第1話 正社員登用への道(その2)
文字数 1,464文字
(1)正社員登用への道 <続き>
「そうすると、給与は契約社員の方が高いのですか?」とミゲルが聞いてきた。
「専門職の場合はそうだね。正社員の場合は職位に応じて報酬額が決まっている。ボーナスも固定だ。業績が良くても悪くても、給与は変わらない。一方、契約社員は、業績連動報酬にできるから、業績を上げれば給与やボーナスはいくらでも上がる」と俺はメンバーに給与体系を説明した。
「正社員になったら、給与が下がるということですか?」とロイが俺に質問した。
「そうだね。今の状況で、5人が正社員になると、給与が半分くらいに減るかな。どうしてもというなら雇用形態を変更するけれど、本当に正社員になりたい?」
「それは・・・」ミゲルは言葉に詰まった。
「だよね。内部調査部のみんなは、給与の件があるから、契約社員のままの方がいいと思う」
「私も契約社員の方がいい。雇用形態を変えたらダメなの?」とルイーズがしつこく聞いてきた。
「ルイーズは、今の契約でいいんじゃないかな。内部調査部以外の仕事もしているし。それに、今の人事制度だと契約社員は課長になれないよ」
「課長か?給料か?難しい問題ね。少し考えてみる」ルイーズはそう言ったまま、考え込んでしまった。
「ルイーズの場合はともかく、他のメンバーはどちらがいいかを考えてくれればいい」と俺はメンバーに言った。
「ちなみに、正社員のメリットは何ですか?」とロイが聞いてきた。
「職務の範囲が広いから、希望が通れば省内のどんな業務にも着くことができる。給与は職位に応じて決定するから、職位が上がれば給与は上がる。というのがメリットかな」
「逆にデメリットは何ですか?」
「給与が職位によって決まるから、あまり高くない。前の国王が終身雇用をモデルに雇用形態を決めたから、民間企業と比べると給与は低い水準だ。民間企業から特殊な専門技術や専門知識を持っている人を雇おうとすると、金額的に契約社員でしか雇えない。あと、現時点では契約社員だと課長以上に着くのは難しい。デメリットは、こんなところかな」
「うーん。難しいですね。考えます」そう言ってロイも黙り込んだ。
正直、メンバーにとって雇用形態をどちらにするかは、悩ましいところだと思う。
採用時は、5人は小麦の損失補填のための借入返済が必要だったから、契約社員として雇用した。もう借金返済も返終わったはずだから、どちらにするかは各自に選んでもらった方がいいのだろう。
そういうことで、この話合いは一旦終了した。と俺はその時思っていた。
次の日、ルイーズが機嫌良さそうに俺のところにやってきた。
「いい解決策を思いついたの」
「どういう案?」と俺は聞く。嫌な予感しかしない。
「いま、i2からi4があるじゃない。私は、総務省とその会社の兼務にすればよくないかな?」
「へー。そうなの」
「そうすれば、総務省の雇用形態はそのままだから課長に昇進できる。さらに、i2~i4でインセンティブを受け取ることができる。いい案だと思うけど」とルイーズは言った。
なんて自分に都合のいい条件を突き付けてくるのだろう、と俺は思ったが、他のメンバーよりも明らかに低い給与で働いている状況なので、給与面は改善してあげた方がいいだろう。
「ルイーズにとってはいい案だね。まあ、いろいろ働いてくれているから、兼務でいいよ」
「じゃあ、契約書を用意しとくから、後で目を通しておいて」
そう言って、ルイーズは去っていった。
内部調査部の出費は膨らむが、総務省の給与体系を変えるよりはマシだろう。
俺は前向きに考えることにした。
「そうすると、給与は契約社員の方が高いのですか?」とミゲルが聞いてきた。
「専門職の場合はそうだね。正社員の場合は職位に応じて報酬額が決まっている。ボーナスも固定だ。業績が良くても悪くても、給与は変わらない。一方、契約社員は、業績連動報酬にできるから、業績を上げれば給与やボーナスはいくらでも上がる」と俺はメンバーに給与体系を説明した。
「正社員になったら、給与が下がるということですか?」とロイが俺に質問した。
「そうだね。今の状況で、5人が正社員になると、給与が半分くらいに減るかな。どうしてもというなら雇用形態を変更するけれど、本当に正社員になりたい?」
「それは・・・」ミゲルは言葉に詰まった。
「だよね。内部調査部のみんなは、給与の件があるから、契約社員のままの方がいいと思う」
「私も契約社員の方がいい。雇用形態を変えたらダメなの?」とルイーズがしつこく聞いてきた。
「ルイーズは、今の契約でいいんじゃないかな。内部調査部以外の仕事もしているし。それに、今の人事制度だと契約社員は課長になれないよ」
「課長か?給料か?難しい問題ね。少し考えてみる」ルイーズはそう言ったまま、考え込んでしまった。
「ルイーズの場合はともかく、他のメンバーはどちらがいいかを考えてくれればいい」と俺はメンバーに言った。
「ちなみに、正社員のメリットは何ですか?」とロイが聞いてきた。
「職務の範囲が広いから、希望が通れば省内のどんな業務にも着くことができる。給与は職位に応じて決定するから、職位が上がれば給与は上がる。というのがメリットかな」
「逆にデメリットは何ですか?」
「給与が職位によって決まるから、あまり高くない。前の国王が終身雇用をモデルに雇用形態を決めたから、民間企業と比べると給与は低い水準だ。民間企業から特殊な専門技術や専門知識を持っている人を雇おうとすると、金額的に契約社員でしか雇えない。あと、現時点では契約社員だと課長以上に着くのは難しい。デメリットは、こんなところかな」
「うーん。難しいですね。考えます」そう言ってロイも黙り込んだ。
正直、メンバーにとって雇用形態をどちらにするかは、悩ましいところだと思う。
採用時は、5人は小麦の損失補填のための借入返済が必要だったから、契約社員として雇用した。もう借金返済も返終わったはずだから、どちらにするかは各自に選んでもらった方がいいのだろう。
そういうことで、この話合いは一旦終了した。と俺はその時思っていた。
次の日、ルイーズが機嫌良さそうに俺のところにやってきた。
「いい解決策を思いついたの」
「どういう案?」と俺は聞く。嫌な予感しかしない。
「いま、i2からi4があるじゃない。私は、総務省とその会社の兼務にすればよくないかな?」
「へー。そうなの」
「そうすれば、総務省の雇用形態はそのままだから課長に昇進できる。さらに、i2~i4でインセンティブを受け取ることができる。いい案だと思うけど」とルイーズは言った。
なんて自分に都合のいい条件を突き付けてくるのだろう、と俺は思ったが、他のメンバーよりも明らかに低い給与で働いている状況なので、給与面は改善してあげた方がいいだろう。
「ルイーズにとってはいい案だね。まあ、いろいろ働いてくれているから、兼務でいいよ」
「じゃあ、契約書を用意しとくから、後で目を通しておいて」
そう言って、ルイーズは去っていった。
内部調査部の出費は膨らむが、総務省の給与体系を変えるよりはマシだろう。
俺は前向きに考えることにした。