第8話 IFAに聞いてみよう(その2)

文字数 1,390文字

(8) IFAに聞いてみよう <続き>

 トルネアセットマネジメントから聞いたIFAの3人は、ターニャの知り合いだった。
 ポールが『ひょっとしてターニャの知り合いでは?』と思ってターニャに連絡したのだが、案の定、知り合いだった。

 世間は狭い。知り合いの知り合いは、すごい範囲をカバーしている。
 ひょっとすると、ジャービス王国の大半の人に繋がるのではないか?

 ターニャに連絡を取ってもらってIFAの3人に総務省に来てもらうことにした。
 自宅に押し掛けるのもどうかと思うし、喫茶店でするような話ではない。

 総務省の受付からIFAの3人が到着したと連絡があったので、俺とルイーズとポールは、IFAの3人が待つ会議室に向かった。

 ***

 俺たちが会議室に入るとIFAの3人が座っていた。シモの言ったように、普通のおばさんだった。

 スーパーの買い物帰りのような服装をしている。デパート帰りの服装ではない。
 役所に行くのに、オシャレはしない。
 バッグも普通のトートバッグだ。

 普通の服を着て、普通のカバンを持ったおばさんが、お金持ちかどうかは俺には判断できない。
 同席しているルイーズとポールも同じだろう。

 席に着いた俺は、まず自己紹介と今回の趣旨を説明した。

「はじめまして。総務省のダニエルです。同席しているのは、内部調査部のルイーズとポールです。今日は、トルネアセットマネジメントの劣後社債の件で、お呼びしました」

「はじめまして。私はエマです。この2人は、ミアとソフィアです」とエマは2人を紹介した。

「それで、劣後社債の買取請求によって利払いの遅延が発生していると、総務省に相談がありました。みなさんは、フォーレンダム証券のIFAとして活動していて、かなりの金額の劣後社債の買取請求をトルネアセットマネジメントにしていると聞いています」と俺がここまで話をすると、ルイーズが続いて話した。

「今日あなたたちに来てもらったのは、私たちが調査で入手した情報と、あなたたちから聞く情報を総合的に勘案して、逮捕するかどうかを判断するためです」とルイーズは言った。

「ちょっと、言い過ぎですよ」とポールは言ったが、ルイーズは聞こうとしない。

 それを聞いた3人の表情は穏やかではない。
 俺はルイーズがストレートに言ったことに少し驚いたものの、少しルイーズに任せてみようと思った。

 ルイーズは『総合的に勘案して』と言っていた。焦って逮捕しようとしているわけではなさそうだ、と俺は思ったからだ。

「そんな・・・。私たちは悪いことは何もしていません」とエマは言った。
 少し声が震えているようだ。身に覚えのないことを言われて怒っているようにも見える。

 女性はいつまでも女子の心を持っている。いつまでもチヤホヤされたいのだ。
 若い女はおばさんよりもチヤホヤされるから、だから、おばさんは若い女が嫌いだ。
 自分よりも若い女に言われて、イラっとしたのかもしれない。

「罪になるかどうかは、検察が決めることなので、今は事実確認だけさせて下さい。劣後社債の買取請求をどのように行ってきたかを説明してもらえますか」とルイーズはエマに言った。

 実に公務員らしい事務的な対応だ。
 それにしても、さすがに言い過ぎだろう。

 でも、俺は10秒前にルイーズに任せてみようと思ったところだ。
 もう少し辛抱して聞いてみよう、と俺は考えた。

 <続く>
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登場人物紹介

ダニエル:ジャービス王国の第4王子。総務大臣。

ルイーズ:総務省 内部調査部 課長代理

ジェームス:ジャービス王国第1王子。軍本部 総司令

チャールズ:ジャービス王国の第2王子。内務大臣。

アンドリュー:ジャービス王国の第3王子。外務大臣。

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