第23話

文字数 450文字

「影に用はないわ。本物の識里(しり)稜佳(いつか)はどこ?」
「アイラ! 直球勝負すぎじゃない?!」

 予告もなく、戦闘モードに突入してしまったマスターを守るように、一来は一歩前に出ながら、私を見ました。どうする? と聞いているのでしょう。
選択肢は、説得して識里の元へ案内させるか、無理やり案内させるのか? といったところでしょうか?

 まあ、私としてはどちらでもいいのですが、マスターの猫がネズミを狙っている時のような瞳を見る限りでは……、説得する気などさらさらないようですね。
私はくちびるを舐め、一来への答えの代わりに小さな竜巻を起こしました。ジャスミンの香りが暴力的に部屋に広がります。風がパキラの葉が揺らし、バタバタと音を立てました。

「あら、あんたも影なんだ」

 識里の影は警戒心を解いた明るい声で呼びかけてきました。体の周りをとびかっていた影の羽虫がすうっと体に戻っていきます。識里はクスクス笑いながら、私の手を取りました。

「じゃあ、あんたも仲間になりなよ。そのわがままそうな人間はほっといて、一緒に楽しくやろうよ」
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