第45話
文字数 837文字
「お願い、浅葱先生は軽音部の顧問なの」
稜佳がマスターにまたしても手を合わせました。
「稜佳のお願いは、話を聞くってことだったわよねぇ。それじゃあ、お願いは変更っていうことでいい?」
「待って待って」稜佳が胸の前で両手を左右に振りました。「話す順番があるんだよ。まずは浅葱先生と話してからじゃないと、ダメなんだ。だからフラーミィが助けてくれないっていうなら、あの」と職員室で言い争う二人を指さす。「言い争いが終わるまで、待つしかないね……」ひどく残念そうな表情を作って職員室を覗き込みます。一来と比べて、稜佳はなかなか演技派のようです。
「……仕方ないわね。だけど、こんなことにフラーミィはつかえない」
マスターはちょっと周りを見回すと、胸の内ポケットから銀色の小さな鋏を取り出した。そして枝毛でも切るかのように、プツンと毛先を切る。それから口の中で小さくなにか言って、サッと投げた。
小さな影が一ミリ程の厚みを得て動き出した。職員室の中に入っていく。小さな影は恰幅のいい女性のストッキングを這い上り、濃い緑色のスカートの中に消えていきました。
「とにかく、素行の悪い生徒と同じクラスは困るんです。三年生なんですよ。一番大事な時に、場を乱す子が同じっていう……の……は……」息継ぎもしていないのではないかというほど連続していた演説が、突然途切れ途切れになり始めました。
「です・から、検討とかじゃなくて、今すぐ対っ処してください! それじゃ、今日はこれで」
女性は唐突に話を終わらせると、職員室を飛び出していきました。背中に手をまわし、体をひねったりしながら、小走りに走りさっていきます。マスターは職員室の壁掛け時計を確認しました。
「校門を出るまでは、帰ってきちゃダメって言っておいたから、しばらくはあのままね……」
マスターはニンマリとして、私と一来そして稜佳を、眉毛を上げて見ました。この顔が世間で言うドヤ顔というものですね! マスターの珍しい顔をみた喜びに私の胸が弾みました。
稜佳がマスターにまたしても手を合わせました。
「稜佳のお願いは、話を聞くってことだったわよねぇ。それじゃあ、お願いは変更っていうことでいい?」
「待って待って」稜佳が胸の前で両手を左右に振りました。「話す順番があるんだよ。まずは浅葱先生と話してからじゃないと、ダメなんだ。だからフラーミィが助けてくれないっていうなら、あの」と職員室で言い争う二人を指さす。「言い争いが終わるまで、待つしかないね……」ひどく残念そうな表情を作って職員室を覗き込みます。一来と比べて、稜佳はなかなか演技派のようです。
「……仕方ないわね。だけど、こんなことにフラーミィはつかえない」
マスターはちょっと周りを見回すと、胸の内ポケットから銀色の小さな鋏を取り出した。そして枝毛でも切るかのように、プツンと毛先を切る。それから口の中で小さくなにか言って、サッと投げた。
小さな影が一ミリ程の厚みを得て動き出した。職員室の中に入っていく。小さな影は恰幅のいい女性のストッキングを這い上り、濃い緑色のスカートの中に消えていきました。
「とにかく、素行の悪い生徒と同じクラスは困るんです。三年生なんですよ。一番大事な時に、場を乱す子が同じっていう……の……は……」息継ぎもしていないのではないかというほど連続していた演説が、突然途切れ途切れになり始めました。
「です・から、検討とかじゃなくて、今すぐ対っ処してください! それじゃ、今日はこれで」
女性は唐突に話を終わらせると、職員室を飛び出していきました。背中に手をまわし、体をひねったりしながら、小走りに走りさっていきます。マスターは職員室の壁掛け時計を確認しました。
「校門を出るまでは、帰ってきちゃダメって言っておいたから、しばらくはあのままね……」
マスターはニンマリとして、私と一来そして稜佳を、眉毛を上げて見ました。この顔が世間で言うドヤ顔というものですね! マスターの珍しい顔をみた喜びに私の胸が弾みました。