第50話

文字数 352文字

(ソルベが見えないので、顔をどけてほしい)

 私はさりげなく稜佳から顔をそむけて逃れ、ソルベに手を伸ばしました。

『いいえ。変身という訳ではありません。影は影自身と本体、つまり私ならアイラにしか姿を現すことはできないのです』

「えっ? でも……」

 稜佳は頬っぺたをつん、と私の頬を人差し指でつつきました。左手で稜佳の指を押しやって眉をしかめました。見た目は少女でも、私は小さな女の子ではないのです。ほっぺツンツンなど不快でしかないのです。

『コホン。この姿はアイラの幼い時の姿です。過去の記憶で姿を現しているのです』

「そうか、そういえば紅霧も若いときのアイラのお祖母さんの姿だったっけ……」

 誰に言うでもなく言って、稜佳はフォークを手に取り、一人納得しています。それから「取り皿もらう?」とマスターに聞きました。
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