第82話
文字数 762文字
「あれ……? この画像は……」
ふいに浅葱先生が突き付けられたスマートフォンに手を伸ばしました。
「ちょっとお借りしていいですか?」
「は? ええ、まあ。いいですけど」
意表をつかれたのか、モンスターママは素直にスマートフォンを手渡しました。浅葱先生は、画像を指で押し広げて拡大すると、せわしなくまばたきをしながら、瞳が画像のあちこちを移動しては、時折視線を定めて止まるのを繰り返しています。口の中で何か呟き、スマートフォンを手の中で何度も角度を変えて何かを探しているようでした。
「あの、もういいでしょう。返してください」
モンスターママがスマートフォンに手を伸ばすと、浅葱先生は取られないように、さっと頭上に手を上げました。空振りした手を持て余したモンスターママは、眉をよせて口を開こうとしました。しかし声を発する前に浅葱先生が言いはなちました。
「加工のオリジナルですね」
「えっ……?」モンスターママが首を傾げます。
「この写真は加工した画像の、オリジナルです。加工する前の画像は、校内にも掲示されているこちらの……」と自分のスマートフォンを器用に片手で操作し、画像を示しました。
「ポスターです。ロゴマークも鴉ではなくて、王冠です。そしてバンド名もDeath Clownになっていますし、コピーバンドだと説明文も書いてありますよね」
「でも! SNSに載っていた画像は!」
「ですから、加工されたものです。ほら、拡大した加工後の画像を見てください。人物と背景にわずかですが、違和感があります。それから照明がシルエットになるようにあてられているのに、ロゴの部分にかかっている影が逆向きに出ています。つまり、人物だけ切り抜いて、別の背景に張りつけたものです」
浅葱先生はひとつ息を吸い込み、スマートフォンの画面を指でカツッ、と叩きました。
ふいに浅葱先生が突き付けられたスマートフォンに手を伸ばしました。
「ちょっとお借りしていいですか?」
「は? ええ、まあ。いいですけど」
意表をつかれたのか、モンスターママは素直にスマートフォンを手渡しました。浅葱先生は、画像を指で押し広げて拡大すると、せわしなくまばたきをしながら、瞳が画像のあちこちを移動しては、時折視線を定めて止まるのを繰り返しています。口の中で何か呟き、スマートフォンを手の中で何度も角度を変えて何かを探しているようでした。
「あの、もういいでしょう。返してください」
モンスターママがスマートフォンに手を伸ばすと、浅葱先生は取られないように、さっと頭上に手を上げました。空振りした手を持て余したモンスターママは、眉をよせて口を開こうとしました。しかし声を発する前に浅葱先生が言いはなちました。
「加工のオリジナルですね」
「えっ……?」モンスターママが首を傾げます。
「この写真は加工した画像の、オリジナルです。加工する前の画像は、校内にも掲示されているこちらの……」と自分のスマートフォンを器用に片手で操作し、画像を示しました。
「ポスターです。ロゴマークも鴉ではなくて、王冠です。そしてバンド名もDeath Clownになっていますし、コピーバンドだと説明文も書いてありますよね」
「でも! SNSに載っていた画像は!」
「ですから、加工されたものです。ほら、拡大した加工後の画像を見てください。人物と背景にわずかですが、違和感があります。それから照明がシルエットになるようにあてられているのに、ロゴの部分にかかっている影が逆向きに出ています。つまり、人物だけ切り抜いて、別の背景に張りつけたものです」
浅葱先生はひとつ息を吸い込み、スマートフォンの画面を指でカツッ、と叩きました。