第2話 名探偵を探せ!(その1)
文字数 1,588文字
(2)名探偵を探せ!
俺はチャールズに頭を下げて、ベテラン警察官のジョルジュを紹介してもらった。
チャールズに『名探偵について教えてほしいから』と言うとバカにされる。
だから、説明の都合上『内部調査部の業務に役立てるため、警察官の調査手法を参考にしたい』とチャールズには言った。100%嘘だ。
俺が知りたいのは『この世に名探偵がいるのか?』
この一点だけだ。
しかし、何てバカっぽい質問なんだろう・・・
***
ジョルジュが総務省に来てくれたので、俺たち内部調査部のメンバーは会議室に集合した。
まず俺が、今回のヒアリングの趣旨をジョルジュに説明した。
「国王の思いつきで総務省に内部調査部が設置され、このメンバーでジャービス王国の国民から送られてくる告発をもとに不正調査をしている。チャールズ兄さんから内部調査部の業務内容は聞いていると思うけど、不正調査の過程で刑事事件と思われる事件も出てくる。過去にも刑事事件に相当する場合は、内部調査部から警察に連絡して犯人の逮捕などをしてもらっている」
「もちろん聞いています。警察の捜査とは別ルートなので、我々も助かっています」とジョルジュは言った。
「内部調査部は発足以来6件調査をして、ほぼ全ての事件を解決している。だけど、調査に時間が結構掛かっていて効率性がいいとは思えないんだ」
「気持ちは分かりますよ。警察の捜査も時間が掛かります」
「それで、ジョルジュに教えてほしいのは、名探偵はいるのかな?」
俺は早々に本題を切り出した。
「名探偵?」
「そう、名探偵。名探偵がいたら事件は直ぐに解決できるでしょ」
「王子が言っている、名探偵はどういう人のことですか?」
「例えば、シャーロックホームズとかコナン君とか。彼らは一瞬で事件を解決するでしょ」
「ジャービス王国に?」ジョルジュは俺に聞き返した。
「ジャービス王国に」
「聞いたことないですね・・・」とジョルジュは言った。
「ほらー。名探偵はいないでしょー」ルイーズは嬉しそうに言った。ルイーズは名探偵不在説を唱えている。
「警察はいろんな事件を扱っているでしょ。ジャービス王国に事件解決のスペシャリストはいないの?」俺は質問を少し変えた。
「スペシャリストはいますよ。優秀な刑事はスペシャリストです」
「優秀な刑事は名探偵ではないの?」
「そうですね。例えば、コナン君は事件解決のスペシャリストとは言えません」
「え? コナン君はスペシャリストではない?」
「そうです。コナン君はスペシャリストではありません。そもそも彼は刑事ではありませんから、捜査スタイルが違うのでしょう」
「捜査スタイル?」
「ええ。スペシャリストが犯人を逮捕するためには、犯行を行ったことを立証するエビデンス(証拠)が必要です」
「エビデンスかー」
「ええ。スペシャリストは地道に証拠集めをして、犯罪を100%立証できる証拠を揃えたうえで逮捕状を取ります」
「どういうこと? コナン君の推理は素晴らしいと思うんだけど」
「確かに、コナン君は優れた観察力、推理力を有しています。超能力者クラスの推理力です」
「そうでしょ?」
「コナン君は優れた能力を駆使して事件を解決するから、証拠集めを第一目的にしていません。コナン君が集めた証拠の量では、犯罪の立証には不十分なのです」
「証拠の量が足りない?」
「そうです。コナン君の集める証拠は、一般的な事件において犯行を立証できるだけの証拠の量ではないのです」
「証拠の量が十分じゃなくても、コナン君は事件を解決するよね?」
「そうです。つまり、証拠の量が足りないことを補うために、コナン君は超能力者クラスの推理力に加えて、もう一つ特殊能力を有しているのです」
「もう一つの特殊能力?」
ジョルジュがコナン君のことをこんなに知っているとは、俺は思っていなかった。
もしかしたら、警察内に名探偵研究会でもあるんじゃ?
<続く>
俺はチャールズに頭を下げて、ベテラン警察官のジョルジュを紹介してもらった。
チャールズに『名探偵について教えてほしいから』と言うとバカにされる。
だから、説明の都合上『内部調査部の業務に役立てるため、警察官の調査手法を参考にしたい』とチャールズには言った。100%嘘だ。
俺が知りたいのは『この世に名探偵がいるのか?』
この一点だけだ。
しかし、何てバカっぽい質問なんだろう・・・
***
ジョルジュが総務省に来てくれたので、俺たち内部調査部のメンバーは会議室に集合した。
まず俺が、今回のヒアリングの趣旨をジョルジュに説明した。
「国王の思いつきで総務省に内部調査部が設置され、このメンバーでジャービス王国の国民から送られてくる告発をもとに不正調査をしている。チャールズ兄さんから内部調査部の業務内容は聞いていると思うけど、不正調査の過程で刑事事件と思われる事件も出てくる。過去にも刑事事件に相当する場合は、内部調査部から警察に連絡して犯人の逮捕などをしてもらっている」
「もちろん聞いています。警察の捜査とは別ルートなので、我々も助かっています」とジョルジュは言った。
「内部調査部は発足以来6件調査をして、ほぼ全ての事件を解決している。だけど、調査に時間が結構掛かっていて効率性がいいとは思えないんだ」
「気持ちは分かりますよ。警察の捜査も時間が掛かります」
「それで、ジョルジュに教えてほしいのは、名探偵はいるのかな?」
俺は早々に本題を切り出した。
「名探偵?」
「そう、名探偵。名探偵がいたら事件は直ぐに解決できるでしょ」
「王子が言っている、名探偵はどういう人のことですか?」
「例えば、シャーロックホームズとかコナン君とか。彼らは一瞬で事件を解決するでしょ」
「ジャービス王国に?」ジョルジュは俺に聞き返した。
「ジャービス王国に」
「聞いたことないですね・・・」とジョルジュは言った。
「ほらー。名探偵はいないでしょー」ルイーズは嬉しそうに言った。ルイーズは名探偵不在説を唱えている。
「警察はいろんな事件を扱っているでしょ。ジャービス王国に事件解決のスペシャリストはいないの?」俺は質問を少し変えた。
「スペシャリストはいますよ。優秀な刑事はスペシャリストです」
「優秀な刑事は名探偵ではないの?」
「そうですね。例えば、コナン君は事件解決のスペシャリストとは言えません」
「え? コナン君はスペシャリストではない?」
「そうです。コナン君はスペシャリストではありません。そもそも彼は刑事ではありませんから、捜査スタイルが違うのでしょう」
「捜査スタイル?」
「ええ。スペシャリストが犯人を逮捕するためには、犯行を行ったことを立証するエビデンス(証拠)が必要です」
「エビデンスかー」
「ええ。スペシャリストは地道に証拠集めをして、犯罪を100%立証できる証拠を揃えたうえで逮捕状を取ります」
「どういうこと? コナン君の推理は素晴らしいと思うんだけど」
「確かに、コナン君は優れた観察力、推理力を有しています。超能力者クラスの推理力です」
「そうでしょ?」
「コナン君は優れた能力を駆使して事件を解決するから、証拠集めを第一目的にしていません。コナン君が集めた証拠の量では、犯罪の立証には不十分なのです」
「証拠の量が足りない?」
「そうです。コナン君の集める証拠は、一般的な事件において犯行を立証できるだけの証拠の量ではないのです」
「証拠の量が十分じゃなくても、コナン君は事件を解決するよね?」
「そうです。つまり、証拠の量が足りないことを補うために、コナン君は超能力者クラスの推理力に加えて、もう一つ特殊能力を有しているのです」
「もう一つの特殊能力?」
ジョルジュがコナン君のことをこんなに知っているとは、俺は思っていなかった。
もしかしたら、警察内に名探偵研究会でもあるんじゃ?
<続く>