第2話 内部調査部を立ち上げよう(その1)
文字数 1,733文字
(2)内部調査部を立ち上げよう
内部調査部を立ち上げることになった俺は、とりあえず総務省内で使っていない一室を内部調査部として使うことにした。
総務省の建物には部屋がたくさんあるが、備品の数が足りていない。内部調査部で使う机と椅子がなかったので、仕方なく内務省で廃棄予定だった机と椅子を4個ずつ貰ってきた。デザインがバラバラの机と椅子だから、ゴミ捨て場から拾ってきたみたいになっている。
予算が潤沢にあれば、こういう苦労をせずに済むのだが。
俺が内務省から運んできた机と椅子を並べていると、ルイーズがやってきた。
第13穀物倉庫の調査は俺一人ではできないから、総務省の市場調査部で働いているルイーズにお願いして、内部調査部のメンバーとして手伝ってもらうことにしたのだ。
総務省の人事異動は毎年決まった時期に行われるため、一般職員を内部調査部に異動させにくい。不定期の異動は、不祥事と思っているからだ。
もし、総務省の他の職員を内部調査部に異動させたら、選ばれた職員は、ショックを受けるだろう。
ルイーズは、一般的に見れば、美人と言えるだろう。ただ、性格が変わっている。最初は人が寄ってくるのだが、人間性が分かると人が離れていく。だから、まだ独身だ。
彼氏がいるかどうかは知らない。聞いたらセクハラになるかもしれないから、デリケートな話題はしないように気を付けている。
彼女は王立大学の同級生で、4位で卒業した。ちなみに、俺は3位だった。残念ながら1位と2位の生徒は王国軍と内務省にとられた。就職先ランキングが総務省よりも上だから仕方ない。
とにかく、ルイーズの性格はあれだが、俺はあまり気にならないので、内部調査部に来てもらった。内部調査部の専属ではなく、市場調査部と兼務だ。総務省はそんなに暇ではない。
ルイーズは内部調査部(仮)に入ると、言った。
「この部屋、臭くない?」
まず先に言うことがあるだろう。
机と椅子を内務省から運んで汗だくの俺は、少し機嫌が悪い。
「臭かったら、消臭剤とか買ってきて、置いといてよ」
「それに、机の高さが違うから、ガタガタじゃない。粗大ゴミ置き場から拾ってきたみたい。ひょっとして、椅子も拾ってきた?」
失礼なことを言ってくれる。粗大ゴミ置き場を経由はしていない。
内務省から粗大ゴミ置き場に行く前に、貰ってきた。
「総務省の備品が足りなかったから、内務省からもらってきたんだ。サイズ違いしか余ってなかったから、しばらくはこれで我慢して」
「えー。ホコリ溜まってるから、座るのは嫌だな」
それくらい、拭けばいいじゃないか。
第13穀物倉庫の調査を始める前に、内部調査部を掃除する必要があるようだ。
「ルイーズ。内部調査部の最初の任務だ。君を掃除大臣に任命する」
「小学生みたいなことを言ってないで、さっさと清掃員を呼べばいいじゃない」とルイーズはもっともらしいことを言う。
でも、清掃員は呼べない。契約にこの部屋の掃除は入っていないからだ。
「この部屋は清掃する契約になっていない。しばらくは、自分たちで掃除だね。さっそくだけど、掃除機を総務部から借りてきて」
俺の言い方が気に障ったのだろう。
「私は市場調査部の仕事で忙しいんだから、自分で取りにいけばいいじゃない」とルイーズは言った。
「そんなこと言ったら、俺だって、総務大臣で忙しいんだ」と俺は言い返す。
「掃除大臣が命令する。ダニエル、掃除機を持ってきなさい」
「分かったから、掃除機を取ってくるから、その間に机と椅子を拭いといてよ」
俺は折れた。このまま平行線をたどれば、第13穀物倉庫の調査が進められないからだ。
この辺りが、落としどころだろう。
その後、俺とルイーズは1時間くらい黙々と手を動かし、何とか内部調査部の掃除が終わった。最後に「殺風景だから、絵でも貼ろうか?」と聞いたが却下された。
どうやら俺のセンスを信じていないようだ。
いろいろあったが、これで第13穀物倉庫の調査に取り掛かれる。
俺はルイーズに、国王宛に届いた第13穀物倉庫の件を説明した。
誰かが穀物を盗んで売っているから調査しないといけない。
これが俺たち内部調査部の第1号案件だ!
まだ二人だけど・・・
<続く>
内部調査部を立ち上げることになった俺は、とりあえず総務省内で使っていない一室を内部調査部として使うことにした。
総務省の建物には部屋がたくさんあるが、備品の数が足りていない。内部調査部で使う机と椅子がなかったので、仕方なく内務省で廃棄予定だった机と椅子を4個ずつ貰ってきた。デザインがバラバラの机と椅子だから、ゴミ捨て場から拾ってきたみたいになっている。
予算が潤沢にあれば、こういう苦労をせずに済むのだが。
俺が内務省から運んできた机と椅子を並べていると、ルイーズがやってきた。
第13穀物倉庫の調査は俺一人ではできないから、総務省の市場調査部で働いているルイーズにお願いして、内部調査部のメンバーとして手伝ってもらうことにしたのだ。
総務省の人事異動は毎年決まった時期に行われるため、一般職員を内部調査部に異動させにくい。不定期の異動は、不祥事と思っているからだ。
もし、総務省の他の職員を内部調査部に異動させたら、選ばれた職員は、ショックを受けるだろう。
ルイーズは、一般的に見れば、美人と言えるだろう。ただ、性格が変わっている。最初は人が寄ってくるのだが、人間性が分かると人が離れていく。だから、まだ独身だ。
彼氏がいるかどうかは知らない。聞いたらセクハラになるかもしれないから、デリケートな話題はしないように気を付けている。
彼女は王立大学の同級生で、4位で卒業した。ちなみに、俺は3位だった。残念ながら1位と2位の生徒は王国軍と内務省にとられた。就職先ランキングが総務省よりも上だから仕方ない。
とにかく、ルイーズの性格はあれだが、俺はあまり気にならないので、内部調査部に来てもらった。内部調査部の専属ではなく、市場調査部と兼務だ。総務省はそんなに暇ではない。
ルイーズは内部調査部(仮)に入ると、言った。
「この部屋、臭くない?」
まず先に言うことがあるだろう。
机と椅子を内務省から運んで汗だくの俺は、少し機嫌が悪い。
「臭かったら、消臭剤とか買ってきて、置いといてよ」
「それに、机の高さが違うから、ガタガタじゃない。粗大ゴミ置き場から拾ってきたみたい。ひょっとして、椅子も拾ってきた?」
失礼なことを言ってくれる。粗大ゴミ置き場を経由はしていない。
内務省から粗大ゴミ置き場に行く前に、貰ってきた。
「総務省の備品が足りなかったから、内務省からもらってきたんだ。サイズ違いしか余ってなかったから、しばらくはこれで我慢して」
「えー。ホコリ溜まってるから、座るのは嫌だな」
それくらい、拭けばいいじゃないか。
第13穀物倉庫の調査を始める前に、内部調査部を掃除する必要があるようだ。
「ルイーズ。内部調査部の最初の任務だ。君を掃除大臣に任命する」
「小学生みたいなことを言ってないで、さっさと清掃員を呼べばいいじゃない」とルイーズはもっともらしいことを言う。
でも、清掃員は呼べない。契約にこの部屋の掃除は入っていないからだ。
「この部屋は清掃する契約になっていない。しばらくは、自分たちで掃除だね。さっそくだけど、掃除機を総務部から借りてきて」
俺の言い方が気に障ったのだろう。
「私は市場調査部の仕事で忙しいんだから、自分で取りにいけばいいじゃない」とルイーズは言った。
「そんなこと言ったら、俺だって、総務大臣で忙しいんだ」と俺は言い返す。
「掃除大臣が命令する。ダニエル、掃除機を持ってきなさい」
「分かったから、掃除機を取ってくるから、その間に机と椅子を拭いといてよ」
俺は折れた。このまま平行線をたどれば、第13穀物倉庫の調査が進められないからだ。
この辺りが、落としどころだろう。
その後、俺とルイーズは1時間くらい黙々と手を動かし、何とか内部調査部の掃除が終わった。最後に「殺風景だから、絵でも貼ろうか?」と聞いたが却下された。
どうやら俺のセンスを信じていないようだ。
いろいろあったが、これで第13穀物倉庫の調査に取り掛かれる。
俺はルイーズに、国王宛に届いた第13穀物倉庫の件を説明した。
誰かが穀物を盗んで売っているから調査しないといけない。
これが俺たち内部調査部の第1号案件だ!
まだ二人だけど・・・
<続く>