第190話

文字数 576文字

「入れ替わりの法則について、話したことはまだなかったね。まずはそこからだ」
「知ってるさ。白と黒の精命をそれぞれの鏡に満たせばいいんだろう?」

 紅霧がなぜ今更わかりきったことを言うのか、というようにいぶかしげに言いました。

「紅、その通りだよ。だけどね、精命が満ちれば、自動的に入れ替わるっていうわけじゃないんだ」
『白と黒の鏡を見合わせりゃ、ですね』

「その通り。白と黒の鏡を合わせ鏡にしたら、二枚の鏡の間に人と影が入るんだ。そうすると入れ替わる。だけど影の代わりにエナンチオマーが入ったらどうなると思う?」

「影の代わりにエナンチオマーが本体と入れ替わるのかい?」

「そういうこと。だけど、知っているだろう? もともとエナンチオマーは影を持たない。だから入れ替わっても、ヒューマンの冬矢は影にはなれずに消滅してしまうし、主を失った影も消えてしまうんだ」

紅霧は桐子の話を咀嚼するように、口の中でブツブツと桐子の話を繰り返しました。

「つまり入れ替わりがおきたら、エナンチオマーだけがリアル世界に残る。一人勝ちって訳かい? だけど桐子、それだけじゃエナンチオマーの倒し方の説明にはなってないよ」

「エナンチオマーは鏡像だ。だから本体と入れ替わる前に鏡にもどして、鏡を割ってしまえばいいのさ」

「そうか! 黒の鏡にエナンチオマーを入れて割ればいいんだね!」
「正解だよ、紅」
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み