第194話
文字数 562文字
「危ない事しちゃだめよ、アイラ」
黙って運転に集中していたアイラの母上が、口を開きました。
「わかってる。おばあちゃんもフラーミィも一緒だし、大丈夫だよ」
マスターはリュックから白の鏡を取り出して、運転中の母上にみせました。
母上は白の鏡の中に、すがるような視線をちらりと走らせ桐子の姿を確認すると、雨粒の打ち付けるフロントガラスの向こう側に目を向けました。
街灯の灯りはアスファルトを照らすには充分ではなく、ハイビームにした車のライトさえ闇に吸い込まれ、道の先は見通せません。リュックに白の鏡をしまっているマスターに気が付かれないように、母上はそっとため息を逃がしました。
「その角を曲がったところで停めてください」
スマートフォンの地図アプリを見ながら道を指示していた一来が言いました。マスターの母上はすぐに左ウィンカーを点滅させ、ゆっくりと道の端に車を寄せて停車させます。
「フラーミィ、頼みましたよ。アイラ、Paljon Onnea!(パリヨン オンネア 抱えきれないほどの幸運を)」と、彼女の母国語のフィンランド語で言うと、マスターを抱きしめました。
「ありがとう、ママ。さあ、みんな。行くよ!」
六人は濡れたアスファルトに降り立ちました。無理して微笑みを浮かべ手を振る母上にあわただしく頭を下げ、冬矢の家に向かって走り出します。
黙って運転に集中していたアイラの母上が、口を開きました。
「わかってる。おばあちゃんもフラーミィも一緒だし、大丈夫だよ」
マスターはリュックから白の鏡を取り出して、運転中の母上にみせました。
母上は白の鏡の中に、すがるような視線をちらりと走らせ桐子の姿を確認すると、雨粒の打ち付けるフロントガラスの向こう側に目を向けました。
街灯の灯りはアスファルトを照らすには充分ではなく、ハイビームにした車のライトさえ闇に吸い込まれ、道の先は見通せません。リュックに白の鏡をしまっているマスターに気が付かれないように、母上はそっとため息を逃がしました。
「その角を曲がったところで停めてください」
スマートフォンの地図アプリを見ながら道を指示していた一来が言いました。マスターの母上はすぐに左ウィンカーを点滅させ、ゆっくりと道の端に車を寄せて停車させます。
「フラーミィ、頼みましたよ。アイラ、Paljon Onnea!(パリヨン オンネア 抱えきれないほどの幸運を)」と、彼女の母国語のフィンランド語で言うと、マスターを抱きしめました。
「ありがとう、ママ。さあ、みんな。行くよ!」
六人は濡れたアスファルトに降り立ちました。無理して微笑みを浮かべ手を振る母上にあわただしく頭を下げ、冬矢の家に向かって走り出します。