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文字数 878文字


「ねぇ早坂さん、この子、超天然記念物なので、お手柔らかにお願いしますね」

今度は何を言い出すかと思えば──早坂さんを見ると、目が丸くなっている。そして、春香の後方で店から出てくる店長と一真くんが見えた。

「早坂さん!行きましょう!春香ありがとう!また明日!」

春香は営業モードの笑顔を崩さぬまま、ひらひらと手を振った。
わたしは早坂さんの腕を掴んで強引に車へと向かう。

「今日はずいぶん積極的ね」

「瀬野さん待たせてるので!」

「あなた、天然記念物なの?」

「そうらしいです」 それ以上は何も聞かないでくれ。

途中でエスコートが早坂さんへと変わり、当然のように助手席へ連行された。勝手に開くドアから乗り込み、ドアが閉められた。

「瀬野さん、こんばんは。遅くなってゴメンなさい」

瀬野さんは運転席の後側に居た。若干、眠そうな顔に見える。

「それはいいが、災難だったな、待ち伏せされて」

「だから、人をストーカーみたいに言わないでちょうだい!」運転席に乗り込んだ早坂さんがすかさず突っ込む。

「大して変わらんだろ」

まあ、あながち間違ってはいないかも。

「さあーて、行きますかね」

ゆっくりと動き始めた車だったが、すぐにブレーキがかかった。
えっ、なにごと?大した衝撃でもないのに、わたしの前にはしっかりと早坂さんの腕が回されている。

「あ、空舞さん」

暗闇に馴染んでいてわかりづらいが、空舞さんはボンネットの真ん中に居た。早坂さんが助手席の窓を開けると、キッキッと音を立ててジャンプしながらドアまでやって来る。

「あのー、空舞ちゃん?すごく嫌な音がするんだけど・・・」

「これから向かうの?」

「はい、空舞さんも一緒に行きますか?行かないと思うけど」

「ええ、わたしは車を追って行くわ。じゃあ後ほど」

それだけ言い、空舞さんはその名の通り、空を舞って闇夜へ消えた。

「ここからどれくらいですか?」

早坂さんはボンネットの確認でそれどころではないようだ。

「空いてれば30分もかからない。おい、早く出せ」

「あ、はいはい」

「大丈夫だと思いますよ。たぶん。空舞さん、わたしの肩とか頭に乗る時、爪立てないようにしてるんで」










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