第131話

文字数 531文字

「えーっ?! 私一人で扉を見張ってるの?!」

鏡の中の奏多の部屋で、稜佳は怯えた様子で周りを見回しました。室内も左右が逆になっているはずですが、初めて見る限りでは違いはわからないでしょう。稜佳の目には、ただの女の子の部屋にしか見えないはずです。独りでいても、恐怖は感じないで済むしょう。

『扉がいつ閉まるかわからないので、誰かに見ていてもらいたいのです。一人では不安だと思いますが、お願いできませんか?』

「でも……見張っているとして、どうやって皆に連絡すればいいの?」
『スマートフォンを持っていますよね? 電話を繋いだままにしておきましょう』

「電話をかけられるの?」稜佳はスマートフォンを取り出しました。「数字は鏡文字になっていないね」

『私たちは鏡像ではありませんからね。リアル世界から持ち込まれただけなので。この扉を抜けた場所の看板などは、鏡文字になっているはずですよ』

「へえ……」稜佳が好奇心を覗かせ、ロールスクリーンをめくって窓から外を見ました。

「稜佳、窓は開けないでくださいね。何が起こるか予想がつきませんから」

 窓の外は乳白色のモヤに浮かぶマーブル模様がゆっくりと動いています。稜佳はしばらく眺めていましたが、ぶるりと体を震わせ、スカートを握りしめました。
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