第8話 競売に参加しよう(その3)

文字数 1,734文字

 (8) 競売に参加しよう <続き>

 準備が全て整ったため、俺たちは不動産の競売に参加した。

 ジャービス王国では、それぞれの裁判所が管轄して競売が定期的に実施されている。
 競売が実施されている会場は全国で4カ所あり、それぞれの会場は月1回のペースで開催している。だから、ジャービス王国では毎週どこかで競売が開催されていることになる。

 競売に出てくる不動産物件は、事前に競売物件情報サイトに公開されている。だから、俺たちは入札に参加する前に、入札対象の不動産の情報を把握することができる。
 ただし、敷地の立ち入りなどは認められていないため、机上で入札金額を決めることになる。

 また、Lシリーズ以外の競売にも積極的に参加してほしい、とチャールズから言われている。だから、競売に出てくる他の収益物件についても、俺たちは入札する予定だ。
 俺たちが入札する件数はかなり多くなりそうだから、効率よく競売の入札を行うために、作業を分担することにした。

 まず、競売物件情報サイトから物件情報を入手して、その物件の不動産の調査を行うチームが必要だ。裁判所が公開している情報が正しいとは限らない。
 競売物件が実は占有されているかもしれないし、不動産の実査は競売の手続において非常に重要だ。
 これは、ミゲルとロイが興味を持ったので2人にお願いすることにした。
 国内旅行ができると思っている節があるのだが・・・

 ただし、ミゲルとロイが不動産を現地調査すると言っても、素人の2人だけでは心許ない。
 俺は不動産を素人2人で現地調査するのは難しいと判断し、全国展開している不動産仲介会社のネットワークを利用することにした。
 競売物件は鑑定評価も行われているし、参考価格を改めて評価しなおす必要はない。俺たちとしては、不動産仲介会社が顧客に売れる価格の方が重要だ。
 ミゲルとロイが不動産仲介会社と一緒に競売物件を実査して、その不動産仲介会社から想定販売価格を聞く。
 俺は市場価格を優先して入札するべきだと考え、不動産仲介会社の想定販売価格から15%ディスカウントした金額を競売における入札予定額とすることにした。


 次に、ミゲルとロイから入手した情報をもとに、ルイーズとスミスが競売に参加する物件と入札価格を決める。競売物件が占有されている場合は、他社が入札してくる可能性は低くなる。占有者を追い出すのに手間と時間とお金が掛かるからだ。
 占有物件については競合が少ないから、入札金額を高くする必要はない。
 また、警察が対応しても面倒な占有者がいる場合は、手間と時間を考えると、俺達でも入札を辞退した方が得策だ。

 全国4カ所で行われている競売には、ガブリエルとポールが訪問して入札することになった。
 ガブリエルは今回の不動産案件に入れ込んでいる。個人投資家に感情移入しているから、競売の入札は『どうしても自分がやりたい!』とガブリエルが言い出した。
 ポールはガブリエルが暴走しないための監視役だ。

 競売物件を落札した場合、物件が占有されていなければ不動産仲介会社に連絡して販売を開始する。
 占有されていれば、内務省に連絡して明渡しの手続を依頼することになる。
 このような役割分担で、俺たちは全国の競売に参加した。

 ***

 競売に参加して6カ月が経過した。

 その間に俺たちは競売にかかった100物件を12億JDで取得した。
 取得した収益物件はシングルタイプからファミリータイプまで、様々だ。
 残念ながらLシリーズは1件も混ざっていない。初めはこんなものだろう。

 競落した100物件のうち、80件を約12億JDで売却した。
 利益は2億5,000万JDだ。

 競売に参加して分かったことだが、俺が予想していたよりも競売の参加者が少ない。
 と言うか、ほとんど競売に参加するものがいない・・・

 だから、競売での落札価格は低かった。
 俺たちは競売物件の利益率を15%程度に設定して入札していたのだが、利益率を20%にしてもほぼ100%落札できた。

 このペースでいけば、年間5億JDの利益は確保できそうだ。
 そのうちLシリーズの競売にも遭遇するだろう。

 ― 本来の目的を見失ってはダメだぞ!

 俺はそう自分に言い聞かせた。

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登場人物紹介

ダニエル:ジャービス王国の第4王子。総務大臣。

ルイーズ:総務省 内部調査部 課長代理

ジェームス:ジャービス王国第1王子。軍本部 総司令

チャールズ:ジャービス王国の第2王子。内務大臣。

アンドリュー:ジャービス王国の第3王子。外務大臣。

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