第8話 競売に参加しよう(その1)
文字数 1,654文字
(8) 競売に参加しよう
俺は不動産の競売に参加するために、入札に利用する会社を設立することにした。
今度の会社は『i4』にした。
ここまで読んでいる皆さんは分かると思うが、理由は『i2』と『i3』があるからだ。
ちなみに、『i1』はない。何の計画もなく2からスタートしているところが、俺たちを表しているように思う。
不動産の競売にダミー会社を利用するのは、国として入札する訳にはいかないからだ。
確かに、何度か入札すれば、他の参加者に分かるだろう。
それでも、コソコソ動くのが俺の流儀だ。
今回設立するi4の社長はガブリエルに頼むことにした。
個人投資家に感情移入していて、内部調査部のメンバーの中でモチベーションが一番高そうだからだ。
i4の設立と並行して10人の個人投資家にもヒアリングを実施した。
ロワール銀行からの借入金が返せず、Lファイナンスから返済期間1年の短期借入をした個人投資家たちだ。返済期日がくれば担保物件が売却される予定だから、まさに瀕死の状況だ。
俺たちが不動産の競売に参加することによって、競落する価格が少しは高くなるかもしれないから、個人投資家の役に立てるかもしれない。
追加でヒアリングした10人の個人投資家の話をまとめると、どうやらロワール銀行のスティーブンは、書類偽造のことを知っているようだ。
何人かの個人投資家が、不動産購入資金を借りた当初は別の担当者だったが、書類偽造して借入を行う時点で、スティーブンに担当者が変更になったと言っていた。
また、話を聞いた10人がLファイナンスから資金を借りる時、直前の担当者は全員スティーブンだった。
だから、ロワール銀行のスティーブンはクロと認定して問題ないだろう。
本来騙される側の銀行の担当者が不正融資に絡んでいることから、一連の不正融資は詐欺罪にはならないだろう。ただ、ロワール銀行のスティーブンは銀行を欺いて融資を行っているから、銀行内部での問題はある。
まあ、調査の結果は結果なので、俺は内務省にありのままを報告することにした。
***********
俺は調査結果の連携と、入札に必要な資金を用立ててもらうため、内務省を訪問した。
第2王子のチャールズの部屋に入ると、半笑いで俺に話しかけてきた。
「また、いい儲け話があった?」
「チャールズ兄さんのせいですよ。内部調査部に予算を割り振ったから、大変です。今日は相談が2件あって来ました」
「どういう相談?」
「2件の相談について、まず経緯を説明します。こちらが内部調査部の調査報告書です」と言って、俺はチャールズに書面を渡した。
チャールズは俺が渡した調査報告書を手に取った。
俺は説明を続ける。
「ことの発端は、不正融資が行われていると内部告発ホットラインに告発があったことです」
「不正融資ね・・・」
「内部告発ホットラインの情報提供者に話を聞くと、不正融資が行われているのはレンソイス不動産が個人に販売しているLシリーズというシングルタイプの不動産物件とのことでした。それで、内部調査部のメンバーで、レンソイス不動産が関わっている不動産取引と融資取引の流れを調べました」
「その結果が、この調査報告書ということね」
「そうです。調査の結論として、不正融資は行われていました。でも、損害は発生していません。つまち、詐欺なのに実害はないんです」と俺は言った。
「詐欺なのに経済的損失がない? どういうこと?」とチャールズは俺に聞いた。
「要は、不動産会社、銀行、ノンバンクがグルになって、個人投資家をカモにしているのです」
そう言って、俺は一連の不動産取引の内容をチャールズに説明した。
「まず、不動産会社は、投資用不動産を個人投資家に販売していく過程で、個人投資家に何件も購入させようとします。その結果、個人投資家に収入で払える以上の借入をさせます。その際に、銀行に提出する虚偽のローン申請書類を作成して、収入証拠を偽造します」
「不正融資だね」
チャールズはボソッと言った。
<続く>
俺は不動産の競売に参加するために、入札に利用する会社を設立することにした。
今度の会社は『i4』にした。
ここまで読んでいる皆さんは分かると思うが、理由は『i2』と『i3』があるからだ。
ちなみに、『i1』はない。何の計画もなく2からスタートしているところが、俺たちを表しているように思う。
不動産の競売にダミー会社を利用するのは、国として入札する訳にはいかないからだ。
確かに、何度か入札すれば、他の参加者に分かるだろう。
それでも、コソコソ動くのが俺の流儀だ。
今回設立するi4の社長はガブリエルに頼むことにした。
個人投資家に感情移入していて、内部調査部のメンバーの中でモチベーションが一番高そうだからだ。
i4の設立と並行して10人の個人投資家にもヒアリングを実施した。
ロワール銀行からの借入金が返せず、Lファイナンスから返済期間1年の短期借入をした個人投資家たちだ。返済期日がくれば担保物件が売却される予定だから、まさに瀕死の状況だ。
俺たちが不動産の競売に参加することによって、競落する価格が少しは高くなるかもしれないから、個人投資家の役に立てるかもしれない。
追加でヒアリングした10人の個人投資家の話をまとめると、どうやらロワール銀行のスティーブンは、書類偽造のことを知っているようだ。
何人かの個人投資家が、不動産購入資金を借りた当初は別の担当者だったが、書類偽造して借入を行う時点で、スティーブンに担当者が変更になったと言っていた。
また、話を聞いた10人がLファイナンスから資金を借りる時、直前の担当者は全員スティーブンだった。
だから、ロワール銀行のスティーブンはクロと認定して問題ないだろう。
本来騙される側の銀行の担当者が不正融資に絡んでいることから、一連の不正融資は詐欺罪にはならないだろう。ただ、ロワール銀行のスティーブンは銀行を欺いて融資を行っているから、銀行内部での問題はある。
まあ、調査の結果は結果なので、俺は内務省にありのままを報告することにした。
***********
俺は調査結果の連携と、入札に必要な資金を用立ててもらうため、内務省を訪問した。
第2王子のチャールズの部屋に入ると、半笑いで俺に話しかけてきた。
「また、いい儲け話があった?」
「チャールズ兄さんのせいですよ。内部調査部に予算を割り振ったから、大変です。今日は相談が2件あって来ました」
「どういう相談?」
「2件の相談について、まず経緯を説明します。こちらが内部調査部の調査報告書です」と言って、俺はチャールズに書面を渡した。
チャールズは俺が渡した調査報告書を手に取った。
俺は説明を続ける。
「ことの発端は、不正融資が行われていると内部告発ホットラインに告発があったことです」
「不正融資ね・・・」
「内部告発ホットラインの情報提供者に話を聞くと、不正融資が行われているのはレンソイス不動産が個人に販売しているLシリーズというシングルタイプの不動産物件とのことでした。それで、内部調査部のメンバーで、レンソイス不動産が関わっている不動産取引と融資取引の流れを調べました」
「その結果が、この調査報告書ということね」
「そうです。調査の結論として、不正融資は行われていました。でも、損害は発生していません。つまち、詐欺なのに実害はないんです」と俺は言った。
「詐欺なのに経済的損失がない? どういうこと?」とチャールズは俺に聞いた。
「要は、不動産会社、銀行、ノンバンクがグルになって、個人投資家をカモにしているのです」
そう言って、俺は一連の不動産取引の内容をチャールズに説明した。
「まず、不動産会社は、投資用不動産を個人投資家に販売していく過程で、個人投資家に何件も購入させようとします。その結果、個人投資家に収入で払える以上の借入をさせます。その際に、銀行に提出する虚偽のローン申請書類を作成して、収入証拠を偽造します」
「不正融資だね」
チャールズはボソッと言った。
<続く>