第6話 張り込み(その2)
文字数 1,645文字
(6)張り込み <続き>
俺が黙り込んでから、2~3分くらい経っただろうか。急に、沈黙が破られた。
「全て私のせいです。私が悪いんです」ロイが声を上げたのだ。
俺は少し驚いた。『沈黙は金なり』作戦が成功したらしい。
それに、長身でショートカットだったから男性だと思っていたが、ロイは女性だった。
俺は心の中で、勝手に白状してくれたロイに感謝した。
俺は最初から分かっていたフリをして、ロイに話を聞くことにした。
ただ、俺は今のところ『土嚢を運び出した』と『ロイが悪い』の2つしか知らない。
ロイが何をしたのか、分からない。
小麦を盗んだかもしれないし、いたずらで土嚢を貯蔵工に入れたかもしれない。
余計なことを言ったら、俺が何も知らないとバレてしまう。
「何か理由はあったのかな?」と俺はロイに対して、わざとあやふやに尋ねた。
「借金を支払うためです。2年前に弟が事業に失敗して、連帯保証人になっていた私が弟の借金を肩代わりする必要がありました。借金の金額は5,000万JDでしたが、そんなお金はありません。
借金返済のために、十数回に分けて小麦を盗み出して、換金しました。小麦が減っていると盗んだことが分かってしまうので、代わりに土嚢を入れてごまかしました。それが、運び出した土嚢です」とロイは小麦を盗み出した理由を俺に話した。
俺は内心ほっとした。やはり小麦を盗んでいた。
もし土嚢のいたずらだったら、俺たちが調査する意味がなくなってしまう。
「じゃあ、小麦泥棒の犯人はロイということかな?」俺はロイに確認した。
「そうです。盗んだ小麦を土嚢でごまかしたものの、直ぐにバレました。あれだけ厳密に管理しているから、当然です。事情をここにいるメンバーに打ち明けたら、しばらく黙っているから、少しずつ給与から返すように言われました」とロイは言った。
その後、ロイが黙っているとスミスが、在庫調整について語り始めた。
「施設長のミゲルと相談したところ、公になったら責任問題になりかねないから、ロイが盗んだ小麦を返し終わるまで、小麦の仕入数量を操作して、土嚢を少しずつ減らしていくことになりました」
「そういうことか。それで仕入数値を偽っていたのですね」
俺は帳簿上の仕入数量が実際の仕入数量と異なる理由を理解した。
「約2年間、盗んだ小麦を給与から返しています。でも、まだ総額の1/5しか払えていません。盗んだ分の補填は、これからも少しずつ続けていくつもりでした」とロイは謝罪した。
気まずい空気が流れる。『沈黙は金なり』作戦を継続する俺が黙っていると、スミスがまた話しはじめた。
「ロイのことを知っていたのは、この4人だけです。第13穀物倉庫の他の従業員は知りません。
この件が犯罪なのは理解しています。ただ、本人が気の毒だったのと、本人に返済の意思があったので、協力しました。そして、土嚢の撤去は今月で終了する予定でした」とスミスが補足する。
「それが、今回の総務省の調査で判明してしまった」と俺はスミスの顔を見ながら言った。
犯人は判明したが、告発者はまだ謎のままだ。
「ところで、総務省が内部調査に来たのは、告発文が政府に届いたからだ。この中に告発文を送った人はいるのかな?」と俺は5人に尋ねた。
5人は顔を見合わせながら、困惑している。
「その様子だと、この中にはいないみたいですね」
告発者は誰だったのだろうか?
俺が探偵になりきってポケットに手を入れると、封筒の感触があった。ルイーズが作っていた復活の呪文だ。
今日出会った中で一番不幸なのは、この5人だろう。
不幸な人に申し訳ないが、この封筒を渡すのは今しかない。
俺は施設長のミゲルに「後で見てほしい」と伝えて、復活の呪文を手渡した。
封筒を受け取ったミゲルは怪訝な顔をしたが、「分かりました」と言って俺に一礼した。
俺は復活の呪文の内容を知らないので、彼らの役に立つかは分からない。
5人が警察に連行されていくのを見送って、俺たちは帰路についた。
俺が黙り込んでから、2~3分くらい経っただろうか。急に、沈黙が破られた。
「全て私のせいです。私が悪いんです」ロイが声を上げたのだ。
俺は少し驚いた。『沈黙は金なり』作戦が成功したらしい。
それに、長身でショートカットだったから男性だと思っていたが、ロイは女性だった。
俺は心の中で、勝手に白状してくれたロイに感謝した。
俺は最初から分かっていたフリをして、ロイに話を聞くことにした。
ただ、俺は今のところ『土嚢を運び出した』と『ロイが悪い』の2つしか知らない。
ロイが何をしたのか、分からない。
小麦を盗んだかもしれないし、いたずらで土嚢を貯蔵工に入れたかもしれない。
余計なことを言ったら、俺が何も知らないとバレてしまう。
「何か理由はあったのかな?」と俺はロイに対して、わざとあやふやに尋ねた。
「借金を支払うためです。2年前に弟が事業に失敗して、連帯保証人になっていた私が弟の借金を肩代わりする必要がありました。借金の金額は5,000万JDでしたが、そんなお金はありません。
借金返済のために、十数回に分けて小麦を盗み出して、換金しました。小麦が減っていると盗んだことが分かってしまうので、代わりに土嚢を入れてごまかしました。それが、運び出した土嚢です」とロイは小麦を盗み出した理由を俺に話した。
俺は内心ほっとした。やはり小麦を盗んでいた。
もし土嚢のいたずらだったら、俺たちが調査する意味がなくなってしまう。
「じゃあ、小麦泥棒の犯人はロイということかな?」俺はロイに確認した。
「そうです。盗んだ小麦を土嚢でごまかしたものの、直ぐにバレました。あれだけ厳密に管理しているから、当然です。事情をここにいるメンバーに打ち明けたら、しばらく黙っているから、少しずつ給与から返すように言われました」とロイは言った。
その後、ロイが黙っているとスミスが、在庫調整について語り始めた。
「施設長のミゲルと相談したところ、公になったら責任問題になりかねないから、ロイが盗んだ小麦を返し終わるまで、小麦の仕入数量を操作して、土嚢を少しずつ減らしていくことになりました」
「そういうことか。それで仕入数値を偽っていたのですね」
俺は帳簿上の仕入数量が実際の仕入数量と異なる理由を理解した。
「約2年間、盗んだ小麦を給与から返しています。でも、まだ総額の1/5しか払えていません。盗んだ分の補填は、これからも少しずつ続けていくつもりでした」とロイは謝罪した。
気まずい空気が流れる。『沈黙は金なり』作戦を継続する俺が黙っていると、スミスがまた話しはじめた。
「ロイのことを知っていたのは、この4人だけです。第13穀物倉庫の他の従業員は知りません。
この件が犯罪なのは理解しています。ただ、本人が気の毒だったのと、本人に返済の意思があったので、協力しました。そして、土嚢の撤去は今月で終了する予定でした」とスミスが補足する。
「それが、今回の総務省の調査で判明してしまった」と俺はスミスの顔を見ながら言った。
犯人は判明したが、告発者はまだ謎のままだ。
「ところで、総務省が内部調査に来たのは、告発文が政府に届いたからだ。この中に告発文を送った人はいるのかな?」と俺は5人に尋ねた。
5人は顔を見合わせながら、困惑している。
「その様子だと、この中にはいないみたいですね」
告発者は誰だったのだろうか?
俺が探偵になりきってポケットに手を入れると、封筒の感触があった。ルイーズが作っていた復活の呪文だ。
今日出会った中で一番不幸なのは、この5人だろう。
不幸な人に申し訳ないが、この封筒を渡すのは今しかない。
俺は施設長のミゲルに「後で見てほしい」と伝えて、復活の呪文を手渡した。
封筒を受け取ったミゲルは怪訝な顔をしたが、「分かりました」と言って俺に一礼した。
俺は復活の呪文の内容を知らないので、彼らの役に立つかは分からない。
5人が警察に連行されていくのを見送って、俺たちは帰路についた。