第10話 金融危機は回避できたが・・・

文字数 940文字

 (10) 金融危機は回避できたが・・・

 劣後社債の買取りがスタートして約1年が経過した。
 i3の劣後社債の買取りによって、社債保有者のパニック売りは徐々に収まった。
 社債保有者には個別事情があるためIFAへの売却はゼロにはならない。でも、一時期に比べると買取り件数は少なくなってきていると思う。

 また、i3が劣後社債を買取ったことによって、止まっていた利払いも再開した。
 そして、社債利払いの復活によって新規ファンドが毎月組成されるようになった。

 ファンドの規模は以前よりも大きくなった。
 前月末時点で、普通社債残高が約5,000億JD、劣後社債残高が約2,000億JDまで膨らんでいる。俺たちの買取開始前の2倍の規模だ。

 ※JD(ジャービス・ドル)はジャービス王国の法定通貨です。1JD=1円としています。

 ファンドの規模が拡大した理由は、i3が劣後社債を額面の70%で買取ることを、IFAが大々的に広めたためだ。
 個人投資家は、劣後社債が政府の70%保証と勘違いしている。

 この前、IFAの販売パンフレットを見たら、『70%政府保証付き』と書いてあった。
 さすがに嘘は良くないからIFAに注意しておこうと思う。

 フォーレンダム証券やIFAは順調に劣後社債販売を拡大した。フォーレンダム証券は昨年度、過去最高益を計上した。
 トルネアセットマネジメントも普通社債の発行額が増えた。
 俺たちが買取をしたことで、フォーレンダム証券やトルネアセットマネジメントから感謝されている。

 i3が買取った劣後社債の残高は取得価額100億JD(額面は約150億JD)をキープしている。臨時国債を発行して資金調達したため、運用し続けないといけないからだ。

 最近は劣後社債を手放す個人投資家が減ってきたから、100億JDを運用し続けるために、運用会社の買取対象までi3に回してもらっている。


 犯人はいなかったし、俺の推理は当たらなかった。
 でも、事件は解決した。

 今回は金融市場の混乱を回避したから勝ちとしよう。

 これで勝率は2勝0敗1分だ。

 次回も頑張ろう。

 それにしても、今回の件で俺はコツをつかんだようだ。

 俺のような凡人が名探偵と呼ばれる日も近いかもしれない。
 毛利小五郎先生のように・・・
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登場人物紹介

ダニエル:ジャービス王国の第4王子。総務大臣。

ルイーズ:総務省 内部調査部 課長代理

ジェームス:ジャービス王国第1王子。軍本部 総司令

チャールズ:ジャービス王国の第2王子。内務大臣。

アンドリュー:ジャービス王国の第3王子。外務大臣。

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