。
ジャービス王国にはバスケットボールのプロリーグがない。だから、大学卒業後もバスケットボールを続けたい人は実業団のチームに所属する。
完全なプロ選手ではないから、自動車メーカーの仕事もこなしながらバスケットボールをした。
大学時代にモデルとして活動していたから、自動車メーカーでは広報部に配属された。
イベント運営をサポートしたり、会場で自社製品を説明したりするのが私の広報部での仕事だった。
社内での評判は良かったと思う。私の企画はどれも好評だったし、それなりに実績を出した。それに実績に応じて出世もした。
転機はバスケットボール選手を辞めるタイミングだった。
私はバスケット選手を辞めた時に自動車メーカーを退社した。
その頃には社内の広報イベントを数多く手掛けていたし、役職も主任になっていた。
バスケットボール選手でなくなっても、会社を辞める必要はなかった。
ただ、私の中では、選手を辞めた区切りを、退社という形で付けたかった。
それに、この会社に高身長の王子がいなかったのも理由の一つだ。
ちなみに、男子バスケットボールの選手は、みんな社内結婚した。
男子スポーツ選手はモテるのだ。残っている男子スポーツ選手はそれなりの理由がある。
※あくまでロイの感想です。
ここで争ってはダメだ。
そう私は気付いた。
<続く>
私の名前はロイ。独身だ。総務省の内部調査部で働いている。
借金を返し終わったので、そろそろ転職するか迷っている。迷う理由は幾つかある。
ちなみに、前職はジャービス王国の第13穀物倉庫だ。購買部で課長代理として勤務していた。
その前は、バスケットボールの選手として、自動車メーカーに所属していた。
ここでは私の少し話をしようと思う。少しと言いながら、長いかもしれないけど。
***
私は小さいころからスポーツが得意だった。
高校生のときバスケットボールの全国大会で準優勝して、大学へはスポーツ推薦でバスケットボールの強豪校に進学した。
勉強はそこまで得意じゃなかったから、大学ではバスケットボール中心の生活を送っていた。それとは別に、叔父から頼まれてアルバイトでアパレルメーカーのモデルをするようになった。私の叔父がそのアパレルメーカーの服飾デザイナーなのだが、高身長の私が身内にいてちょうど良かったのだと思う。プロのモデルを雇うよりも安く済む。
叔父のアパレルメーカーのモデルとして何度か雑誌に掲載されると、他のアパレルメーカーからも声が掛かるようになった。大学ではちょっとした有名人だ。
小さい頃から男子よりも高い身長がコンプレックスだったから、モデルとしてチヤホヤされたのは自信につながったと思う。
バスケットボールは大好きだ。プレーしていると楽しいし、みんな身長が高いから身長をコンプレックスに感じる必要がない。
でも、身長が高すぎると男の人からは嫌煙される。ジャービス王国の男性の平均身長と比べると私の身長は10cmくらい高い。
いや、15cmかも知れない。まあそれはどちらでもいいことだ。
顔立ちも悪くないはずだ。モデルとして雑誌に掲載されるくらいだから容姿は悪くない。
でも、あまりモテない。理由は男性よりもはるかに高い身長のせいだ。
身長のコンプレックスを克服したと思いきや、なかなか人生は順調に進まない。
大学のバスケットボール・チームに所属していたら、男子バスケットボールの選手と知り合う機会が多いと思う人もいるだろう。
でも、はっきり言おう。その考えは間違いだ!
なぜなら、高身長の男性は高身長の女性以外からもモテるからだ。
特に男子スポーツ選手は女性ファンが多い。大量の女性ファンを相手にして戦うのは至難の業だ。
身長が低い女性、身長が普通の女性、身長が高い女性、つまり全てのジャービス女性が、高身長の男性を狙っている私のライバルとなるのだ。
※あくまでロイの感想です。
ちなみに、暇な時に調べてみた。
『ジャービス王国内で私より身長の高い男性は何パーセントいるか?』
みなさんは分かるだろうか?
正解は3%だ。
もう一度言おう。
たったの3%だ。
身長が低い女性、身長が普通の女性は、恋愛対象がジャービス王国内の100%の男性だ。
私の場合はジャービス王国内に3%しかいない。
なのに、身長が低い女性、身長が普通の女性もライバルだ。
身長を基準にするのは間違っているかもしれない。
だが、私は3%の男性を100%の女性と奪い合うという、熾烈なレースに勝たないといけないのだ。
不公平だと思わないか?
※あくまでロイの感想です。
不満を言いたいところだが、この話を続けると長くなるからこの辺りで止めておこう。
ここまでの話を総括しよう。
身長の高い私は、そのうち高身長の王子様が私の前に現れると思っていたのだ。
***
大学を卒業した私は、自動車メーカーの実業団のバスケットボール・チームに入った。
ジャービス王国にはバスケットボールのプロリーグがない。だから、大学卒業後もバスケットボールを続けたい人は実業団のチームに所属する。
完全なプロ選手ではないから、自動車メーカーの仕事もこなしながらバスケットボールをした。
大学時代にモデルとして活動していたから、自動車メーカーでは広報部に配属された。
イベント運営をサポートしたり、会場で自社製品を説明したりするのが私の広報部での仕事だった。
社内での評判は良かったと思う。私の企画はどれも好評だったし、それなりに実績を出した。それに実績に応じて出世もした。
転機はバスケットボール選手を辞めるタイミングだった。
私はバスケット選手を辞めた時に自動車メーカーを退社した。
その頃には社内の広報イベントを数多く手掛けていたし、役職も主任になっていた。
バスケットボール選手でなくなっても、会社を辞める必要はなかった。
ただ、私の中では、選手を辞めた区切りを、退社という形で付けたかった。
それに、この会社に高身長の王子がいなかったのも理由の一つだ。
ちなみに、男子バスケットボールの選手は、みんな社内結婚した。
男子スポーツ選手はモテるのだ。残っている男子スポーツ選手はそれなりの理由がある。
※あくまでロイの感想です。
ここで争ってはダメだ。
そう私は気付いた。
<続く>