第1話 持ち込み企画(その3)
文字数 1,901文字
(1)持ち込み企画 <続き>
「じゃあ、次の人は?」
俺が言うと、ロイが手を上げた。
「まず、私の話を聞いて下さい」そう言うとロイは話し始めた。
「みんなも知っていると思うけど、私は身長がかなり高い。以前調べてみたけど、私よりも身長が高いジャービス王国の男性は3%しかいない。言ってみれば、私はマイノリティ(少数派)です。非常に弱い立場にあるんです」
ロイはそこまで言うと、メンバーを見渡した。
今のところ〇も×もプレートは挙がらない。
ロイが結論を最初に言わなかったから、参加者はまだ良し悪しが判断できていない。
最初に結論を言うのはプレゼンの鉄則だ。
だが、この会議に関しては、結論を最後まで言わない方がいい。
最初に結論を言ってしまうとミゲルのような結果になりかねない。
ロイはプレートが挙がっていないのを確認してからプレゼンを続けた。
「ジャービス王国の一般男性は、傾向として身長が自分と同じか低い女性を選ぶ傾向があります。例えば、私と同じ身長の男性はジャービス王国に3%しかいないので、私が結婚するためにはその3%に狙いを定めないといけません。でも、聞いて下さい! 私の競争相手は、高身長の女性だけではないのです!」
※あくまでロイの個人的な感想です。
〇×プレートは挙がらない。
結論が見えないからみんなはまだ様子見だ。
「ジャービス王国の普通の身長の女性が、その3%に参入してくるからです。ジャービス王国のほぼ全ての女性が参入してくる脅威をお分かりですか? 私の3%を荒らさないでほしい!」
※あくまでロイの個人的な感想です。
ロイのプレゼンに熱がこもる。
ガブリエルが×のプレートを上げた。
ロイはチラッと見たものの、何事もなかったかのようにプレゼンを続ける。
「同じような悩みを抱えている人はたくさんいます。身長が極端に高い女性、低い女性、肥満体質の女性、瘦せすぎの女性、例を上げればキリがありません。私はこういうマイノリティの女性を救うため、内部調査部で調査を実施して法改正をしたいと思っているのです」とロイは言った。
「政治家になれば?」誰かが言った。
ルイーズが×のプレートを上げたが、ロイは無視してプレゼンを続ける。
「『結婚する男女の身長差を20cm以内とする法律』を施行するはどうでしょうか? この法律によれば、190cmの男性が結婚できる女性の身長は170cm~210cmです」
ミゲルとポールが×のプレートを上げた。
「国家権力を私物化するな!」誰かが言った。
これで過半数が反対となった。
俺は「終了!」と宣言した。
「なぜですか? マイノリティを救うためには、この法律が必要です」とロイは食い下がる。
「金払って結婚相談所に行けば?」誰かが言った。
ロイの心も折れそうだ。
あまりきつく言うとロイの心も折れてしまいそうだ。
だから、俺はロイに優しく理由を説明した。
「ダイバーシティ(多様性)を重視する流れに逆行しないかな? 身長、体重、人種、性別に関係なく結婚する権利を認めよう、というのが時代の流れだ。ロイの言うような法律を施行すると人権問題になりかねない」
「じゃあ、マイノリティは保護しないということですか?」ロイは俺の目を見て言った。
「そういう訳じゃないけど・・・」と俺はロイの目を見て言った。
俺はそう言ったものの、その先の返答に困った。
俺が考えを整理している間、ロイは俺の目をずっと見ている。
目を逸らすのはどうかと思い、俺もロイの目を見つめる。
― 気まずい・・・
気まずい空気が流れる。
***
そんな中、ホセが「大声を出して、どうかしましたか?」と言って部屋に入ってきた。
― ホセ、ナイスだ!
実にいいタイミングで来てくれた。
ルイーズが「内部調査部の次の案件を決める会議をしていたのよ」と今回の案件持ち込み会議をホセに説明をした。
「へー、持ち込み企画ですか。面白そうですね」とホセは言った。
「面白いかと思ったんだけど、険悪な雰囲気になっちゃって・・・」と俺は説明した。
「難しいんですね」
「そう言えば、ホセのところには最近どういう相談がくるの?」と俺はホセに聞いた。
「最近多い相談は、会社の乗っ取りです。割安に放置されている上場会社の株式を買い占めて、上場廃止後に会社の資産を売却して荒稼ぎしているらしいのです。こういう相談は、案件になりますか?」
全員が〇のプレートを上げた。
これ以上案件持ち込み会議をしても生産的な話し合いにはなりそうにない。
俺は『今回はこの案件しかない』と思った。
こうして、内部調査部の調査案件は『会社の乗っ取りを阻止しろ!』に決定した。
「じゃあ、次の人は?」
俺が言うと、ロイが手を上げた。
「まず、私の話を聞いて下さい」そう言うとロイは話し始めた。
「みんなも知っていると思うけど、私は身長がかなり高い。以前調べてみたけど、私よりも身長が高いジャービス王国の男性は3%しかいない。言ってみれば、私はマイノリティ(少数派)です。非常に弱い立場にあるんです」
ロイはそこまで言うと、メンバーを見渡した。
今のところ〇も×もプレートは挙がらない。
ロイが結論を最初に言わなかったから、参加者はまだ良し悪しが判断できていない。
最初に結論を言うのはプレゼンの鉄則だ。
だが、この会議に関しては、結論を最後まで言わない方がいい。
最初に結論を言ってしまうとミゲルのような結果になりかねない。
ロイはプレートが挙がっていないのを確認してからプレゼンを続けた。
「ジャービス王国の一般男性は、傾向として身長が自分と同じか低い女性を選ぶ傾向があります。例えば、私と同じ身長の男性はジャービス王国に3%しかいないので、私が結婚するためにはその3%に狙いを定めないといけません。でも、聞いて下さい! 私の競争相手は、高身長の女性だけではないのです!」
※あくまでロイの個人的な感想です。
〇×プレートは挙がらない。
結論が見えないからみんなはまだ様子見だ。
「ジャービス王国の普通の身長の女性が、その3%に参入してくるからです。ジャービス王国のほぼ全ての女性が参入してくる脅威をお分かりですか? 私の3%を荒らさないでほしい!」
※あくまでロイの個人的な感想です。
ロイのプレゼンに熱がこもる。
ガブリエルが×のプレートを上げた。
ロイはチラッと見たものの、何事もなかったかのようにプレゼンを続ける。
「同じような悩みを抱えている人はたくさんいます。身長が極端に高い女性、低い女性、肥満体質の女性、瘦せすぎの女性、例を上げればキリがありません。私はこういうマイノリティの女性を救うため、内部調査部で調査を実施して法改正をしたいと思っているのです」とロイは言った。
「政治家になれば?」誰かが言った。
ルイーズが×のプレートを上げたが、ロイは無視してプレゼンを続ける。
「『結婚する男女の身長差を20cm以内とする法律』を施行するはどうでしょうか? この法律によれば、190cmの男性が結婚できる女性の身長は170cm~210cmです」
ミゲルとポールが×のプレートを上げた。
「国家権力を私物化するな!」誰かが言った。
これで過半数が反対となった。
俺は「終了!」と宣言した。
「なぜですか? マイノリティを救うためには、この法律が必要です」とロイは食い下がる。
「金払って結婚相談所に行けば?」誰かが言った。
ロイの心も折れそうだ。
あまりきつく言うとロイの心も折れてしまいそうだ。
だから、俺はロイに優しく理由を説明した。
「ダイバーシティ(多様性)を重視する流れに逆行しないかな? 身長、体重、人種、性別に関係なく結婚する権利を認めよう、というのが時代の流れだ。ロイの言うような法律を施行すると人権問題になりかねない」
「じゃあ、マイノリティは保護しないということですか?」ロイは俺の目を見て言った。
「そういう訳じゃないけど・・・」と俺はロイの目を見て言った。
俺はそう言ったものの、その先の返答に困った。
俺が考えを整理している間、ロイは俺の目をずっと見ている。
目を逸らすのはどうかと思い、俺もロイの目を見つめる。
― 気まずい・・・
気まずい空気が流れる。
***
そんな中、ホセが「大声を出して、どうかしましたか?」と言って部屋に入ってきた。
― ホセ、ナイスだ!
実にいいタイミングで来てくれた。
ルイーズが「内部調査部の次の案件を決める会議をしていたのよ」と今回の案件持ち込み会議をホセに説明をした。
「へー、持ち込み企画ですか。面白そうですね」とホセは言った。
「面白いかと思ったんだけど、険悪な雰囲気になっちゃって・・・」と俺は説明した。
「難しいんですね」
「そう言えば、ホセのところには最近どういう相談がくるの?」と俺はホセに聞いた。
「最近多い相談は、会社の乗っ取りです。割安に放置されている上場会社の株式を買い占めて、上場廃止後に会社の資産を売却して荒稼ぎしているらしいのです。こういう相談は、案件になりますか?」
全員が〇のプレートを上げた。
これ以上案件持ち込み会議をしても生産的な話し合いにはなりそうにない。
俺は『今回はこの案件しかない』と思った。
こうして、内部調査部の調査案件は『会社の乗っ取りを阻止しろ!』に決定した。