第59話

文字数 497文字

「Death Crowの曲に、私が作った歌詞を付けて歌ってもいいなら……いいわよ?」

 マスターが視線を宙にさまよわせながら、口調だけは強気です。

「替え歌ってことか?」一来が聞きました。

「替え歌っていうとちょっと……かなりグレードダウンするイメージだけど……まあ、そうよ」

 言いにくいことを言ってすっきりしたのか、アイラはふてぶてしさを取り戻し、勢いよくソファに寄り掛かりました。

 その衝撃でソファが揺れ、膝立ちになっていた私はグラリと体が傾いでしまいました。小さな体なのですから、少しは気をつかって欲しいものです。キッと横目で睨みましたが、マスターは気がつきません。腕を組んで挑むような、そして、けし粒ひとつ分程の心配を含んだ目で、稜佳を探るように見つめています。

「オリジナル歌詞っていうことだね? 分かった! いいよ!」と即答し、破顔しました。しかし次の瞬間には、「でも……」と真剣な顔で眉をぎゅっと寄せました。

 「一つ問題があるの」ぐるりと瞳を上に回す。「いや、やっぱりあと二つ、かな……?」

 稜佳は肩をすくめてテーブルに座っている面々を見渡すと、眉をひそめて笑うという芸当を披露しました。
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