第15話
文字数 506文字
『あっ、一来、不用意に触れてはいけません!』と叫んだが間に合わず、一来は少女に足を払われ、見事にレンガの敷き詰められた歩道に転がされました。
黒い羽虫が一来のダメージを測るように周りを飛び交っているのが不気味です。
「いっ痛ぇ……」
「一来ったら、何やってるのよ。さ、早く立ちなさい」
尻もちをついている一来に、マスターが手を差し出しました。
一来がマスターの手をつかもうと手を伸ばし「あ、ありが……」と言いかけると、「早くしなさいよ!」とお礼の言葉を遮りました。見るとほんのり頬を染めています。
『ほほう……』
私は顎に手をあてて笑みをもらしました。識里の影はもう背中を向けて走り出し、遠ざかっていきます。マスターと一来の様子を覗いていたい気持ちは山々ですが、私が追うしかないようです。
『ふっ』と、ひとふき風を送り、一来の周りを飛び交っていた黒い羽虫をちりぢりに吹き飛ばすと、私は地面を滑って少女の影の後を追いました。
しかし……、識里という影、足払いにしっかりした力がありましたね。多少の髪の毛をもらっただけでは、あのようには動けないでしょう。マスターにはまだ言えませんが、もしかすると……。私は思案をめぐらせました。
黒い羽虫が一来のダメージを測るように周りを飛び交っているのが不気味です。
「いっ痛ぇ……」
「一来ったら、何やってるのよ。さ、早く立ちなさい」
尻もちをついている一来に、マスターが手を差し出しました。
一来がマスターの手をつかもうと手を伸ばし「あ、ありが……」と言いかけると、「早くしなさいよ!」とお礼の言葉を遮りました。見るとほんのり頬を染めています。
『ほほう……』
私は顎に手をあてて笑みをもらしました。識里の影はもう背中を向けて走り出し、遠ざかっていきます。マスターと一来の様子を覗いていたい気持ちは山々ですが、私が追うしかないようです。
『ふっ』と、ひとふき風を送り、一来の周りを飛び交っていた黒い羽虫をちりぢりに吹き飛ばすと、私は地面を滑って少女の影の後を追いました。
しかし……、識里という影、足払いにしっかりした力がありましたね。多少の髪の毛をもらっただけでは、あのようには動けないでしょう。マスターにはまだ言えませんが、もしかすると……。私は思案をめぐらせました。