第192話
文字数 1,116文字
マスターは寝起きがよくありません。ましてこんな夜中では……。一時間で起きればいいほうでしょう。
「起きてください、アイラ……。アイラ……、起きて……」
耳元で呼びかけるのと同時に、肩を掴んで、ベッドが揺れるほど揺さぶりましたが、やはり一向に起きる気配がありません。仕方がないので、やや、そうですね、多少……大きな声で呼びかけました。
『ア・イ・ラ! 起きてください!』
「あれ? どうしたの、フラーミィ」隣で寝ていた稜佳が起きてしまいました。
『黒の精命がまもなく満ちます。急いで黒の鏡を奪い返しに行かねばなりません。危険ですから稜佳はここで待っていてくださ』
「嫌! 今度は一緒に行くよ!」
私の言葉を遮ったかと思うと、稜佳が飛び起きました。蹴飛ばされた羽毛布団が床に落ち、パフッと音を立てました。
「アイラちゃん、ほら、起きて! 寝ている場合じゃないよっ!」
稜佳はマスターの布団を一気にはがし、大音量で耳元で叫びました。
――おお! さきほどまでピクリともしなかったというのに、マスターの瞼が一ミリ持ち上がりましたよ!
しかし瞼はすぐに閉じてしまいました。
「あー! ちょっと、アイラちゃんってばー! 黒い精命が溜まっちゃったんだよ! 早く起きてー!」
『あ、いえ、それはまだ……』
「えっ! 黒い精命が?!」
稜佳の声で飛び起きたのは、隣の部屋で寝ていた一来でした。続けてベッドから起きだす騒がしい音が続いて聞こえてきます。眼鏡をまだかけていないのか、何かにぶつかる音がし、痛え、と叫ぶ声が続きます。別のベッドに寝ていた奏多も目をこすりながら体を起こしました。
「着替えて、玄関に集合ね!」
「"了解!”」
すでにはっきりと目覚めている稜佳の指示に、奏多がカニのポーズで答えます。
「起きないと置いて行っちゃうよ、アイラちゃん!」
「……稜佳ぁ、随分と強気じゃないの」
ようやく目覚めたとはいえ、布団を胸に抱え込んだままのマスターの目は、半分しか瞼が持ち上がっていません。
「寝ぼけたまますごんでも、全然怖くないよ!」
「稜佳……、帰ってきたら、あなたもお仕置きなんだからね……」
ようやくマスターは体を起こし、パジャマのボタンに指をかけました。しかしゆるゆるとした手つきにしびれを切らした稜佳が、代わりにあっという間にボタンを外してしまいました。続けてパジャマをはぎ取って床に投げ捨てます。そしてマスターを裸に剥いたところで手を止めました。
「そういえば、どうやって冬矢先輩の家に行けばいいのかな?」
「ちょっと稜佳、私、裸なんだけど」
ようやく目覚めたマスターはブツブツ文句を言いながら、長袖Tシャツを頭からかぶり、学校の緑色のジャージを羽織りました。
「起きてください、アイラ……。アイラ……、起きて……」
耳元で呼びかけるのと同時に、肩を掴んで、ベッドが揺れるほど揺さぶりましたが、やはり一向に起きる気配がありません。仕方がないので、やや、そうですね、多少……大きな声で呼びかけました。
『ア・イ・ラ! 起きてください!』
「あれ? どうしたの、フラーミィ」隣で寝ていた稜佳が起きてしまいました。
『黒の精命がまもなく満ちます。急いで黒の鏡を奪い返しに行かねばなりません。危険ですから稜佳はここで待っていてくださ』
「嫌! 今度は一緒に行くよ!」
私の言葉を遮ったかと思うと、稜佳が飛び起きました。蹴飛ばされた羽毛布団が床に落ち、パフッと音を立てました。
「アイラちゃん、ほら、起きて! 寝ている場合じゃないよっ!」
稜佳はマスターの布団を一気にはがし、大音量で耳元で叫びました。
――おお! さきほどまでピクリともしなかったというのに、マスターの瞼が一ミリ持ち上がりましたよ!
しかし瞼はすぐに閉じてしまいました。
「あー! ちょっと、アイラちゃんってばー! 黒い精命が溜まっちゃったんだよ! 早く起きてー!」
『あ、いえ、それはまだ……』
「えっ! 黒い精命が?!」
稜佳の声で飛び起きたのは、隣の部屋で寝ていた一来でした。続けてベッドから起きだす騒がしい音が続いて聞こえてきます。眼鏡をまだかけていないのか、何かにぶつかる音がし、痛え、と叫ぶ声が続きます。別のベッドに寝ていた奏多も目をこすりながら体を起こしました。
「着替えて、玄関に集合ね!」
「"了解!”」
すでにはっきりと目覚めている稜佳の指示に、奏多がカニのポーズで答えます。
「起きないと置いて行っちゃうよ、アイラちゃん!」
「……稜佳ぁ、随分と強気じゃないの」
ようやく目覚めたとはいえ、布団を胸に抱え込んだままのマスターの目は、半分しか瞼が持ち上がっていません。
「寝ぼけたまますごんでも、全然怖くないよ!」
「稜佳……、帰ってきたら、あなたもお仕置きなんだからね……」
ようやくマスターは体を起こし、パジャマのボタンに指をかけました。しかしゆるゆるとした手つきにしびれを切らした稜佳が、代わりにあっという間にボタンを外してしまいました。続けてパジャマをはぎ取って床に投げ捨てます。そしてマスターを裸に剥いたところで手を止めました。
「そういえば、どうやって冬矢先輩の家に行けばいいのかな?」
「ちょっと稜佳、私、裸なんだけど」
ようやく目覚めたマスターはブツブツ文句を言いながら、長袖Tシャツを頭からかぶり、学校の緑色のジャージを羽織りました。