第1話

文字数 434文字

「早く行って、ブラック・フラーミィ」

 デジャヴ。今日もまた、マスターのセリフは昨日とも一昨日ともまったく同じです。違うのは、肌寒い天候のせいで、マスターが制服に学校のジャージを羽織っているところだけでしょうか。

 ダサい緑色のジャージは全く気に入りませんが、たとえ私の趣味に合わなくともマスターの着る服を私もまとわなければならないのが、影の辛いところです。

『フラーミィではなく黒炎(くろめほむら)です』

「あなたの真名(しんめい)を教えてくれたら、ちゃんと呼んであげるわよ」
『私の真名はコキュ……』

 私は言いかけた言葉を、すんでのところで飲み込みました。危ない危ない…。うっかりコキュートス・ダークナイトという真名を漏らしてしまうところでした。真名を取られたら、まったく逆らえなくなってしまいます。真名だけは絶対に守り抜かなければ!

「あら。引っかからなかったわね」
『たまにはご自分で列に並んではいかがですか?』私は冷たく言い放ちました。

「お願い、フラーミィ。精命(まな)がたっぷりの長-い髪、あげちゃうよ?」
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み