第3話

文字数 518文字

「ミッション、成功だね」マスターが私にだけ聞こえる声でささやきます。

『ミッションというのは、ただの横入りのことですか?』
「おだまり! 精命はいらないの?」
『いえ、契約ですから、守って……』

 チリッと視線を感じて、私は言葉を切りました。周りを確認しようとした時、ちょうどバスが到着しました。列が前に動き出し、私は感じていた視線の出所を見失ってしまいました。

 マスターはバスの長椅子に腰かけました。私はマスターから離れ、影の姿のまま床の上や人の体を伝って移動し、先ほどの視線の正体を探りました。

『マスター、どうやら見つかってしまったようです。右斜め前に立っている少年が、先ほどからマスターをチラチラ見ています』

「でも、フラーミィのことがバレたとは限らないんじゃない?」

 確かにマスターは、アメリカ人とフィンランド人のハーフゆえに、目立つ容姿をしています。白い肌に長い金髪のツインテール。スカート丈は太ももの真ん中よりも短く、長い足が余計に強調されています。興味本位の視線を向けられることはよくあることです。が、しかし……。

「そうね、フラーミィの言う通りね。あの子は同じクラスだわ。名前は覚えてないけど。今更私が珍しいなんてこと、なさそうね」
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