第6話 XFTの破産(その3)
文字数 1,497文字
(6) XFTの破産 <続き>
「それで、カルタゴ証券が破産した後、他のメンバーを誘ってジャービット・エクスチェンジを設立したのですね」
「うーん。それはちょっと違いますね。ホセは他のメンバーに担がれて、会社を立ち上げたんです」
「他のメンバーを誘ったわけではなく?」
「ええ。ホセはカルタゴ証券の社員の中では最年長でしたし、他のメンバーからも信頼されていました」
「だからホセに社長を依頼したんですね」
「そうですね。私はホセの退職時から連絡を取り合っていましたから、ホセの当時の状況を知っています。ホセはリタイアするつもりでカルタゴ証券を退職したんです」
「リタイアするつもりだったのに、ジャービット・エクスチェンジの社長に就任してしまった・・・」
「そうです」
「ところで、ジョセフもジャービット・エクスチェンジに誘われたと言っていましたね? なぜ断ったのですか?」と俺はジョセフに聞いた。
「それはジャービット・エクスチェンジの経営方針が理由です。私自身が魅力を感じなかったからですね」
「魅力ですか?」
「ホセは社長を就任するにあたって、営業ノルマやインセンティブを廃止することを条件にしました。カルタゴ証券で懲りたのでしょう。詐欺と分かっていても、会社の利益を優先して顧客に販売する会社にしたくなかったのだと思います」
「営業ノルマが無いのは、会社として悪いことではないような気がしますけど・・・」
「私は新卒でカルタゴ証券に入社してから、ずっと営業畑で生きてきました。営業しかしていない私としては、インセンティブがないとやりがいを感じられないのです」
「何となく分かる気がします。人それぞれ違いますね」
「まあ、そうですね」
「ジャービット・エクスチェンジは営業ノルマもインセンティブもない。会社の方針として『業績にはこだわらない』ということでしょうか?」と俺はジョセフに聞いた。
「会社が存続するためには、最低限の収益は確保しないといけません。ただ、『社員に給与を払えるくらいの収益があればいい』とホセは考えているのだと思います」
「給与が払えるくらいの収益。利益はゼロですか?」
「極論すればそうですね。私は、やるからには利益を追求しないと意味がないと思っています。でも、ホセはそう思っていないようです。ホセの考えるジャービット・エクスチェンジの存続意義は、カルタゴ証券の退職者を定年まで面倒見ることです」
「定年まで面倒を見るですか・・・。イメージしていたのとは、印象が違いますね」
「そうだと思います。肉食系証券会社出身者が作った会社が実は草食系だったなんて、誰も想像しません。内部から不満が出て、利益重視の経営方針に転換するんじゃないかと思っていました。でも今のところ、そういう動きはないようです」
この話からすると、ジャービット・エクスチェンジには利益を優先させるインセンティブがなさそうだ。
顧客の預り資産の使い込みとか、他に問題がないかを念のために聞いてみよう、と俺は考えた。
「ちょっと変なことを聞きますが、破産したXFTは顧客の預り資産を使い込んでいました。ジャービット・エクスチェンジは、そういう可能性はありますか?」
「いやー、どうでしょう。ホセは、使い込みするようなタイプでもないので、それは無いと思います。ジャービット・コインの売買でそれなりに利益が出ているようでしたし、ジャービット・コインで調達した資金の運用は順調と聞いています」
やっぱり何も出てこなさそうだ。
これ以上ジョセフから聞いても、悪い情報を得られそうにない。
あー、どうしよう・・・
特に成果もなく、俺とガブリエルは総務省に戻った。
「それで、カルタゴ証券が破産した後、他のメンバーを誘ってジャービット・エクスチェンジを設立したのですね」
「うーん。それはちょっと違いますね。ホセは他のメンバーに担がれて、会社を立ち上げたんです」
「他のメンバーを誘ったわけではなく?」
「ええ。ホセはカルタゴ証券の社員の中では最年長でしたし、他のメンバーからも信頼されていました」
「だからホセに社長を依頼したんですね」
「そうですね。私はホセの退職時から連絡を取り合っていましたから、ホセの当時の状況を知っています。ホセはリタイアするつもりでカルタゴ証券を退職したんです」
「リタイアするつもりだったのに、ジャービット・エクスチェンジの社長に就任してしまった・・・」
「そうです」
「ところで、ジョセフもジャービット・エクスチェンジに誘われたと言っていましたね? なぜ断ったのですか?」と俺はジョセフに聞いた。
「それはジャービット・エクスチェンジの経営方針が理由です。私自身が魅力を感じなかったからですね」
「魅力ですか?」
「ホセは社長を就任するにあたって、営業ノルマやインセンティブを廃止することを条件にしました。カルタゴ証券で懲りたのでしょう。詐欺と分かっていても、会社の利益を優先して顧客に販売する会社にしたくなかったのだと思います」
「営業ノルマが無いのは、会社として悪いことではないような気がしますけど・・・」
「私は新卒でカルタゴ証券に入社してから、ずっと営業畑で生きてきました。営業しかしていない私としては、インセンティブがないとやりがいを感じられないのです」
「何となく分かる気がします。人それぞれ違いますね」
「まあ、そうですね」
「ジャービット・エクスチェンジは営業ノルマもインセンティブもない。会社の方針として『業績にはこだわらない』ということでしょうか?」と俺はジョセフに聞いた。
「会社が存続するためには、最低限の収益は確保しないといけません。ただ、『社員に給与を払えるくらいの収益があればいい』とホセは考えているのだと思います」
「給与が払えるくらいの収益。利益はゼロですか?」
「極論すればそうですね。私は、やるからには利益を追求しないと意味がないと思っています。でも、ホセはそう思っていないようです。ホセの考えるジャービット・エクスチェンジの存続意義は、カルタゴ証券の退職者を定年まで面倒見ることです」
「定年まで面倒を見るですか・・・。イメージしていたのとは、印象が違いますね」
「そうだと思います。肉食系証券会社出身者が作った会社が実は草食系だったなんて、誰も想像しません。内部から不満が出て、利益重視の経営方針に転換するんじゃないかと思っていました。でも今のところ、そういう動きはないようです」
この話からすると、ジャービット・エクスチェンジには利益を優先させるインセンティブがなさそうだ。
顧客の預り資産の使い込みとか、他に問題がないかを念のために聞いてみよう、と俺は考えた。
「ちょっと変なことを聞きますが、破産したXFTは顧客の預り資産を使い込んでいました。ジャービット・エクスチェンジは、そういう可能性はありますか?」
「いやー、どうでしょう。ホセは、使い込みするようなタイプでもないので、それは無いと思います。ジャービット・コインの売買でそれなりに利益が出ているようでしたし、ジャービット・コインで調達した資金の運用は順調と聞いています」
やっぱり何も出てこなさそうだ。
これ以上ジョセフから聞いても、悪い情報を得られそうにない。
あー、どうしよう・・・
特に成果もなく、俺とガブリエルは総務省に戻った。