第174話

文字数 439文字

『鉄の錠剤です。すぐに効くわけではありませんが、血を作るのに役立ちます』

一来の口に赤くて丸い粒を押し込みながら説明します。一来は水で飲み下すと、半分ほど減ったグラスを見つめました。

「一来君、もし体が辛かったら、話を聞くのは今じゃなくても……」
「いや、今じゃなきゃ、だめなんだ。なるべく早くしないと」

 稜佳の言葉をさえぎって、一来がゆるぎない決意を瞳に浮かべて言いました。

「一来の言う通りだよ。今や冬矢の影は一来の血でパワーマックスだ。いくら動いても平気なはずさ。何をする気なのか分からないよ」

 それまで黙って様子を見ていた紅霧が口を開きました。

「でも……」稜佳が心配そうに一来を覗き込みます。
「僕ならもう大丈夫だ。ただの手の傷だから」と白いガーゼを貼った手を見せました。

「考えてごらん。一度に大量の血を奪っていったってことは、二度目はない。吸収した一来の精命が尽きるまでに片をつけにくるはずさ」

「そうね……。お姉さんの言う通りかも。いつ、どこで襲われたの? 一来、順番に話して」
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