第99話

文字数 476文字

――かーごめ、かごめ、白い精命と黒い精命をいっぱいに……。この歌を歌って人間を鏡に誘い込む紅霧は、桐子との入れ替わりを目論んでいるのは間違いなさそうです。

では情に厚い紅霧がなぜ、マスターであるはずの桐子と入れ替わろうとしているのでしょう? 桐子の方はこんなにも紅霧に思いを残しているというのに――

 マスターは楽しそうに語る桐子を、どこか切なげに見つめています。紅霧のことを、幼かったマスターが、忘れてしまったのは無理はありません。紅霧と入れ替わるようにして、私がマスターの毎日に登場したのですから。

そして今、桐子と語り合い、記憶の中にあざやかに蘇ってきた優しくて気っぷのいい「お姉さん」と、稜佳や浅葱先生を鏡に閉じ込め黒い精命を集めていた紅霧。二つの姿が重なり合いません。

優しく情に厚い「お姉さん」と敵と認識した「紅霧」……。どちらが本当の姿なのでしょうか?

「紅はね……」と思い出を懐かしむ桐子の声が優しい。
「ねえ、おばあちゃん。お姉さんは、黒炎のように、昔からおばあちゃんから離れて、自由に動けたの?」

 桐子の話をさえぎるようにマスターが聞きました。
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