第2話 内部告発ホットライン
文字数 2,417文字
(2)内部告発ホットライン
ネーミング会議で決定した内部告発ホットラインは翌日から運用されることになった。
俺の仕事だけが増えていく気がする・・・。
運用開始にあたって、総務省が内部告発の方法をアナウンスすることになった。
内部告発ホットラインは急に決まったことだから、準備する時間がない。このため、政府のシステムではなく、広く国民に使われている民間のアプリを利用することにした。
内部告発の方法は簡単だ。国民が使っているアプリから、内部告発ホットラインを友達登録してメッセージを送るだけだ。
内部告発ホットラインをジャービス王国内に広めるために『採用されたら10万JD貰えるキャンペーン』を始めた。そうしたら、メッセージが殺到した。
※JD(ジャービス・ドル)はジャービス王国の通貨です。1JD=1円と思ってください。
内部告発ホットラインのアカウントは、昨日の夜中に俺が作った。今現在は準備不足でアプリからメッセージが自動的にダウンロードされない。このため、いま総務省では、人海戦術で送付されたメッセージをコピー&ペーストしている。
総務省の職員のためにも、なるべく早くメッセージを自動ダウンロードできるようにしなければいけない。そのうち、「ピロリン」という音を聞いただけで、おかしくなる職員が出てしまいそうだ。
ちなみに、内部調査部が忙しくなってきたので、逮捕後に解雇された第13穀物倉庫の5人(ミゲル、スミス、ガブリエル、ロイ、ポール)をアルバイトとして雇った。
ルイーズの復活の呪文『よろこんで!』が原因なのだが。
内部調査部は人手が足りないのに加えて、不正の手口に詳しいメンバーは必要だ。
彼ら5人もお金が必要だから、俺のオファーを断る理由はない。
いつの間にか、探偵助手が6人になった。探偵事務所としてはそれなりの規模だろう。
コロンボ、金田一耕助、コナン君には助手がいない。シャーロック・ホームズの助手はワトソン君1人だ。
助手の数に関して言えば、コロンボ、金田一耕助、コナン君、シャーロック・ホームズよりも俺は上の領域に達したようだ。
話を戻すと、内部調査部では、総務省の職員がデータ化したメッセージの中から、イタズラや偽情報を除いて、優先順位が高いものから検討していくことになる。
国民から送られてきた内部告発について、どの件から取り掛かるかを決める会議が行われた。まず、内部調査部長の俺が方針と選定基準を伝える。
「まず、内部調査部が扱う案件は、金銭的に算定できるものとします。これは、損害額が計算できない場合は、有罪にならない可能性があるためです。また、民間企業よりも公的機関への調査を優先して下さい。役人の不正を取り締まる方が、国民受けがいいからです。ここまでで、質問がある人はいますか?」と俺は尋ねた。
「経済的な損害額が分からなくても、殺人は優先した方がよくない?」とルイーズが言った。
「もちろん、殺人は対象に含めます。ただ、被害者が富裕層又は公的機関の高官の場合は、優先順位を下げます。犯人を見つけても国民の支持率向上につながりません。なので、殺人の場合も、政府高官に貧困層が殺害されたような事例が優先します。とはいうものの、殺人の場合は警察が対応するので内部調査部は関係ないでしょう」と俺は伝えた。
「目的は国民の支持率向上。コンセプトは分かった」ルイーズは言った。
「こちらにメリットがないと、こんな面倒なことをやる意味がないでしょ。『弱気を助け、強気を挫く』が内部調査部の最優先事項です」と俺はメンバーにミッションを伝えた。
「あの、いいでしょうか?」とスミスが遠慮がちに発言した。
「もちろん。何かな?」と俺はスミスに聞いた。
「実際にこういう告発があるかは別として、容疑者がかなり上のポジション、例えば王族である場合、訴追してもいいのでしょうか?」
「全く問題ありません。最優先で調査しましょう。知っていると思うけど、ジャービス王国では第1王子から第3王子の派閥が後継者争いをしています。私は4番目なので競争に不参加です。誰が王位についても、私には関係ありません。むしろ、何か問題が発生して揉めてくれた方が、面白いくらいです」と俺は言った。
「はあ」
スミスはどう返答したらいいか、困っているようだ。まだ、俺の扱いに慣れていないのだろう。
「他に質問がある人は?」と俺は内部調査部のメンバーに聞いた。
「机と椅子が4つしかありません。どうすればいいですか?」とポールが質問した。
「いい質問だ。どうしようかな。総務省にはスペースはあるけど、備品が足りてないんだ。この4つの机と椅子も内務省から貰ってきた。外務省が余っていると思うから、いくつか貰ってきてほしい。アンドリューにはこちらから伝えておくから大丈夫だ」と俺はポールに言った。
「私もいいですか?」とロイが言った。
「もちろん」と俺は答えた。
「小麦を横領した主犯は私です。他の4人はともかく、私まで内部調査部に雇ったのは何か理由があるのですか?」とロイが俺に質問した。
そう思うのは当然だろう。ただ、俺には明確な理由はない。
「理由か・・。正直に言うと、特に理由はないんだよね。人員を増やしたかったのだけど、4人に声を掛けて1人に声を掛けなかったら、気まずいでしょ。4人でも5人でも良かったから、5人にした。ただそれだけ」
「それだけですか?」
「そうだね。5人全員逮捕されたから、主犯かどうかはこの際関係ないんじゃないかな。例えば、60%と70%ってほぼ同じでしょ。誤差みたいなものだよ」
「誤差なのか・・・」とロイは言って黙ってしまった。
俺にはロイが納得したかどうかは分からないが、そんなこと気にしても仕方ないだろう。
こうして、内部調査部での優先事項や進め方が共有された。全て俺の主観だ。
メンバーがどう思ったかは分からないが、こういう捜査方針は主観でいいのだ。
ネーミング会議で決定した内部告発ホットラインは翌日から運用されることになった。
俺の仕事だけが増えていく気がする・・・。
運用開始にあたって、総務省が内部告発の方法をアナウンスすることになった。
内部告発ホットラインは急に決まったことだから、準備する時間がない。このため、政府のシステムではなく、広く国民に使われている民間のアプリを利用することにした。
内部告発の方法は簡単だ。国民が使っているアプリから、内部告発ホットラインを友達登録してメッセージを送るだけだ。
内部告発ホットラインをジャービス王国内に広めるために『採用されたら10万JD貰えるキャンペーン』を始めた。そうしたら、メッセージが殺到した。
※JD(ジャービス・ドル)はジャービス王国の通貨です。1JD=1円と思ってください。
内部告発ホットラインのアカウントは、昨日の夜中に俺が作った。今現在は準備不足でアプリからメッセージが自動的にダウンロードされない。このため、いま総務省では、人海戦術で送付されたメッセージをコピー&ペーストしている。
総務省の職員のためにも、なるべく早くメッセージを自動ダウンロードできるようにしなければいけない。そのうち、「ピロリン」という音を聞いただけで、おかしくなる職員が出てしまいそうだ。
ちなみに、内部調査部が忙しくなってきたので、逮捕後に解雇された第13穀物倉庫の5人(ミゲル、スミス、ガブリエル、ロイ、ポール)をアルバイトとして雇った。
ルイーズの復活の呪文『よろこんで!』が原因なのだが。
内部調査部は人手が足りないのに加えて、不正の手口に詳しいメンバーは必要だ。
彼ら5人もお金が必要だから、俺のオファーを断る理由はない。
いつの間にか、探偵助手が6人になった。探偵事務所としてはそれなりの規模だろう。
コロンボ、金田一耕助、コナン君には助手がいない。シャーロック・ホームズの助手はワトソン君1人だ。
助手の数に関して言えば、コロンボ、金田一耕助、コナン君、シャーロック・ホームズよりも俺は上の領域に達したようだ。
話を戻すと、内部調査部では、総務省の職員がデータ化したメッセージの中から、イタズラや偽情報を除いて、優先順位が高いものから検討していくことになる。
国民から送られてきた内部告発について、どの件から取り掛かるかを決める会議が行われた。まず、内部調査部長の俺が方針と選定基準を伝える。
「まず、内部調査部が扱う案件は、金銭的に算定できるものとします。これは、損害額が計算できない場合は、有罪にならない可能性があるためです。また、民間企業よりも公的機関への調査を優先して下さい。役人の不正を取り締まる方が、国民受けがいいからです。ここまでで、質問がある人はいますか?」と俺は尋ねた。
「経済的な損害額が分からなくても、殺人は優先した方がよくない?」とルイーズが言った。
「もちろん、殺人は対象に含めます。ただ、被害者が富裕層又は公的機関の高官の場合は、優先順位を下げます。犯人を見つけても国民の支持率向上につながりません。なので、殺人の場合も、政府高官に貧困層が殺害されたような事例が優先します。とはいうものの、殺人の場合は警察が対応するので内部調査部は関係ないでしょう」と俺は伝えた。
「目的は国民の支持率向上。コンセプトは分かった」ルイーズは言った。
「こちらにメリットがないと、こんな面倒なことをやる意味がないでしょ。『弱気を助け、強気を挫く』が内部調査部の最優先事項です」と俺はメンバーにミッションを伝えた。
「あの、いいでしょうか?」とスミスが遠慮がちに発言した。
「もちろん。何かな?」と俺はスミスに聞いた。
「実際にこういう告発があるかは別として、容疑者がかなり上のポジション、例えば王族である場合、訴追してもいいのでしょうか?」
「全く問題ありません。最優先で調査しましょう。知っていると思うけど、ジャービス王国では第1王子から第3王子の派閥が後継者争いをしています。私は4番目なので競争に不参加です。誰が王位についても、私には関係ありません。むしろ、何か問題が発生して揉めてくれた方が、面白いくらいです」と俺は言った。
「はあ」
スミスはどう返答したらいいか、困っているようだ。まだ、俺の扱いに慣れていないのだろう。
「他に質問がある人は?」と俺は内部調査部のメンバーに聞いた。
「机と椅子が4つしかありません。どうすればいいですか?」とポールが質問した。
「いい質問だ。どうしようかな。総務省にはスペースはあるけど、備品が足りてないんだ。この4つの机と椅子も内務省から貰ってきた。外務省が余っていると思うから、いくつか貰ってきてほしい。アンドリューにはこちらから伝えておくから大丈夫だ」と俺はポールに言った。
「私もいいですか?」とロイが言った。
「もちろん」と俺は答えた。
「小麦を横領した主犯は私です。他の4人はともかく、私まで内部調査部に雇ったのは何か理由があるのですか?」とロイが俺に質問した。
そう思うのは当然だろう。ただ、俺には明確な理由はない。
「理由か・・。正直に言うと、特に理由はないんだよね。人員を増やしたかったのだけど、4人に声を掛けて1人に声を掛けなかったら、気まずいでしょ。4人でも5人でも良かったから、5人にした。ただそれだけ」
「それだけですか?」
「そうだね。5人全員逮捕されたから、主犯かどうかはこの際関係ないんじゃないかな。例えば、60%と70%ってほぼ同じでしょ。誤差みたいなものだよ」
「誤差なのか・・・」とロイは言って黙ってしまった。
俺にはロイが納得したかどうかは分からないが、そんなこと気にしても仕方ないだろう。
こうして、内部調査部での優先事項や進め方が共有された。全て俺の主観だ。
メンバーがどう思ったかは分からないが、こういう捜査方針は主観でいいのだ。