第72話
文字数 722文字
文化祭の日の天気は晴れ。しかし天気に恵まれた事を差し引いても、異常なほどの混雑ぶりです。外部の来客数が少なくとも、昨年の二倍あるいは三倍は来ているのでは、とあちこちで囁かれているのを耳にしました。
「お客さんが多いのはいいことだけど」
すれ違った校内を巡回中の教師が、不安げにひとり呟いています。「どうして皆、黒い服を着ているのかしら?」そして文化祭が終わりに近づくにつれ、黒い服の集団はますます増えていくのでした。
「やっぱりDeath Crowって人気なんだねぇ。コピバン(コピーバンド)なのに、こんなにお客さんが!」
旧校舎の軽音部の部室の窓から、外を眺めていた稜佳が嬉しそうにマスターに話しかけました。マスターの隣にいた一来がびくりと体を震わせると、怯えた瞳で稜佳を見ます。
部室には今、マスターと稜佳と一来の三人と私しかいません。他の軽音幽霊部員達は、公演を行わないため、好き勝手に校内を見学して回っているからです。
「お客さん……、たくさん聴きにくるのかな……」一来が「はぁ」とため息をつきました。
「来てくれるよ、きっと! 黒い服ってことは、他の出し物じゃなくて、私たちを観にきてくれているんだよ!」稜佳は一来の憂いにはまったく気が付かない様子で、「くーっ」と握りこぶしを作ってやる気をみなぎらせています。
『しかし、いくらDeath Crowが人気とはいえ、コピーバンドにこんなにお客さんが来るのは少し変ではないですか?』と疑問を呈すると、ようやく稜佳の頭にも疑問符が浮かんだようです。
「え、そうかな? ……うーん、言われてみれば……、おかしい、かなあ?」
稜佳が理由を探ろうとするように、あらためて窓から頭を出して外を見回しました。
「お客さんが多いのはいいことだけど」
すれ違った校内を巡回中の教師が、不安げにひとり呟いています。「どうして皆、黒い服を着ているのかしら?」そして文化祭が終わりに近づくにつれ、黒い服の集団はますます増えていくのでした。
「やっぱりDeath Crowって人気なんだねぇ。コピバン(コピーバンド)なのに、こんなにお客さんが!」
旧校舎の軽音部の部室の窓から、外を眺めていた稜佳が嬉しそうにマスターに話しかけました。マスターの隣にいた一来がびくりと体を震わせると、怯えた瞳で稜佳を見ます。
部室には今、マスターと稜佳と一来の三人と私しかいません。他の軽音幽霊部員達は、公演を行わないため、好き勝手に校内を見学して回っているからです。
「お客さん……、たくさん聴きにくるのかな……」一来が「はぁ」とため息をつきました。
「来てくれるよ、きっと! 黒い服ってことは、他の出し物じゃなくて、私たちを観にきてくれているんだよ!」稜佳は一来の憂いにはまったく気が付かない様子で、「くーっ」と握りこぶしを作ってやる気をみなぎらせています。
『しかし、いくらDeath Crowが人気とはいえ、コピーバンドにこんなにお客さんが来るのは少し変ではないですか?』と疑問を呈すると、ようやく稜佳の頭にも疑問符が浮かんだようです。
「え、そうかな? ……うーん、言われてみれば……、おかしい、かなあ?」
稜佳が理由を探ろうとするように、あらためて窓から頭を出して外を見回しました。