第5話 伝説の財務コンサルタントの行方
文字数 1,659文字
(5)伝説の財務コンサルタントの行方
俺たちはジョーダンたちの詐欺まがいの手口を調べていたのだが、結局はリース契約の条件が悪いだけということに落ち着いた。
ジョーダンたちの被害に遭ったノヴァーラ、ロベルティ、ピリアの3社は、ジョーダン側と訴訟している。現在のリース契約によれば3社が支払うリース料総額は10年間で40億JDだ。3社は10億JDが10年間のリース料総額として適正価格だとして、ジョーダン側と訴訟している。
※JD(ジャービス・ドル)はジャービス王国の法定通貨です。1JD=1円と考えて下さい。
正確に言うと、ジョーダンたちはリース契約の当事者でないから、裁判には出てこない。リース契約の当事者であるSPC(特別目的会社)の代表者が依頼した弁護士が本件訴訟の対応をしている。
訴訟の開始から6カ月経過したが、太陽光発電施設の適正な時価についての議論が長引いており、訴訟はなかなか終わりそうにない。多分、訴訟が終了するまでに1年以上掛かるのではないかと俺は考えている。
俺たち内部調査部は3社とジョーダンたちの訴訟がどうなるかを観察しているが、3社が訴訟に勝っても負けてもジョーダンたちには直接影響しなさそうだ。
ただ、今回の事件はジョーダンたちが絡んでいたから、マスコミがグレーなSDGsやESGの実態を報道した。そして、マスコミ報道によってESGウォッシングが世間から少しだが注目されるようになったように思う。
ジャービス王国では明確な罰則規定はないものの、何らかの抑止力になってくれるのではないかと、俺は期待している。
即効性がないところが、悩ましいのだが・・・
***
俺が総務省の執務室で雑務をこなしていたら、ミゲルとベテラン警察官のジョルジュが肩を組んで入ってきた。2人は年齢も体形も近いから、古くからの親友のように見えなくはない。
部屋に入ってくるなりミゲルが「部長、ついにやりました!」と大声で言った。
ミゲルとジョルジュはハイタッチしながら、俺の執務室でダンスしている。
―― すごいテンションだな・・・
無視するのもどうかと思ったので「どうしたの?」と俺は2人に聞いた。
すると、ミゲルは「聞きたいですか?」と俺に言った。
「別に・・・」
「聞いてください。ついに、逮捕したんです!」
「逮捕した? 誰を?」
「ジョーダンですよ。ジョーダン」
「ジョーダンは海外にいるよね。冗談?」
「ダジャレじゃありません。本当にジョーダンを逮捕したんです」
「へー。どうやって逮捕したの?」
「ジョーダンはMJのファンだと言いましたよね。だから、私のスニーカーのコレクター・ネットワークを使ったんです」
「レアもののスニーカーを用意したの?」
「そうです。MJに連絡をとって、本人がスニーカーを履いている写真とサインを用意してもらいました。それをネットオークションに出したんです」
「そのスニーカーにジョーダンが食いついたんだ」
「そうです。出品したスニーカーの最低落札価格を1億JDにしていましたから、普通の人は買えません。それに、超高価なスニーカーを配送するのは危険だから、ジャービス王国で受け渡ししたいとジョーダンに提案したんです」
「そうしたら、ジョーダンはジャービス王国にやってきた?」
「まさに、その通りです! ジョーダンが空港でジャービス王国に入国した瞬間、警察が身柄を捕獲しました」
そうミゲルが言ったら、ジョルジュがガッツポーズしている。
「へー、コレクター魂ってすごいな!」
「コレクターだったら、リスクがあっても絶対に来ますよ!」
「それで、ミゲルはどういう捜査協力をしていたの?」
「私がネットオークションの出品者になって、ジョーダンとやり取りしていました」
「すごいなー。お手柄だね!」
「ですよね!」
そういうと、ミゲルはジョルジュともう一度ハイタッチした。
ミゲルとジョルジュは楽しそうだ。もう二人は親友と言ってもいい関係なのだろう。
―― 俺は友達いないんだけどな・・・
まあ、いいか。
ジョーダンも捕まったし・・・
俺たちはジョーダンたちの詐欺まがいの手口を調べていたのだが、結局はリース契約の条件が悪いだけということに落ち着いた。
ジョーダンたちの被害に遭ったノヴァーラ、ロベルティ、ピリアの3社は、ジョーダン側と訴訟している。現在のリース契約によれば3社が支払うリース料総額は10年間で40億JDだ。3社は10億JDが10年間のリース料総額として適正価格だとして、ジョーダン側と訴訟している。
※JD(ジャービス・ドル)はジャービス王国の法定通貨です。1JD=1円と考えて下さい。
正確に言うと、ジョーダンたちはリース契約の当事者でないから、裁判には出てこない。リース契約の当事者であるSPC(特別目的会社)の代表者が依頼した弁護士が本件訴訟の対応をしている。
訴訟の開始から6カ月経過したが、太陽光発電施設の適正な時価についての議論が長引いており、訴訟はなかなか終わりそうにない。多分、訴訟が終了するまでに1年以上掛かるのではないかと俺は考えている。
俺たち内部調査部は3社とジョーダンたちの訴訟がどうなるかを観察しているが、3社が訴訟に勝っても負けてもジョーダンたちには直接影響しなさそうだ。
ただ、今回の事件はジョーダンたちが絡んでいたから、マスコミがグレーなSDGsやESGの実態を報道した。そして、マスコミ報道によってESGウォッシングが世間から少しだが注目されるようになったように思う。
ジャービス王国では明確な罰則規定はないものの、何らかの抑止力になってくれるのではないかと、俺は期待している。
即効性がないところが、悩ましいのだが・・・
***
俺が総務省の執務室で雑務をこなしていたら、ミゲルとベテラン警察官のジョルジュが肩を組んで入ってきた。2人は年齢も体形も近いから、古くからの親友のように見えなくはない。
部屋に入ってくるなりミゲルが「部長、ついにやりました!」と大声で言った。
ミゲルとジョルジュはハイタッチしながら、俺の執務室でダンスしている。
―― すごいテンションだな・・・
無視するのもどうかと思ったので「どうしたの?」と俺は2人に聞いた。
すると、ミゲルは「聞きたいですか?」と俺に言った。
「別に・・・」
「聞いてください。ついに、逮捕したんです!」
「逮捕した? 誰を?」
「ジョーダンですよ。ジョーダン」
「ジョーダンは海外にいるよね。冗談?」
「ダジャレじゃありません。本当にジョーダンを逮捕したんです」
「へー。どうやって逮捕したの?」
「ジョーダンはMJのファンだと言いましたよね。だから、私のスニーカーのコレクター・ネットワークを使ったんです」
「レアもののスニーカーを用意したの?」
「そうです。MJに連絡をとって、本人がスニーカーを履いている写真とサインを用意してもらいました。それをネットオークションに出したんです」
「そのスニーカーにジョーダンが食いついたんだ」
「そうです。出品したスニーカーの最低落札価格を1億JDにしていましたから、普通の人は買えません。それに、超高価なスニーカーを配送するのは危険だから、ジャービス王国で受け渡ししたいとジョーダンに提案したんです」
「そうしたら、ジョーダンはジャービス王国にやってきた?」
「まさに、その通りです! ジョーダンが空港でジャービス王国に入国した瞬間、警察が身柄を捕獲しました」
そうミゲルが言ったら、ジョルジュがガッツポーズしている。
「へー、コレクター魂ってすごいな!」
「コレクターだったら、リスクがあっても絶対に来ますよ!」
「それで、ミゲルはどういう捜査協力をしていたの?」
「私がネットオークションの出品者になって、ジョーダンとやり取りしていました」
「すごいなー。お手柄だね!」
「ですよね!」
そういうと、ミゲルはジョルジュともう一度ハイタッチした。
ミゲルとジョルジュは楽しそうだ。もう二人は親友と言ってもいい関係なのだろう。
―― 俺は友達いないんだけどな・・・
まあ、いいか。
ジョーダンも捕まったし・・・