第4話 登記簿謄本を調べろ(その2)
文字数 1,579文字
(4) 登記簿謄本を調べろ <続き>
「あと、不動産情報の謄本(原本のコピー)である登記簿謄本は、1件ごと400~500JDと少額だけど、数が多いからそれなりの収入になる」
「そっちも細かく稼いでいるのですね」とミゲル。
「そうだよ。それで、不動産の権利情報をデータ化しているから、登記簿謄本を確認すると、その物件の基本情報(所在地、面積、構造など)、所有権、抵当権などが分かる」
「所有権は、誰が不動産のオーナーかという情報ですよね?」とロイが聞いてきた。
「そうだね」
「じゃあ、抵当権というのは何ですか?」とロイが質問した。
「抵当権は、不動産を担保にして銀行からお金を借りる時に、表示される情報。どの銀行からいくら借りているかが分かる」と俺は説明した。
「なるほど。でも、借り手も貸し手も不動産が借入金の担保なのを知っているのに、なぜ抵当権の情報を開示しないといけないのですか?」ロイは抵当権を開示する制度について疑問があるようだ。
「それは、他の人(第三者)が知らないからだよ。この前、ミゲルが自宅を担保にして借入したよね」と俺は言った。
「懐かしいですねー。ロイの損害賠償請求額を立替えるのに自宅を担保にして銀行からお金を借りました」とミゲルは呑気に言った。
※詳しくは『第1回活動報告:横領犯を捕まえろ』をご覧下さい。
「ミゲルを例にして説明しよう。まず、これを見てほしい」と言って俺はホワイトボードに図(図表4-1)を書いた。
【図表4-1:ミゲルの二重担保設定】
「ミゲルは自宅を担保にして、A銀行から4,000万JD借りている。その後、ミゲルは自宅がA銀行の担保になっていることを内緒にして、B銀行から4,000万JD借りたとする」
「私が悪者になっているみたいですが、私はそんなことはしませんよ」とミゲルが弁解した。
俺は話を続ける。
「この場合、誰が悪いと思う?」俺はメンバーに聞いた。
「ミゲル!」とロイが言う。
「正解!ミゲルが全面的に悪い」
メンバーから拍手が起こった。
「私は悪くありません」とミゲルは抵抗する。
俺は話を続けた。
「もし、登記簿謄本に抵当権の情報が表示されてなかったら、B銀行はミゲルの自宅が既にA銀行の担保になっていることに気付けない。だって、担保設定契約の存在は、ミゲルとA銀行しか知らないから。B銀行(第三者)が知るためには登記簿謄本に抵当権情報を表示しておかないといけない」
「じゃあ、登記簿謄本に抵当権情報が無かったら、ミゲルは何度も自宅を担保にして、借入できるわけですか?」とロイが聞いた。
「だから、私じゃないですけど・・・」ミゲルは自分を擁護する。
「そうだよ。ミゲルは何度でも借入できる」と俺はロイの質問に答えた。
「へー。抵当権情報は、詐欺防止に役立っているんだー」とロイが関心して言った。
「さて、ミゲルが詐欺師かどうかはともかく・・・。なぜ登記簿謄本に抵当権情報を表示しているか分かった?」と俺はロイに聞いた。
「身近な事例だと分かり易いですね。それにしても、部長は不動産登記について、よく知っていますね」とロイが俺に言った。
俺は褒められて少し嬉しくなったが、そこに間髪入れずルイーズが言った。
「不動産登記は総務省の所管だから、総務省の人間は知らないとおかしい。このビルの3階にあるわよ」
俺は仕切り直して内部調査部のメンバーに言う。
「みなさんも総務省に勤務しているのだから、今回の件を通して、不動産登記を勉強しましょう!」
メンバーは俺と目を合わさずに下を向いた。
でも『沈黙は同意と同じだ』と俺は理解した。
「登記簿謄本を閲覧するには、普通は1物件につき400~500JD掛かる。だけど、総務省の3階に行って調べれば無料だ。じゃあ、3階に移動して作業に取り掛かろう!」
俺はそう言って、内部調査部のメンバーを3階に連れて行った。
「あと、不動産情報の謄本(原本のコピー)である登記簿謄本は、1件ごと400~500JDと少額だけど、数が多いからそれなりの収入になる」
「そっちも細かく稼いでいるのですね」とミゲル。
「そうだよ。それで、不動産の権利情報をデータ化しているから、登記簿謄本を確認すると、その物件の基本情報(所在地、面積、構造など)、所有権、抵当権などが分かる」
「所有権は、誰が不動産のオーナーかという情報ですよね?」とロイが聞いてきた。
「そうだね」
「じゃあ、抵当権というのは何ですか?」とロイが質問した。
「抵当権は、不動産を担保にして銀行からお金を借りる時に、表示される情報。どの銀行からいくら借りているかが分かる」と俺は説明した。
「なるほど。でも、借り手も貸し手も不動産が借入金の担保なのを知っているのに、なぜ抵当権の情報を開示しないといけないのですか?」ロイは抵当権を開示する制度について疑問があるようだ。
「それは、他の人(第三者)が知らないからだよ。この前、ミゲルが自宅を担保にして借入したよね」と俺は言った。
「懐かしいですねー。ロイの損害賠償請求額を立替えるのに自宅を担保にして銀行からお金を借りました」とミゲルは呑気に言った。
※詳しくは『第1回活動報告:横領犯を捕まえろ』をご覧下さい。
「ミゲルを例にして説明しよう。まず、これを見てほしい」と言って俺はホワイトボードに図(図表4-1)を書いた。
【図表4-1:ミゲルの二重担保設定】
「ミゲルは自宅を担保にして、A銀行から4,000万JD借りている。その後、ミゲルは自宅がA銀行の担保になっていることを内緒にして、B銀行から4,000万JD借りたとする」
「私が悪者になっているみたいですが、私はそんなことはしませんよ」とミゲルが弁解した。
俺は話を続ける。
「この場合、誰が悪いと思う?」俺はメンバーに聞いた。
「ミゲル!」とロイが言う。
「正解!ミゲルが全面的に悪い」
メンバーから拍手が起こった。
「私は悪くありません」とミゲルは抵抗する。
俺は話を続けた。
「もし、登記簿謄本に抵当権の情報が表示されてなかったら、B銀行はミゲルの自宅が既にA銀行の担保になっていることに気付けない。だって、担保設定契約の存在は、ミゲルとA銀行しか知らないから。B銀行(第三者)が知るためには登記簿謄本に抵当権情報を表示しておかないといけない」
「じゃあ、登記簿謄本に抵当権情報が無かったら、ミゲルは何度も自宅を担保にして、借入できるわけですか?」とロイが聞いた。
「だから、私じゃないですけど・・・」ミゲルは自分を擁護する。
「そうだよ。ミゲルは何度でも借入できる」と俺はロイの質問に答えた。
「へー。抵当権情報は、詐欺防止に役立っているんだー」とロイが関心して言った。
「さて、ミゲルが詐欺師かどうかはともかく・・・。なぜ登記簿謄本に抵当権情報を表示しているか分かった?」と俺はロイに聞いた。
「身近な事例だと分かり易いですね。それにしても、部長は不動産登記について、よく知っていますね」とロイが俺に言った。
俺は褒められて少し嬉しくなったが、そこに間髪入れずルイーズが言った。
「不動産登記は総務省の所管だから、総務省の人間は知らないとおかしい。このビルの3階にあるわよ」
俺は仕切り直して内部調査部のメンバーに言う。
「みなさんも総務省に勤務しているのだから、今回の件を通して、不動産登記を勉強しましょう!」
メンバーは俺と目を合わさずに下を向いた。
でも『沈黙は同意と同じだ』と俺は理解した。
「登記簿謄本を閲覧するには、普通は1物件につき400~500JD掛かる。だけど、総務省の3階に行って調べれば無料だ。じゃあ、3階に移動して作業に取り掛かろう!」
俺はそう言って、内部調査部のメンバーを3階に連れて行った。