第189話

文字数 477文字

「なんだって? あのおばさんかい?!」紅霧が驚いて声をあげました。

首を振って紅霧の大声を制すると、「間違いないでしょう」と返答する。桐子も肯いて私の説を肯定すると、吹っ切れたように喋りだしました。

「エナンチオマーは手強い。さあ”優先順位”を決めようじゃないか。一番は誰も失わないこと。何も成せなかったとしても、それでもいい。無茶はしないことだ。二番は黒の鏡を取り返すこと。そして冬矢を解放する。そうすればあの怖いおばさんも助けられるって寸法だ。分ったね?」

 優先順位……。そういえば、キラルの扉を入る前に、紅霧も同じことを言っていた。もともとは桐子の口癖だったようです。

「まあ、あのおばさんを助ける価値があるのかどうか、私にはわからないけどね。それじゃあ、エナンチオマーをやっつける、これが三番かい?」

「そうだ。だけどね、エナンチオマーは鏡像だ。ヒューマンではないから、おそらく普通に攻撃しても死なないだろう」

『ではエナンチオマーを倒す方法はないのですか?』

桐子は深い深いため息をついた。そして気遣うような目でちらりと紅霧を見やってから、語りだしました。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み