第83話
文字数 941文字
「そしてこのスマートフォンのフェイク画像はSNSの中の物ではなく……、画像加工アプリに保存されていますね」
「そ、それは……」モンスターママの眼球が、抜け道を探すように落ち着きなく動き回ります。
「被害者のあの子たちには、なんの責任もないですよ。モン、いえ、佐々さんが自分がやったのではないというのなら……、犯人を公表しますか?」浅葱先生は「はんにん」にアクセントを付けてゆっくりと言いました。
「も、もういいです。帰ります。スマホを返してください」
「もう少しお待ちを。SNSのアカウントを確認しますから」
アカウントを調べられたら、最初に加工画像を流したのも自分だとわかってしまうと思ったのでしょうか。
「返して! 返してください!」と浅葱先生に激しく詰め寄り、スマートフォンに手を伸ばしました。「泥棒! 返せ!」
浅葱先生は高々とスマートフォンを頭上にあげ、モンスターママの手からゆうゆうと逃れて操作を進めていきます。
「勝手にそんなことしていいと思っているんですか? プライバシーの侵害ですよ!」
「はい。そうですね。でも僕は……、もし自分がプライバシーの侵害で訴えられようとも、生徒を守りたいのです」モンスターママのアカウントが画面に表示される。下へ……下へ……、スクロールしていく。
「ごめんなさい!」モンスターママが叫びました。「そんな悪気があった訳じゃないんです。ちょっとした出来心でっ」目は浅葱先生の手元から離さずに、何度も浅く頭を下げます。
「あなたがやった?」浅葱先生の銀縁の眼鏡が光りました。
「はい……」
「わかりました。実害は今の所さほどなかったようですから。ですが、今後、言動にはよく気を付けてください。おわかりなのですよね、本当は画像を加工したり、無茶な要望を押し付けたりしてはいけないと」
「……」モンスターママは黙って下を向き、頷いています。悔しそうな顔からは、反省の色は見えなません。浅葱先生はそっとため息をつき、「私の一存では、どうすることもできませんから。校長と相談して」と言いかけました。
「すみません! ごめんなさい! もうしないと約束しますから……」
校長という単語を出しただけで、お腹にくっつくほど頭を下げて謝る様子に、浅葱先生は諦めたように首を振りました。
「そ、それは……」モンスターママの眼球が、抜け道を探すように落ち着きなく動き回ります。
「被害者のあの子たちには、なんの責任もないですよ。モン、いえ、佐々さんが自分がやったのではないというのなら……、犯人を公表しますか?」浅葱先生は「はんにん」にアクセントを付けてゆっくりと言いました。
「も、もういいです。帰ります。スマホを返してください」
「もう少しお待ちを。SNSのアカウントを確認しますから」
アカウントを調べられたら、最初に加工画像を流したのも自分だとわかってしまうと思ったのでしょうか。
「返して! 返してください!」と浅葱先生に激しく詰め寄り、スマートフォンに手を伸ばしました。「泥棒! 返せ!」
浅葱先生は高々とスマートフォンを頭上にあげ、モンスターママの手からゆうゆうと逃れて操作を進めていきます。
「勝手にそんなことしていいと思っているんですか? プライバシーの侵害ですよ!」
「はい。そうですね。でも僕は……、もし自分がプライバシーの侵害で訴えられようとも、生徒を守りたいのです」モンスターママのアカウントが画面に表示される。下へ……下へ……、スクロールしていく。
「ごめんなさい!」モンスターママが叫びました。「そんな悪気があった訳じゃないんです。ちょっとした出来心でっ」目は浅葱先生の手元から離さずに、何度も浅く頭を下げます。
「あなたがやった?」浅葱先生の銀縁の眼鏡が光りました。
「はい……」
「わかりました。実害は今の所さほどなかったようですから。ですが、今後、言動にはよく気を付けてください。おわかりなのですよね、本当は画像を加工したり、無茶な要望を押し付けたりしてはいけないと」
「……」モンスターママは黙って下を向き、頷いています。悔しそうな顔からは、反省の色は見えなません。浅葱先生はそっとため息をつき、「私の一存では、どうすることもできませんから。校長と相談して」と言いかけました。
「すみません! ごめんなさい! もうしないと約束しますから……」
校長という単語を出しただけで、お腹にくっつくほど頭を下げて謝る様子に、浅葱先生は諦めたように首を振りました。