<閑話>ミゲルの解説:第9回活動報告

文字数 1,608文字

※ここでは、本章で登場した用語についての解説をしています。本文の内容には関係が無いため、必要がない人は読み飛ばして、次に進んでください。


 こんにちは、ミゲルです。今回はジョーダンの逮捕に協力して、ネットオークションでスニーカーを出品しました。コレクター魂を逆手にとった、卑怯なやり口とも言えますが、警察の捜査とはそういうものなのでしょう。

 さて、今回(第9回活動報告)ではSDGsやESGがテーマになっていました。ニュース、雑誌、新聞でよく見かけるワードですが、これらは上場会社の市場株価に重大な影響を与えます。

 一般論として、株式価値はその時のトレンドに左右されます。つまり、流行りに乗っかっていく方が株式価値にはプラスです。例えば、AI(人工知能)が流行っている時は、AI関連の会社であることをアピールし、投資家にそうだ(この会社はAI関連の会社だ!)と思わせることに成功すると、会社の株式価値は増加します。

 ただ、第9回活動報告で登場したESGは少し違います。ESGはAIのように株式価値にプラスの影響を与えるトレンドではなく、株式価値にマイナスの影響を与えます。

 ESG投資の金額が巨大であることは本文で紹介しましたが、上場企業が最も恐れているのはダイベストメント(Divestment:投資している資金を引き揚げること)です。
 規模の大きくない上場企業の場合は、ESG投資ファンドの投資対象にならないため、それほど気にする必要はありません。大型のファンドは時価総額の大きい上場企業にしか投資できないからです。
 しかし、時価総額の大きい上場企業はESG投資ファンドの投資対象のため、投資資金を引き揚げられてしまうと株式価値が大きく棄損します。

 ESG投資の規模が全世界の3分の1だとしたら、ESGスコアが悪い上場会社は流通株式(大株主及び役員等の所有する株式を除いた、株式市場で売買される株式のこと)の3分の1が売られます。そうなると、途方もない株価の下落を引き起こします。連日ストップ安になるでしょう。

 繰り返しになりますが、上場会社の市場株価は様々な要因(ファクター)によって影響を受けます。例えば、会社の業績予想、不正の発覚、M&A、配当金の増額(減額)などです。
 ESGスコアは会社の業績とはあまり関係のないファクターではあるものの、市場株価に与える影響は甚大です。似たようなものにインデックス(株価指数)があります。

 インデックスについては、日経平均株価(日経225)をイメージしてもらえればいいでしょう。日経225は日本の上場企業のうち225銘柄から構成されており、日経225連動投資信託はその構成銘柄を保有しなければいけません。
 つまり、日経225構成銘柄に選定されれば、多額の買い注文が入って市場株価が上がります。逆に、日経225構成銘柄から除外されれば、多額の売り注文によって市場株価が下がります。

 株価形成ファクターとその影響を比較したのが下図(図表9-13)です。業績変動や配当変動は市場株価にプラスにもマイナスにも影響します。インデックスは採用された時点はプラスに影響、除外された時点はマイナスに影響します。
 それに対して、ESGは基本的に株価にマイナス方向にしか影響しません。その意味では、ダイベストメントしか起こらないという特殊な株価形成ファクターと言えるでしょう。


【図表9-13:株価形成ファクターとその影響】

 



 第9回活動報告を通して、上場企業がなぜESGに着目するのかが分かったのではないでしょうか。

 私からの説明はこれで終わりです。
 もっと詳しく知りたい人は、ネットで検索するか、この本を参考にして下さい。

金融マンのためのエクイティ・ファイナンス講座(第2版)
https://www.amazon.co.jp/dp/450244331X/

 以上、ミゲルでした。

<終わり>
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登場人物紹介

ダニエル:ジャービス王国の第4王子。総務大臣。

ルイーズ:総務省 内部調査部 課長代理

ジェームス:ジャービス王国第1王子。軍本部 総司令

チャールズ:ジャービス王国の第2王子。内務大臣。

アンドリュー:ジャービス王国の第3王子。外務大臣。

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