第2話 名探偵を探せ!(その2)
文字数 1,691文字
(2)名探偵を探せ! <続き>
「コナン君のもう一つの特殊能力とは、犯人を自白させる能力です。警察官が取り調べ室で犯人に自白させようとしても上手くいきません。自白は犯人にとって不利な事実を認めるわけですから、かなりのテクニックが必要なのです」とジョルジュは言った。
※ここでの自白とは、自己に不利益な事実を承認することをいいます。「不利益な事実の承認」(刑訴法322条1項)や「有罪であることの自認」(刑訴法319条3項)が自白に近いものです。
「警察官が容疑者に暴力をふるって自白させるケースとかないのかな?」俺は興味本位で聞いてみた。
「ジャービス王国の法律では、自白を強要した場合、その自白調書は証拠とできないと定められています。最近は取調室に監視カメラを付けるような動きもあるようです。もし容疑者が後になって『あの自白は強要された』と言えば、証拠として採用されません」
※日本においては刑事訴訟法319条1項から3項に規定されています。
「自白させるのは難しいんだ」
「そうです。それにも関わらずコナン君は、事件の謎解きをし、公衆の面前で犯人に自白させます。この自白は100%有効ですよね?」とジョルジュは俺に聞いた。
「そうだね。有効だね」
「コナン君は特殊能力、すなわち、犯人に自白させる巧みな話術を武器にして、事件を解決しているんです」
「巧みな話術?」
「犯人は基本的に自白しません」
「自白しないの?」
「ええ。警察官が犯人を逮捕した場合をイメージして下さい。例えば・・・盗みに入った泥棒が警察に見つかったとしましょう」
俺は刑事ドラマの犯人逮捕シーンを頭の中でイメージした。
「この時、犯人は何て言うと思いますか?」
「俺じゃない?」
「違います。犯人がまず警察官に言うことは『弁護士に連絡させろ』です」
「弁護士に連絡・・・」
「弁護士が来ると、刑を軽くするために犯人と弁護士は打合せします。つまり、弁護士は『容疑を否認しろ』と犯人にアドバイスします」
「容疑を否認・・・」
「容疑を否認する犯人。警察官がいくら問い詰めても自白しませんよね?だから犯人を自白させるのは相当難易度が高いんです」
「犯人は自白しない・・・」俺は小さく呟いた。
「この状況を前提として、コナン君は証拠が十分ではありませんから、弁護士が来る前に犯人を自白させないといけません」
「弁護士が来る前が勝負なのか・・・」
「ええ。何ならコナン君は犯人が逮捕される前に自白させています」
「確かに・・・」
「コナン君の捜査スタイルだと、短時間で犯人を自白させるテクニックが必要です。どんな探偵も警察官も、あんな短時間で犯人を自白させることはできません」
「そんなに凄いのか・・」
「私が思うに、コナン君の捜査能力は優れていると思います。名探偵レベルでしょう。でも、証拠力が弱いので犯人に自白させるテクニックを駆使しないと事件解決できません」
「コナン君の特殊能力が必要・・・」俺は呟く。
「ジャービス王国で発生する事件の犯人は、少なくともコナン君の犯人よりも素直ではありません。警察官が犯人に自白させることができる可能性は低いでしょう。つまり、犯人の自白を前提に捜査をしても、ジャービス王国の事件は解決しないのです」
「だから証拠が必要なんだ」
「証拠集めは地味な捜査です。事件解決のスペシャリストはこの地味な作業をやり遂げられる忍耐力が必要なのです」
俺にはジョルジュが言いたいことは理解できる。
でも、名探偵がいた方が捜査は効率的じゃないのか?
「一つ質問なんだけど、一発で犯人が分かったら証拠集めは楽にならないかな?」
「そういう訳ではありません。事件の容疑者が4人としましょう。そして、そのうちの1人が犯人だと推理して捜査します。この場合、犯人候補1人の証拠を集めれば良いと思いますか?」
「1人の証拠でいいんじゃない?」
「不正解です。残り3人についても『なぜ犯人ではないか?』を調べないといけません。つまり、名探偵が犯人1人を推理できても、3人が犯人でない裏取りができないと犯人を逮捕できません」とジョルジュは言った。
捜査って奥が深いな・・・
<続く>
「コナン君のもう一つの特殊能力とは、犯人を自白させる能力です。警察官が取り調べ室で犯人に自白させようとしても上手くいきません。自白は犯人にとって不利な事実を認めるわけですから、かなりのテクニックが必要なのです」とジョルジュは言った。
※ここでの自白とは、自己に不利益な事実を承認することをいいます。「不利益な事実の承認」(刑訴法322条1項)や「有罪であることの自認」(刑訴法319条3項)が自白に近いものです。
「警察官が容疑者に暴力をふるって自白させるケースとかないのかな?」俺は興味本位で聞いてみた。
「ジャービス王国の法律では、自白を強要した場合、その自白調書は証拠とできないと定められています。最近は取調室に監視カメラを付けるような動きもあるようです。もし容疑者が後になって『あの自白は強要された』と言えば、証拠として採用されません」
※日本においては刑事訴訟法319条1項から3項に規定されています。
「自白させるのは難しいんだ」
「そうです。それにも関わらずコナン君は、事件の謎解きをし、公衆の面前で犯人に自白させます。この自白は100%有効ですよね?」とジョルジュは俺に聞いた。
「そうだね。有効だね」
「コナン君は特殊能力、すなわち、犯人に自白させる巧みな話術を武器にして、事件を解決しているんです」
「巧みな話術?」
「犯人は基本的に自白しません」
「自白しないの?」
「ええ。警察官が犯人を逮捕した場合をイメージして下さい。例えば・・・盗みに入った泥棒が警察に見つかったとしましょう」
俺は刑事ドラマの犯人逮捕シーンを頭の中でイメージした。
「この時、犯人は何て言うと思いますか?」
「俺じゃない?」
「違います。犯人がまず警察官に言うことは『弁護士に連絡させろ』です」
「弁護士に連絡・・・」
「弁護士が来ると、刑を軽くするために犯人と弁護士は打合せします。つまり、弁護士は『容疑を否認しろ』と犯人にアドバイスします」
「容疑を否認・・・」
「容疑を否認する犯人。警察官がいくら問い詰めても自白しませんよね?だから犯人を自白させるのは相当難易度が高いんです」
「犯人は自白しない・・・」俺は小さく呟いた。
「この状況を前提として、コナン君は証拠が十分ではありませんから、弁護士が来る前に犯人を自白させないといけません」
「弁護士が来る前が勝負なのか・・・」
「ええ。何ならコナン君は犯人が逮捕される前に自白させています」
「確かに・・・」
「コナン君の捜査スタイルだと、短時間で犯人を自白させるテクニックが必要です。どんな探偵も警察官も、あんな短時間で犯人を自白させることはできません」
「そんなに凄いのか・・」
「私が思うに、コナン君の捜査能力は優れていると思います。名探偵レベルでしょう。でも、証拠力が弱いので犯人に自白させるテクニックを駆使しないと事件解決できません」
「コナン君の特殊能力が必要・・・」俺は呟く。
「ジャービス王国で発生する事件の犯人は、少なくともコナン君の犯人よりも素直ではありません。警察官が犯人に自白させることができる可能性は低いでしょう。つまり、犯人の自白を前提に捜査をしても、ジャービス王国の事件は解決しないのです」
「だから証拠が必要なんだ」
「証拠集めは地味な捜査です。事件解決のスペシャリストはこの地味な作業をやり遂げられる忍耐力が必要なのです」
俺にはジョルジュが言いたいことは理解できる。
でも、名探偵がいた方が捜査は効率的じゃないのか?
「一つ質問なんだけど、一発で犯人が分かったら証拠集めは楽にならないかな?」
「そういう訳ではありません。事件の容疑者が4人としましょう。そして、そのうちの1人が犯人だと推理して捜査します。この場合、犯人候補1人の証拠を集めれば良いと思いますか?」
「1人の証拠でいいんじゃない?」
「不正解です。残り3人についても『なぜ犯人ではないか?』を調べないといけません。つまり、名探偵が犯人1人を推理できても、3人が犯人でない裏取りができないと犯人を逮捕できません」とジョルジュは言った。
捜査って奥が深いな・・・
<続く>