第21話
文字数 524文字
「分かったら、もう帰ってね。さようなら」識里の影は、足早にエレベーター前に移動し、上向きの三角のマークの付いたボタンを押しました。エレベーターの扉にぶつかりそうな位置に立っているのは、私たちを視界に入れないようにしているのでしょう。
主人は何も聞かなかったように、識里の影の隣に立ちました。エレベーターの扉を映している防犯カメラからは、まるで仲良しの友達が家に遊びに来た、というように見えるでしょう。
「ちょっと、なんなの? 帰りなさいよ」
識里の影が主人の方を向いて抗議の声をあげるのと同時に、チン、と軽い音がして扉が開きました。
私は軽く識里の影の背中を後ろから押しました。識里の影は扉ギリギリに立っていたので、トントン、と二歩よろめいき、エレベーターの中に入りました。主人は後ろからゆっくり乗り込んできてパネルの前に立つと、「ご利用階は何階でしょうか?」とエレベーターガールのように聞きました。
識里は悔しそうにそっぽを向き、口をしっかり閉じて、答えません。
「四階です」
一来がかわりに答えながら、エレベーターに乗り込んできました。
「さっき入力していたの、部屋番号だよね」
一来はなかなか使えますね……。私は感心して、一来の肩をポンと叩きました。
主人は何も聞かなかったように、識里の影の隣に立ちました。エレベーターの扉を映している防犯カメラからは、まるで仲良しの友達が家に遊びに来た、というように見えるでしょう。
「ちょっと、なんなの? 帰りなさいよ」
識里の影が主人の方を向いて抗議の声をあげるのと同時に、チン、と軽い音がして扉が開きました。
私は軽く識里の影の背中を後ろから押しました。識里の影は扉ギリギリに立っていたので、トントン、と二歩よろめいき、エレベーターの中に入りました。主人は後ろからゆっくり乗り込んできてパネルの前に立つと、「ご利用階は何階でしょうか?」とエレベーターガールのように聞きました。
識里は悔しそうにそっぽを向き、口をしっかり閉じて、答えません。
「四階です」
一来がかわりに答えながら、エレベーターに乗り込んできました。
「さっき入力していたの、部屋番号だよね」
一来はなかなか使えますね……。私は感心して、一来の肩をポンと叩きました。