第4話

文字数 433文字

 マスターは首をすくめました。精命がいっぱいの金髪のツインテールが揺れます。美味しそう……。無意識に舌なめずりをしてしまったようです。

「ちょっと! フラーミィ、お行儀が悪いわよ」
『あ、降りるようですよ、あの少年』

 叱責は聞こえないフリをして指摘しました。私を見つけた少年を、このまま何もせず放置しておくわけにはいきません。たとえそれが凡庸な眼鏡男子であろうとも。
 マスターは青いリュックを持ち上げ、少年との間に数人を挟んでバスを降りました。少年が振り返っても後を付けていることがバレないよう、反対方向に歩いていきます。

 「フラーミィ……」
 『承知しております』

 マスターが手近なドラッグストアの中に入ったのを見届けると、私はマスターの足元を離れて影の姿のまま地面を滑り、少年の後をつけました。

 間をおいてマスターがドラッグストアから出てくるのを感じました。少年を見失わないようにしつつ、マスターの足元に戻りました。あまり長く離れていると精命(まな)を消費してしまいますから。
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