第4話 新たな被害者?(その2)
文字数 1,871文字
(4)新たな被害者? <続き>
俺はロイを誘ってターニャとの待ち合わせ場所に行くことにした。スミスはターニャと仲が良くないし、他の男性メンバーを連れて行くのも微妙だ。こういう時はロイと一緒に行くのが無難だと俺は考えた。待ち合わせ場所は、ターニャが指定した高級フルーツパーラーだ。
ここはアフタヌーンティーセットの値段が5,000JD。フルーツジュースが1杯2,000JDくらいだから、ターニャたちが何を注文しても俺は気にしないことにした。
なんなら、『ターニャたちを夜にレストランに連れて行くよりも安上がりだ!』と俺は前向きに考えることにした。
※JD(ジャービス・ドル)はジャービス王国の法定通貨です。1JD=1円と考えて下さい。
俺とロイが店の中に入ると、奥の席でターニャが手を振っている。その隣にいるのはフォーレンダム証券のIFA3人娘。エマ、ミア、ソフィアがターニャと一緒に座っている。
先に来ていた4人はアフタヌーンティーセットを頼んでいる。すでに20,000JDの出費が確定した。現金派の俺の財布の中に入っているのは3万JD。既にかなりヤバい状況だ。
俺がコーヒー(800JD)を頼もうとしたら、隣のロイが「私もアフタヌーンティーセット頼んでいいですか?」と小声で聞いてきた。もちろん、俺は「いいよ」と答えた。
俺がアフタヌーンティーセットを我慢すれば3万JDを超えない・・・
スタッフが注文を聞きにきたから「アフタヌーンティーセット1つとコーヒーで」と言った。
こういう時は、俺もアフタヌーンティーセットを注文すべきなのだろうか?
男友達も女友達もいない俺には、その辺の空気感がさっぱり分からない。
俺は気を取り直して、女性陣に話しかけた。
「いやー、こんなに美女にお会いできるなんて。幸せな日ですね」
俺がお世辞を言ったら、バシバシと俺の腕を叩くおばちゃんたち。まあ、嬉しいのだろう。
「美女だなんて・・・」とソフィアは照れている。女子の振舞いだ。
「私たちが美女だったら部長の隣に座っているロイなんて、絶世の美女よ。絶世の美女!」
そう言われたロイはまんざらでもなさそうだ。
確かにロイは美人だ。
美人なのだが、個人的には恋愛感情よりも変な親近感がある。例えるなら、家族や友人と接している感覚。俺の兄弟のチャールズ(第2王子)と並んで話しているような感じだ。
俺はジャービス王国内ではかなり大きい方だが、ロイは俺とほぼ同じ身長。俺とチャールズは瘦せ型だから、俺とロイはほぼ同じ体系だ。
ちなみに、ジェームス(第1王子)は身長も高いが横幅もあるから、ロイとは全然似ていない。アンドリュー(第3王子)も007に憧れて鍛えているから、こっちも似ていない。
女性に対して失礼かもしれないが、体格が似ているから、ロイと話していると何となくチャールズと話しているような気がしてしまう。
話が逸れてしまったが、俺は気を取り直して本題に入ることにした。
「それで、ミゲルから聞いたんだけど、最近出回っている太陽光発電施設のリース債権を担保にした小口社債の話を聞きたいんだ」と俺は切り出した。
「ええ、例の社債の件ね」
そう言うと、エマが社債の発行要項(図表9-7)をテーブルに出した。
エマが最初に出したのは、ノヴァーラとのリース契約(図表9-8)に基づくリース債権を担保とした社債の資料だった。
【図表9-7:社債の発行要項】
【図表9-8:リース契約の概要】
エマはロベルティとピリアに対するリース債権担保社債の資料も見せてくれたが、基本的に金額が違うだけでその他の条件は同じだった。
ちなみに、社債発行額はノヴァーラ向けが2億5,000万JD、ノベルティ向けが5億JD、ピリア向けが2億5,000万JDだから、社債の発行総額は10億JD。
一方、リース料は3社合計で年間4億JDだ。
社債の発行期間は3年間、金利3%だから、支払利息は3年間で9,000万JD(=1億JD×3%×3年)。社債元本と利息を合わせて3年間で10億9,000万JDの支払が必要になる。
一方、リース料は3年間で12億JD(=4億JD×3年)入ってくるから、社債の元利金支払いは十分に可能だ。
さらに、ジョーダンたちは4年目以降のリース料は全て自分たちの収益にできる。
元手がゼロで、29億1,000万JD(リース料総額40億JD ― 社債元利金10億9,000万JD)入ってくるのだ。
―― 伝説の財務コンサルタント、さすがだなー
俺はジョーダンのスキームを理解した。
<続く>
俺はロイを誘ってターニャとの待ち合わせ場所に行くことにした。スミスはターニャと仲が良くないし、他の男性メンバーを連れて行くのも微妙だ。こういう時はロイと一緒に行くのが無難だと俺は考えた。待ち合わせ場所は、ターニャが指定した高級フルーツパーラーだ。
ここはアフタヌーンティーセットの値段が5,000JD。フルーツジュースが1杯2,000JDくらいだから、ターニャたちが何を注文しても俺は気にしないことにした。
なんなら、『ターニャたちを夜にレストランに連れて行くよりも安上がりだ!』と俺は前向きに考えることにした。
※JD(ジャービス・ドル)はジャービス王国の法定通貨です。1JD=1円と考えて下さい。
俺とロイが店の中に入ると、奥の席でターニャが手を振っている。その隣にいるのはフォーレンダム証券のIFA3人娘。エマ、ミア、ソフィアがターニャと一緒に座っている。
先に来ていた4人はアフタヌーンティーセットを頼んでいる。すでに20,000JDの出費が確定した。現金派の俺の財布の中に入っているのは3万JD。既にかなりヤバい状況だ。
俺がコーヒー(800JD)を頼もうとしたら、隣のロイが「私もアフタヌーンティーセット頼んでいいですか?」と小声で聞いてきた。もちろん、俺は「いいよ」と答えた。
俺がアフタヌーンティーセットを我慢すれば3万JDを超えない・・・
スタッフが注文を聞きにきたから「アフタヌーンティーセット1つとコーヒーで」と言った。
こういう時は、俺もアフタヌーンティーセットを注文すべきなのだろうか?
男友達も女友達もいない俺には、その辺の空気感がさっぱり分からない。
俺は気を取り直して、女性陣に話しかけた。
「いやー、こんなに美女にお会いできるなんて。幸せな日ですね」
俺がお世辞を言ったら、バシバシと俺の腕を叩くおばちゃんたち。まあ、嬉しいのだろう。
「美女だなんて・・・」とソフィアは照れている。女子の振舞いだ。
「私たちが美女だったら部長の隣に座っているロイなんて、絶世の美女よ。絶世の美女!」
そう言われたロイはまんざらでもなさそうだ。
確かにロイは美人だ。
美人なのだが、個人的には恋愛感情よりも変な親近感がある。例えるなら、家族や友人と接している感覚。俺の兄弟のチャールズ(第2王子)と並んで話しているような感じだ。
俺はジャービス王国内ではかなり大きい方だが、ロイは俺とほぼ同じ身長。俺とチャールズは瘦せ型だから、俺とロイはほぼ同じ体系だ。
ちなみに、ジェームス(第1王子)は身長も高いが横幅もあるから、ロイとは全然似ていない。アンドリュー(第3王子)も007に憧れて鍛えているから、こっちも似ていない。
女性に対して失礼かもしれないが、体格が似ているから、ロイと話していると何となくチャールズと話しているような気がしてしまう。
話が逸れてしまったが、俺は気を取り直して本題に入ることにした。
「それで、ミゲルから聞いたんだけど、最近出回っている太陽光発電施設のリース債権を担保にした小口社債の話を聞きたいんだ」と俺は切り出した。
「ええ、例の社債の件ね」
そう言うと、エマが社債の発行要項(図表9-7)をテーブルに出した。
エマが最初に出したのは、ノヴァーラとのリース契約(図表9-8)に基づくリース債権を担保とした社債の資料だった。
【図表9-7:社債の発行要項】
【図表9-8:リース契約の概要】
エマはロベルティとピリアに対するリース債権担保社債の資料も見せてくれたが、基本的に金額が違うだけでその他の条件は同じだった。
ちなみに、社債発行額はノヴァーラ向けが2億5,000万JD、ノベルティ向けが5億JD、ピリア向けが2億5,000万JDだから、社債の発行総額は10億JD。
一方、リース料は3社合計で年間4億JDだ。
社債の発行期間は3年間、金利3%だから、支払利息は3年間で9,000万JD(=1億JD×3%×3年)。社債元本と利息を合わせて3年間で10億9,000万JDの支払が必要になる。
一方、リース料は3年間で12億JD(=4億JD×3年)入ってくるから、社債の元利金支払いは十分に可能だ。
さらに、ジョーダンたちは4年目以降のリース料は全て自分たちの収益にできる。
元手がゼロで、29億1,000万JD(リース料総額40億JD ― 社債元利金10億9,000万JD)入ってくるのだ。
―― 伝説の財務コンサルタント、さすがだなー
俺はジョーダンのスキームを理解した。
<続く>