第7話 連鎖倒産(その1)
文字数 1,341文字
(7) 連鎖倒産
内部調査部に戻った俺とガブリエルは、他のメンバーの様子が外出前と違うことに気付いた。騒がしく電話している。
どうしたのだろう?
俺は近くにいたミゲルに聞いてみた。
「みんな忙しそうだけど、どうしたの?」
「暗号資産交換業者の連鎖倒産が起きそうなんです」
「え? 連鎖倒産?」
「大手のXFTが破産したから、他の暗号資産交換業者も破産するんじゃないかと噂されています。不安に思った投資家が資金を引き上げ始めたようで、暗号資産交換業者の口座から急激に資金が流出しています」とミゲルは言った。
「資金繰りが厳しくなってる、ということかな?」
「そうです。いま手分けして暗号資産交換業者に電話して状況を確認しています」
「投資家がパニックになってるのかな?」
「そこまでは・・・。幾つかの暗号資産交換業者に連絡したら、暗号資産の売却オーダーが顧客からひっきりなしに入ってくると言ってました。買取り資金の確保が難しくなってそうです」
「へー」
「それに、暗号資産の時価が下がっているから、暗号資産交換業者は保有している暗号資産をすぐに売りたくないようです。売却すれば多額の売却損が発生しますし・・・」
「顧客の注文を受けるために、カバー取引(顧客からの買取りを、そのまま同業者に売却すること)はできないの?」
「カバー取引を受けてくれる暗号資産交換業者がいません。さらに今のタイミングで暗号資産交換業者が売却すると、暗号資産の時価が下がります。そうすると、狼狽した投資家が暗号資産を売却します。すると、暗号資産の時価がさらに下がります。その繰り返しみたいです・・・」
「何となく想像できる。時価が急激に下がると、一斉に損切りするよなー」
「はい。結果として、どうにもこうにも対処できない状況みたいです」
「結構、厳しそうだね」と俺は言った。
「そうです。暗号資産業界があまりに危険な状況です。ジャービット・エクスチェンジの調査どころの話ではありませんよー」ミゲルは興奮して俺に言った。
「そういえば、ジャービット・エクスチェンジはどうなってるの? 状況を聞いている人いる?」俺は内部調査部のメンバーに確認した。
すると、「1時間ほど前に電話しました」とスミスが言った。
「どうだった?」と俺はスミスにジャービット・エクスチェンジの状況を確認する。
「私が電話をした段階では、社長のホセが『顧客の何人かがジャービット・コインの売却の件で電話してきた』と言っていました。ただ、他の暗号資産に比べると影響は小さいはずだと言っていました」
「そう?」
「ジャービット・エクスチェンジで取り扱っている暗号資産は、ほとんどがジャービット・コインです。ジャービット・コインは他の暗号資産のようにカバー取引ができません。今は大丈夫でも、売り圧力が強まると危険です」
「そうだね」と俺が言った瞬間、スミスが「あれ?」と言葉を発した。
「スミス、どうしたの? そんなに驚いて」と俺はスミスに聞く。
「いまジャービット・エクスチェンジのホームページを見ていたのですが・・・」とスミスは言った。
「ホームページがどうしたの?」
「ジャービット・エクスチェンジは、ジャービット・コインの取引を停止しているようです」
「え?」
もう倒産したのか?
<続く>
内部調査部に戻った俺とガブリエルは、他のメンバーの様子が外出前と違うことに気付いた。騒がしく電話している。
どうしたのだろう?
俺は近くにいたミゲルに聞いてみた。
「みんな忙しそうだけど、どうしたの?」
「暗号資産交換業者の連鎖倒産が起きそうなんです」
「え? 連鎖倒産?」
「大手のXFTが破産したから、他の暗号資産交換業者も破産するんじゃないかと噂されています。不安に思った投資家が資金を引き上げ始めたようで、暗号資産交換業者の口座から急激に資金が流出しています」とミゲルは言った。
「資金繰りが厳しくなってる、ということかな?」
「そうです。いま手分けして暗号資産交換業者に電話して状況を確認しています」
「投資家がパニックになってるのかな?」
「そこまでは・・・。幾つかの暗号資産交換業者に連絡したら、暗号資産の売却オーダーが顧客からひっきりなしに入ってくると言ってました。買取り資金の確保が難しくなってそうです」
「へー」
「それに、暗号資産の時価が下がっているから、暗号資産交換業者は保有している暗号資産をすぐに売りたくないようです。売却すれば多額の売却損が発生しますし・・・」
「顧客の注文を受けるために、カバー取引(顧客からの買取りを、そのまま同業者に売却すること)はできないの?」
「カバー取引を受けてくれる暗号資産交換業者がいません。さらに今のタイミングで暗号資産交換業者が売却すると、暗号資産の時価が下がります。そうすると、狼狽した投資家が暗号資産を売却します。すると、暗号資産の時価がさらに下がります。その繰り返しみたいです・・・」
「何となく想像できる。時価が急激に下がると、一斉に損切りするよなー」
「はい。結果として、どうにもこうにも対処できない状況みたいです」
「結構、厳しそうだね」と俺は言った。
「そうです。暗号資産業界があまりに危険な状況です。ジャービット・エクスチェンジの調査どころの話ではありませんよー」ミゲルは興奮して俺に言った。
「そういえば、ジャービット・エクスチェンジはどうなってるの? 状況を聞いている人いる?」俺は内部調査部のメンバーに確認した。
すると、「1時間ほど前に電話しました」とスミスが言った。
「どうだった?」と俺はスミスにジャービット・エクスチェンジの状況を確認する。
「私が電話をした段階では、社長のホセが『顧客の何人かがジャービット・コインの売却の件で電話してきた』と言っていました。ただ、他の暗号資産に比べると影響は小さいはずだと言っていました」
「そう?」
「ジャービット・エクスチェンジで取り扱っている暗号資産は、ほとんどがジャービット・コインです。ジャービット・コインは他の暗号資産のようにカバー取引ができません。今は大丈夫でも、売り圧力が強まると危険です」
「そうだね」と俺が言った瞬間、スミスが「あれ?」と言葉を発した。
「スミス、どうしたの? そんなに驚いて」と俺はスミスに聞く。
「いまジャービット・エクスチェンジのホームページを見ていたのですが・・・」とスミスは言った。
「ホームページがどうしたの?」
「ジャービット・エクスチェンジは、ジャービット・コインの取引を停止しているようです」
「え?」
もう倒産したのか?
<続く>