第11話 投資計画を説明しよう(その6)

文字数 1,379文字

(11)投資計画を説明しよう <続き>

 ジャービット・エクスチェンジ案件のチャールズに対する説明は問題なく終わった。

 これで私は社長手当に一歩近づいた。
 後は、会社に提案してスポンサーになるだけだ。

 チャールズの執務室から出て歩いていると、ロイが私に話しかけてきた。

「ねえ。会議中、ス●夫が私の胸元を見ていたような気がするんだけど・・・。あれが噂のエロ視線だよね?」

「あれがそう。ス●夫のエロ視線。私の胸元もずっと見ていたよ」と私が言ったところで、ダニエルが話に入ってきた。

「エロ視線って、あれのことだったのか・・・。あれは胸元を見ていたわけじゃないと思うよ」

「ふーん。ス●夫をかばうの?」と私は言った。

「違うって。チャールズは小心者の女性恐怖症だ。だから女性の目を見て話ができない。過去に何かあったんだろうね・・・」ダニエルは遠いところを見ている。

「女性恐怖症なの?」

「俺の推理が正しければ・・・」

「あんたの推理に興味はないけど、それで?」

「チャールズは女性を直視できないから、女性と話すときは目線よりも少し下を見て話す」

「目よりも下?」

「これは癖だな。恋愛カウンセラーにでも『女性の目を見て話せないなら、鼻か口を見て話せば良い』って言われたんじゃないかな?」

「へー、それで?」

「だから、女性と話すときに本人は口元か鼻を見ているつもりだ。でも、目よりも下に視線がいくから、視線は胸元を見ているように女性は感じるんだろう。きっと・・・」

 私には、ダニエルがチャールズのことを必死にフォローしているようにしか聞こえない。
 セクハラと騒ぎ立てられると面倒だから、ダニエルはチャールズを庇っているのだ。

「それ本当? 絶対に私の胸を見てたよ?」

「うーん、説明が難しいな・・・。例えば、今俺はルイーズの目を見て話しているよね」

「そうね」

「俺の目線を少し下げてみるよ・・・」

 ダニエルはそう言って、目線を少し下げて言った。

「今、俺がどこを見ていると思う?」

「首かな?」

「残念! 鼻でした。これは?」

 ダニエルはさらに目線を下げた。

「胸!」と私は言った。

「残念! 顎(あご)でした。」

「本当に?」

「本当だよ。俺とルイーズは身長差があるからね。俺がルイーズの顎を見ていても、ルイーズは俺が胸元を見ていると思ったわけだ」

「じゃあ、ロイだったらどうなの?」

 ロイの身長はダニエルと同じくらいだ。
 ロイは一般男性よりも背が高い。女性としてはかなり長身だ。

「これは?」とダニエルがロイに言った。

「口(くち)?」とロイが答えた。

「正解! じゃあ、これは?」

「首?」とロイが言った。

「正解! 目線が同じくらいの高さだから、誤解は生じないみたいだ。良かった、良かった」

「何が?」と私は思わず言った。

「俺が言いたいのは、ス●夫の視線は必ずしもエロ視線ではないということだ」

「だから、何が?」

「ルイーズの胸元に向けられたス●夫の視線は、実際には口~顎への視線だ」

「そうかもね」

「そして、ロイの胸元に向けられたス●夫の視線は、実際も胸元を見ている。分かった?」

「・・・」

「じゃあ、私の胸元のス●夫の視線は、本当にエロ視線だった・・・・」
 ロイはボソッと呟いた。

 とりあえず、ジャービット・エクスチェンジへの提案内容は固まった。
 社長にも一歩近づいたから良しとしよう。

 ロイには申し訳ないが・・・
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登場人物紹介

ダニエル:ジャービス王国の第4王子。総務大臣。

ルイーズ:総務省 内部調査部 課長代理

ジェームス:ジャービス王国第1王子。軍本部 総司令

チャールズ:ジャービス王国の第2王子。内務大臣。

アンドリュー:ジャービス王国の第3王子。外務大臣。

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