第10話 再生スキームはどれにする?(その2)

文字数 1,532文字

(10)再生スキームはどれにする? <続き>

案3:i5はジャービットの株式を経営陣から買取らず、ジャービットに5億JDを出資する

【図表5-8:案3のイメージ】


【内容】
 案3ではi5は既存株主(現経営陣)からジャービット株式を買取らない。
 4億JDの債務超過になることを避けるため、i5はジャービットに対して5億JDを出資する。
 結果としてジャービットの株主は既存株主(現経営陣)とi5になる。
 既存株主(現経営陣)も株主であるから、投資有価証券から利益が発生した場合に既存株主(現経営陣)も分配を受取ることができる。

***

 私は内部調査部のメンバーを集めて、3つの再生スキームの内容を説明した。
 メンバーに3つの案のどれがいいかを選んでもらうためだ。

「・・・と言うわけで、3つからベストな案を選んでほしい」と私はメンバーに言った。

 すると、まずダニエルが発言した。

「俺は案1かなー。投資有価証券は清算価値で評価すれば問題ないからね」

「案1か・・・」

「それと、案3の場合は止めた方がいいと思う。投資有価証券の価値を簿価純資産とした場合、ジャービットの純資産はマイナス(債務超過)になるよね。でも、i5の出資に対して何株割当てるかによって、経営陣の議決権比率が無視できない場合もある。会社の意思決定を阻害する要因になるかもしれないから、懸案事項を残す案3はお勧めしないな・・・」

 ダニエルの言っていることはもっともだ。
 他のメンバーも同じ考えだろうか?

 私は「他の人はどうですか?」と他のメンバーに聞いてみた。すると、ガブリエルが発言した。

「僕は案2でもいいと思います。もちろん案1でも構いません。要は、経営陣に案1と案2のどちらが良いか、選んでもらえばいいんじゃないでしょうか?」

「経営陣に選ばせるか・・・」

「そうですね。投資有価証券は我々にとってはオマケのようなものです。だから、無理して取得する必要はありません。むしろ、案2が経営陣にとって好ましいのであれば、我々をスポンサーとして選定しやすくなると思います。ちなみに、僕も案3は後で揉めそうなので止めた方がいいと思います」

 ガブリエルも案3は反対、案1と案2には賛成のようだ。

 私がスミスの方を見ると、「私もガブリエルと同じです」とスミスは言った。

 まず、3人は案3には反対している。理由も尤もなので、ジャービット・エクスチェンジに案3を提案するのは避けた方がいいだろう。
 今回の目的はジャービス王国の暗号資産を発行して流通させることだし、経営陣に案1と案2を選んでもらうガブリエルの案が通りやすいような気がする。

 私はダニエルに再度確認してみた。

「他のメンバーは案1と案2のどちらでもいいみたい。ダニエルは案2が反対?」

「俺は案2でも構わないよ。ホセたちに選んでもらえばいいんじゃないかな」とダニエルは言った。特にこだわりは無いようだ。

「じゃあ、案1と案2で会社に提案します。ところで、スポンサーとして会社に提案するにあたって、何か承認手続きは必要かな?」と私はダニエルに聞いた。

「まあ、チャールズが言い出したらことだから、会社に提案する前にチャールズに説明しといた方がいいだろうね。ジャービット・エクスチェンジへの提案資料を作ったら言ってくれ。俺も一緒に説明に行くから」とダニエルが言った。

 それはそうだ。
 ジャービットを買収する資金は内務省から出してもらわないといけない。

「分かった。資料はすぐに作るから、午後に訪問の予約を入れておく。」

 私がそう言ったら「了解!」と言ってダニエルは部屋から出ていった。

 でも、私はチャールズに会うのは気がすすまない。

 アイツは女性を見るときいやらしい目をしている・・・
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登場人物紹介

ダニエル:ジャービス王国の第4王子。総務大臣。

ルイーズ:総務省 内部調査部 課長代理

ジェームス:ジャービス王国第1王子。軍本部 総司令

チャールズ:ジャービス王国の第2王子。内務大臣。

アンドリュー:ジャービス王国の第3王子。外務大臣。

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